株価同様部数増減に一喜一憂…ビジネス・金融・マネー系雑誌部数動向(2017年10月-12月)

2018/02/28 05:00

インターネットに代表される電子情報技術の加速的進歩、機動力に長けたスマートフォンの普及浸透で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の情報をつかさどる専門誌では、正しさはもちろんだがスピーディな情報展開への需要が天井知らずのものとなる。デジタルとの比較で生じる時間的遅れは紙媒体の致命的な弱点となり、その弱みをくつがえすほどの長所が今の専門誌では求められている。このような状況下の「ビジネス・金融・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2018年2月20日付で最新データへの更新発表を行った、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

スポンサードリンク


「プレジデント」一強時代は変わらず


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近分にあたる2017年の10-12月期とその前四半期に該当する、2017年7-9月期における印刷実績。

↑ 2017年7-9月期と2017年10-12月期の印刷証明付き部数(ビジネス・金融・マネー誌)
↑ 2017年7-9月期と2017年10-12月期の印刷証明付き部数(ビジネス・金融・マネー誌)

「クーリエ・ジャポン」の休刊後、今カテゴリの雑誌は定期刊行誌では全部で6誌だったが、前四半期で「BIG tomorrow」が休刊に伴いデータの非公開化が行われ、5誌に減ってしまった。また不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今四半期でも顔を見せていない。該当期間中の2017年12月8日付で2018年冬号が刊行されているため、部数が計上されているはずだが、確認はできなかった。これまでは四半期ごとに刊行・公開と非刊行・非公開を繰り返していたのだが、方針を変えて全面非公開に転じたのかもしれない。

ともあれ全部で5誌なのはさみしい話に違い無く、何か新規雑誌を追加したいところではあるが、該当ジャンルで合致しそうな雑誌は他に無いのが残念。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から継続する形でトップの部数。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは2倍強もの差をつけている。その「PRESIDENT」の部数だが、2013年後半から上昇傾向が始まり、2015年第1四半期をピークとしたあとは少し値を落として踊り場状態となっていた。その後、2016年に入ってから大きく下落し、2013年以降の上昇分をほとんど吐き出す形に。2013年までの沈滞期と比べれば5万分ほどの上乗せをした形で、安定期に突入した雰囲気だった。そして2016年の10-12月期に大きな伸びを見せ、その後は横ばい。直近でも前期比でいくぶん値を伸ばしている。部数は安定的な状況になりつつある。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(部)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(部)

同誌は昨今の動向を見る限りではヒット企画の号で大きく背伸びをし、その余韻を楽しみながら次のヒットの創生を目指すスタイルのように見える。よいパターンを見つけたのだろう。

3誌がプラス…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前四半期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手身近に各雑誌の状態を知るのには適している。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年10-12月、前期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年10-12月、前期比)

今四半期ではプラス領域は3誌、マイナス領域は2誌。誤差領域(5%内の振れ幅)を超えた下げ幅を示した「THE21」は、2014年以降6万部を目安にもみ合い的な状態が続いている。

↑ THE21印刷証明付き部数(部)
↑ THE21印刷証明付き部数(部)

「THE21」は「ビジュアルな視覚に訴える確かな情報誌」なるキャッチコピーを掲げ、特集を多様な切り口からの読み物を掲載している。この切り口は方向性や方法論の違いこそあれ、どのビジネス誌でも行っている手法だが、「THE 21」ではツボをつくテーマを分かりやすい表現でアピールしているのがポイント。この特徴が部数の確保に寄与しているのだが、なかなか部数の伸長には結びつかないようだ。

似たようなスタイルは週刊東洋経済でも行われており、こちらは今四半期では前期比で最大の上げ幅を計上している。

↑ 週刊東洋経済印刷証明付き部数(部)
↑ 週刊東洋経済印刷証明付き部数(部)

ビットコインやネット広告、薬局問題やEVショックなど、世の中のトレンドを捉えた特集が多く、これが部数の伸びにつながったのだろう。他方、タブロイド紙的なあおりを思わせる見せ方も少なからずあり、経済誌としての評価は分かれるところ。部数は2013年あたりからはほぼ9万部強を維持し続けており、健闘していると評価はできるのだが。

プラスは1誌、マイナスは3誌…前年同期比動向


続いて前年同四半期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年10-12月、前年同期比)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年10-12月、前年同期比)

プラスは「週刊東洋経済」のみ、マイナスは「週刊ダイヤモンド」「PRESIDENT」「THE21」の3誌。「週刊ダイヤモンド」は誤差領域を超え、1割近い下げ幅。

「週刊ダイヤモンド」は中長期的な動向としては安定期にあるが、今回分も併せ最近の動きは気になるところ。

↑ 週刊ダイヤモンド印刷証明付き部数(部)
↑ 週刊ダイヤモンド印刷証明付き部数(部)

「週刊ダイヤモンド」のキャッチコピーは「書店で一番売れてるビジネス週刊誌」。今ジャンル内では「PRESIDENT」に続く部数だが、「PRESIDENT」は隔週刊誌であることから、少なくとも印刷証明付き部数が確認できるビジネス週刊誌では「一番売れている」で間違いはない。

週刊ダイヤモンド同誌では社会生活の身近な、気になる一つのテーマに絞り、それに切り込むスタイルで特集記事を構成している。そして表紙に大きく描かれたそのテーマの見せ方が鋭く、大きな魅力となっている。部数動向は2013年以降では事実上横ばいで推移していたが、2017年に入ってから下落が続いている。同誌は電子版も同時展開していることもあり、読者の電子版へのシフトが進んでいるのかもしれない。少なくとも最新号ではアマゾンにおけるジャンル別でベストセラー1位の冠が確認できる。



内容の斬新さから注目を集め部数を伸ばしていた「COURRiER Japon」が、編集方針の変更と思われる内容性向の変化とともに失速し、一部有料のデジタル媒体に移行したこと(2016年4月号で雑誌媒体版としては休刊)で、印刷証明付き部数の開示が無くなってからはや2年近くが経過した。昨今の雑誌媒体ではよくあるケースとはいえ、やはり寂しさを覚えさせる。見方を変えると、時流によるところもあるとはいえ、ひとつかじ取りを違えると大きく航路を外してしまう実例なのだろう。

他方、前四半期で休刊決定と部数の非公開が決まった「BIG tomorrow」は、特に雑誌の方針変更や評判が悪くなったとの話も無い。電子書籍版も展開されており、部数も極端な低迷をしていたわけでも無かった。それゆえに、突然の休刊には驚かされるものがある。何か内なる思惑があるのかもしれない。

コミック系雑誌で多分に進んでいる、定期刊行の雑誌の時点における電子雑誌化も、今ジャンルでも少しずつだが確実に歩みを進めている。特にビジネス・金融・マネー誌は電子化との相性がよいので、読者の紙媒体からのシフトは大きな動きとなりうる。それに伴い今件「印刷」証明付き部数の動向が、その雑誌の勢いそのものを反映し難くなるのも仕方があるまい。上げ底をせずに厳密な電子版の販売数を合算した、総合的な刊行部数の公開が望まれよう。


■関連記事:
【「電子書籍ビジネス調査報告書2017」発売】
【定期更新記事:出版物販売額の実態(日販)】
【就業者に読まれているビジネス・経済誌、トップは「日経ビジネス」】

スポンサードリンク


関連記事



▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2018 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー