ワールドカップの影響があちこちで。燃料費の高騰や人手不足も…2018年6月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2018/07/10 09:00

内閣府は2018年7月9日付で2018年6月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇し48.1を計上、基準値の50.0は割り込む状態が継続。先行き判断DIは前回月比で上昇して50.0となり、基準値の50.0と同じ値に。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。先行きについては、人手不足、コストの上昇等に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待がみられる」」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成30年6月調査(平成30年7月9日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2018年6月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比プラス1.0ポイントの48.1。
 →原数値では「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「よくなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは48.2。
 →詳細項目は「飲食関連」「製造業」「非製造業」が下落。「住宅関連」のプラス2.5ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「住宅関連」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは前回月比でプラス0.8ポイントの50.0。
 →原数値では「変わらない」が増加、「よくなる」「ややよくなる」「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは50.9。
 →詳細項目では「飲食関連」「サービス関連」「雇用関連」のみ下落。最大の下げ幅は「雇用関連」のマイナス2.9ポイント。基準値の50.0を超えている項目は「住宅関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、2016年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ原油価格動向をはじめとする海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。また消費税率の引き上げに関連する形での消費減退の懸念も、そろそろ消費動向に影響を与えてきそうではある。また先日から生じている西日本における豪雨の甚大な被害も、景況感の上ではマイナスに影響しそうな感はある。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。昨今ではやや低迷、ぬるま湯的な軟調さと表現できる動きにあるのが気になるところ。

昨今では現状も先行きもいくぶん軟調気味


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2018年6月)
↑ 景気の現状判断DI(-2018年6月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに4年が経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレルあたりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

その後は石油産出国の協調減産の動きを受け、さらに中東情勢の緊迫化もあり、原油価格は少しずつ上昇を示していた。原油価格の上昇にあわせて活動が活発化し市場の調整役・頭を押さえる役割を果たしている米国内のシェールオイルの採掘による生産量の増加も、影響は限定的。結果として日本国内のガソリンや灯油価格も上昇の動きに。米国内のシェールオイルの生産量がさらに増加を続け、1970年以来最大の量を記録したとのEIAの報を受けて原油価格は一時的に頭打ち、さらには下落の動きを示した。

しかしアメリカ合衆国の景況感の堅調さから生産量増加分も打ち消しになるのではとの思惑が強まり、さらにはシリアとイスラエルの紛争激化やアメリカ合衆国のイラン核合意からの離脱とイランへの経済制裁再開など中東情勢の緊迫化から、再び上昇の動きに転じている。増産による価格調整への動きもあるが、高値感は継続中。

今回月の現状判断DIは総計で前回月から1.0ポイントのプラス、詳細項目では「飲食関連」「製造業」「非製造業」で下落。もっとも大きな下げ幅は「飲食関連」が計上した3.3ポイント、もっとも大きな上げ幅は「住宅関連」による2.5ポイント。あまり大きな動きでは無い。

景気の先行き判断DIは「飲食関連」「サービス関連」「雇用関連」のみが下げ。これらは前回月では他項目が下げた中で数少ない上げた項目であり、今回月の動きは反動によるところが大きいとの解釈もできる。下げ幅は「雇用関連」の2.9ポイントが最大。

↑ 景気の先行き判断DI(-2018年6月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2018年6月)

今回月で基準値を超えている詳細項目は「サービス関連」「雇用関連」のみ。

ワールドカップと人手不足と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・天候不良のときもあるが、気温の上昇が急激にあると、客のドリンクなどの買上点数、来客数ともに多くなるので、ややよくなっている(コンビニ)。
・高単価商品の稼働やボーナス支給を見込んだ購入が増加している。特に後半にかけて顕著になっている。インバウンドも引き続き好調である(百貨店)。
・気温上昇に伴って購入点数も上がっているなかで、肉の販売状況が好調である。特に、単価の高い商品が好調に推移している(スーパー)。
・月の中旬までは前年比で横ばいの推移であったが、サッカーワールドカップの1次リーグが始まってからは、やはり客がさっさと帰ってしまったり、テレビのある居酒屋に行ってしまい、極端に客足が悪くなっている(一般レストラン)。
・6月18日の大阪北部地震以降、宿泊やレストランの客が減少している。宿泊では海外客によるキャンセルがみられるほか、レストランは全体的に落ち込んでいる(都市型ホテル)。

■先行き
・中古車より新車を探す客が多くなっている。自動車用品も性能や機能の高い商品を選択する傾向が強い。景気がよくなってきたようである(自動車備品販売店)。
・猛暑の予報であり、ドリンク類や冷菓類の売上が好調に推移することが期待される。また、新しいコーヒーマシーンの製品も人気が出そうであり、来客数、客単価ともに改善することが予想される(コンビニ)。
・7月の大型客船の入港予定はめじろ押しで、商店街に訪日外国人客が流れてくることを期待している(商店街)。
・景気は悪くないのかもしれないが、客単価が上がらないなか、原材料費が高止まりしていることで、利益が上がってこないため、景気回復への期待感が余りない(高級レストラン)。

