株価同様部数増減に一喜一憂…ビジネス・金融・マネー系雑誌部数動向(2018年1月-3月)

2018/05/27 05:00

インターネットに代表される電子情報技術の加速的進歩、機動力に長けたスマートフォンの普及浸透で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の情報をつかさどる専門誌では、正しさはもちろんだがスピーディな情報展開への需要が天井知らずのものとなる。デジタルとの比較で生じる時間的遅れは紙媒体の致命的な弱点となり、その弱みをくつがえすほどの長所が今の専門誌では求められている。このような状況下の「ビジネス・金融・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2018年5月18日付で最新データへの更新発表を行った、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

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「プレジデント」一強時代は変わらず


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近分にあたる2018年の1月-3月期とその前期に該当する、2017年10月-12月期における印刷実績。

↑ 印刷証明付き部数(ビジネス・金融・マネー誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)
↑ 印刷証明付き部数(ビジネス・金融・マネー誌、万部)(2017年10月-12月期と2018年1月-3月期)

「クーリエ・ジャポン」の休刊後、今カテゴリの雑誌は定期刊行誌では全部で6誌だったが、3四半期で「BIG tomorrow」が休刊に伴いデータの非公開化が行われ、5誌に減ってしまった。また不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今期でも顔を見せていない。

「¥en SPA!」は2017年12月8日付で2018年冬号が発売されたが、現時点ではこの号が最新号となっている。これまでのパターンだと四半期ごとに発売と部数の公開・非公開を繰り返していたが、前期では発売されたにも関わらず部数は非公開。方針を変えて全面非公開に転じたのかもしれない。あるいは発売間隔が伸びた可能性はある。

ともあれ全部で5誌なのはさみしい話に違い無く、何か新規雑誌を追加したいところではあるが、該当ジャンルで合致しそうな雑誌は他に無いのが残念。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前期から継続する形でトップの部数。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは2倍強もの差をつけている。その「PRESIDENT」の部数だが、2013年後半から上昇傾向が始まり、2015年第1四半期をピークとしたあとは少し値を落として踊り場状態となっていた。その後、2016年に入ってから大きく下落し、2013年以降の上昇分をほとんど吐き出す形に。2013年までの沈滞期と比べれば5万分ほどの上乗せをした形で、安定期に突入した雰囲気だった。そして2016年の10-12月期に大きな伸びを見せ、その後はほぼ横ばい。直近でも前期比でいくぶん値を伸ばしている。部数は安定的な状況になりつつある。

↑ 印刷証明付き部数(PRESIDENT、部)
↑ 印刷証明付き部数(PRESIDENT、部)

同誌は昨今の動向を見る限りではヒット企画の号で大きく背伸びをし、その余韻を楽しみながら次のヒットの創生を目指すスタイルのように見える。よいパターンを見つけたのだろう。次のヒット号の登場が楽しみでならない。

2誌がプラス…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手身近に各雑誌の状態を知るのには適している。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前期比)(2018年1月-3月)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前期比)(2018年1月-3月)

今期ではプラス領域は2誌、マイナス領域は3誌。誤差領域(5%内の振れ幅)を超えた下げ幅を示した「週刊東洋経済」は、2013年以降は部数がほぼ横ばい、2016年頭にやや下げたが、それ以降も比較的安定した部数動向の中にある。今期ではたまたま前期が多少伸長したことの反動以上のものでは無いと解釈して問題は無い。

↑ 印刷証明付き部数(週刊東洋経済、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊東洋経済、部)

週刊で畳みかけるように世の中のトレンドを捉えた経済方面の特集が多く、これが部数の安定を支えているのだろう。他方、タブロイド紙的なあおりを思わせる見せ方も少なからずあり、経済誌としての評価は分かれるところ。

今回最大の上げ幅を記録した「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」は元々アメリカ合衆国の経営学誌で、日本語版となる同誌では翻訳記事の他に日本独自の記事も展開されている。

↑ 印刷証明付き部数(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー、部
↑ 印刷証明付き部数(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー、部

部数動向はほんのわずかずつながら減少の傾向だが、2016年に入ってからは横ばいに転じたようにも読める。ここ数期ほどはやや大きな上下をしており、今期は前期からの反動が大きい。該当期間の発売号の特集を並べると「その戦略は有効か 転換点を見極める」「顧客の習慣のつくり方 なぜ、あの商品は売れ続けるのか」「課題設定の力」となる。恐らくは2018年3月号の「顧客の習慣のつくり方 なぜ、あの商品は売れ続けるのか」が人気を集めたように見受けられる。タイトルだけで見比べると、これが一番訴求力があるように読めるからだ。

全誌マイナス…前年同期比動向


続いて前年同期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前年同期比)(2018年1月-3月)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌、前年同期比)(2018年1月-3月)

全誌がマイナス、誤差領域を超えた下げ幅を示したのは「THE21」。

「週刊ダイヤモンド」は中長期的な動向としては安定期にあるが、今期も併せ最近の動きは気になるところ。

↑ 印刷証明付き部数(週刊ダイヤモンド、部)
↑ 印刷証明付き部数(週刊ダイヤモンド、部)

「週刊ダイヤモンド」のキャッチコピーは「書店で一番売れてるビジネス週刊誌」。今ジャンル内では「PRESIDENT」に続く部数だが、「PRESIDENT」は隔週刊誌であることから、少なくとも印刷証明付き部数が確認できるビジネス週刊誌では「一番売れている」で間違いはない。

週刊ダイヤモンド同誌では社会生活の身近な、気になる一つのテーマに絞り、それに切り込むスタイルで特集記事を構成している。そして表紙に大きく描かれたそのテーマの見せ方が鋭く、大きな魅力となっている。部数動向は2013年以降では事実上横ばいで推移していたが、2017年に入ってから下落が続いている(今期では前期比でいくぶん持ち直したが)。同誌は電子版も同時展開していることもあり、読者の電子版へのシフトが進んでいるのかもしれない。アマゾンの売れ筋ランキングを見るとKindle本の雑誌、ビジネス・経済カテゴリーでは常に上位陣に顔を見せていることから、多くの人に購読されていることは間違いない。



内容の斬新さから注目を集め部数を伸ばしていた「COURRiER Japon」が、編集方針の変更と思われる内容性向の変化とともに失速し、一部有料のデジタル媒体に移行したこと(2016年4月号で雑誌媒体版としては休刊)で、印刷証明付き部数の開示が無くなってからはや2年が経過した。昨今の雑誌媒体ではよくあるケースとはいえ、やはり寂しさを覚えさせる。見方を変えると、時流によるところもあるとはいえ、ひとつかじ取りを違えると大きく航路を外してしまう実例なのだろう。

他方、2017年第3四半期に休刊と部数の非公開が決まった「BIG tomorrow」は、特に雑誌の方針変更や評判が悪くなったとの話も無い。電子書籍版も展開されており、部数も極端な低迷をしていたわけでも無かった。それゆえに、突然の休刊には驚かされるものがある。何か内なる思惑があるのかもしれない。

コミック系雑誌で多分に進んでいる、定期刊行の雑誌の時点における電子雑誌化も、今ジャンルでも少しずつだが確実に歩みを進めている。特にビジネス・金融・マネー誌は電子化との相性がよいので、読者の紙媒体からのシフトは大きな動きとなりうる。それに伴い今件「印刷」証明付き部数の動向が、その雑誌の勢いそのものを反映し難くなるのも仕方があるまい。上げ底をせずに厳密な電子版の販売数を合算した、総合的な刊行部数の公開が望まれよう。


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