景況感は堅調なところが多く、先行きについては今年が猛暑であるとの予想が出ていることへの期待感が強い。季節通りの気候の方が、経済は活性化するのは定番のお話ではある。

今回月では6月半ばから始まったサッカーのワールドカップに伴い、少なからぬ影響が生じているようすがうかがい知れる。全国のコメント以外でも地域の詳細を見るに、「サッカーワールドカップの全試合放送は、若年層に髪型をまねる需要を喚起させる」「サッカーワールドカップが開催中で客の動きが止まっている。オリンピックや世界規模のスポーツイベントがあると客の動きが止まることは予想範囲内である」「サッカーワールドカップのある日は中継を入れている店舗はすごく盛り上がるが、平日はかなり販促をしても思った効果は出ていない」など、一様に効用が生じているわけでは無く、業態や環境次第でプラス・マイナスの結果が分かれて生じているようだ。

企業関連の景況感では堅調さを示す話がある一方、原材料費や人手不足による人件費の高騰に頭を抱える声が見受けられる。

■現状
・仕事の確保はできている。相変わらず、部品の納入は悪い。他の業態も同様に、部品の確保に苦慮しているようである(電気機械器具製造業)。
・運転手および構内の現業員が不足し、仕事を断らざるを得ない。人件費や軽油価格の高騰で利益も減少している(輸送業)。

■先行き
・不動産取引が増加しているという声を多く聞いている(司法書士)。
・新車販売でのピーク生産が2-3か月後に計画されていて、当初予算計画に対して増産になる(輸送用機械器具製造業)。

原油価格は上昇基調にあり、燃料費の高騰への懸念の声も見受けられる。人手不足は相変わらずだがこれを契機ととらえてほしいものだが。不動産取引の増加は工場誘致か、それとも相続の増加なのか。

雇用関連では人手不足に関わる多様な意見が見受けられる。

■現状
・派遣依頼は幅広い業種から好調に続いている(人材派遣会社)。

■先行き
・人手不足はかなり深刻な状況だが、改善の傾向が見られず、引き続き人材難が続くことが予想される(求人情報誌)。

さまざまな視点で人材不足の実情がうかがい知れるが、職を求める側にはよい状況に違いない。もっとも従業員を雇う企業側にとっては、人件費をこれまで以上に用意しないと人材の確保ができず、業務の拡大はおろか維持も難しくなるため、頭を痛めているところもあるのだろう。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を確認すると、「人手不足」「人材不足」の文言を多数見受けることができる(現状計25件、先行き計64件、合わせて89件)。ただし全国で景気の先行きに限定して雇用関連の印象を確認すると、良好12件、やや良好25件、不変98件、やや悪い18件 悪い13件となっており、イメージされているほど状況が悪いものでも無いことが統計からはうかがえる。

求人告知の媒体がデジタル化しているためにデジタル化が遅れている中小企業はますます人材不足に追い込まれる、改正労働者派遣法により定められた安定雇用措置で企業の負担が増える、賃金上昇圧力が感じられないとの感想も。経営者側が現状を正しく見極める能力を持っているか否か次第で、短期的な話はもちろん中長期的な視点でも、企業運営の根幹となる人材を維持できるかどうかのターニングポイントに立たされているようではある。

「働き方改革に伴い、残業時間の削減が進むことで若手社員の収入が減ることになれば、消費にも影響が生じる」「働き方改革に伴う労務費負担の増加など、道内建設業界を取り巻く環境には懸念材料も多い」「中小企業では従業員の定着や残業規制など、働き方改革を進める上での取り組みが、利益の伸びにややブレーキをかけている」のような、これまでの状況がいかに就業者側に大きな負担があったのかを認識できる声も見受けられる。人手不足で受注できない、売上が伸びないとの意見は少なく無いが、果たしてその人手たる従業員に対して、どこまで現状に対応する姿勢を示しているのか、その点までは今調査のコメントから確認できないのは残念ではある。種も蒔かずに育てもせずに肥料や手間をふところに納め、いざとなったら果実が欲しいと騒ぐのは、あまりにもむしがよい話ではある。ましてや人手不足の状況では育てられていなかったのは果実では無く、人である。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内ではそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

もっとも昨今では直接影響のある半島情勢が緊迫化している。また米国の貿易政策に多くの企業が直接、間接的に懸念を持っている。双方とも景況感、消費にはマイナスに作用するだけに始末が悪い。

数か月先のことでは無く、数年、数十年先を見越した、長期にわたる展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

昨今問題視されている、そして報道では得てして否定的に取り上げられている人手不足にしても、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題ではある。そもそも現状求められている労働環境は、本来正当なものとして就業者側に与えられているべきものでは無かったのか。皆がやっているから、昔からそうだったから、経営側にプラスとなるからという安易な理由での施策に過ぎないのであれば、それを正論化する裏付けは無い。

現在の社会環境が本来あるべき姿になるために、必要なコストの水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じているか、判断を間違っていたまでの話。昔と今とでは状況が異なること、昔がこうだったから今もこうだという判断は正しくないという現実を、認識すべきではある。


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