天候要因がマイナス影響。人手不足やコスト上昇への懸念継続…2018年2月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2018/03/08 15:00

内閣府は2018年3月8日付で2018年2月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先回月比で下落し48.6を計上し、基準値の50.0を割り込む形となった。先行き判断DIは先回月比で下落して51.4となったが、基準値の50超えは維持される形に。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「天候要因等により一服感がみられるものの、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、人手不足やコストの上昇に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成30年1月調査(平成30年3月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きも下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2018年2月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前回月比マイナス1.3ポイントの48.6。
 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「やや悪くなっている」が減少、「変わらない」「悪くなっている」が増加。原数値DIは48.4。
 →詳細項目は「飲食関連」「住宅関連」以外で下落。「製造業」のマイナス2.9ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは先回月比でマイナス1.0ポイントの51.4。
 →原数値では「変わらない」「悪くなる」が減少、「ややよくなる」「やや悪くなる」が増加。「よくなる」が変わらず。原数値DIは52.6。
 →詳細項目では「飲食関連」のみ上昇。最大の下げ幅は「製造業」のマイナス2.1ポイント。基準値の50.0を超えている項目は全項目。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、2016年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ原油価格動向をはじめとする海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。また消費税率の引き上げに関連する形での消費減退の懸念も、そろそろ消費動向に影響を与えてきそうではある。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。

現状・先行きともに下落


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2018年2月)
↑ 景気の現状判断DI(-2018年2月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに4年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレルあたりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

最近では石油産出国の協調減産の動きを受け、さらに中東情勢の緊迫化もあり、原油価格は少しずつ上昇を示していた。原油価格の上昇にあわせて活動が活発化し市場の調整役・頭を押さえる役割を果たしているアメリカ合衆国内のシェールオイルの採掘による生産量の増加も、影響は限定的。結果として日本国内のガソリンや灯油価格も上昇の動きの中にある。ただし直近ではアメリカ合衆国内のシェールオイルの生産量がさらに増加を続け、1970年以来最大の量を記録したとのEIAの報を受けて原油価格は頭打ち、さらには下落の動きを示している。

今回月の現状判断DIは総計で前回月から1.3ポイントのマイナス、詳細項目では「飲食関連」以外で下げ。もっとも最大の下げ幅はマイナス2.9ポイントで、小幅な値の動きではある。

景気の先行き判断DIは「飲食関連」以外はすべて下げ。下げ幅は最大で「製造業」の2.1ポイント。

↑ 景気の先行き判断DI(-2018年2月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2018年2月)

前回月では基準値割れだった「飲食関連」も今回月では超えることができ、すべての項目で基準値を超えている。

大雪などの天候不順とオリンピックが影響。人手不足も


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・2月は大雪に見舞われた月であったが、冬の恒例のイベントや春節などの効果で助けられた。ただ、当地全体でみると、企業の倒産が続いているなど、景況感は余りよくない。倒産の約3割は人手不足によるものであり、隣接する都市部で賃金水準が上昇し、当地の若者が流出していることが原因となっている(一般小売店[土産])。
・アジアからの外国人観光客は家族連れが増えている。日本人観光客は、大河ドラマの影響でツアー客が増えている(高級レストラン)。
・野菜価格の高騰で、家族客からは様々な買い渋りの声が聞かれる(スーパー)。
・大雪や積雪による来客数の減少が大きい。また、平昌オリンピックも来客数減少の要因になったとみられる(百貨店)。

■先行き
・春休みやゴールデンウィークの国内旅行の申込みや、夏の海外旅行の予約が始まっており、前年と比較しても上昇傾向にある(旅行代理店)。
・春夏物スーツなどのオーダーが、早い時期から増えている。また、制服の引き合いも多い(衣料品専門店)。
・株価の不安定要因もあり、引き続き高額品の動きが厳しいと想定される(百貨店)。
・今後、県内での大型建築現場などとの職人の取り合いによる、人件費高騰や職人不足が懸念される(住宅販売会社)。

日本海側を中心とした大規模な降雪をはじめとした天候不順(季節感の上では冬らしすぎとでも表現できようか)による影響が多方面、主にマイナス方向に生じているのが分かる。食料品の価格上昇は売り手からすれば販売単価の引き上げにつながるためよかれ悪しかれだが(業界全体ではプラスに働くことが多い。実際チェーンストアの月次業績報告でも農産物は相場高で堅調との表現が多々見られる)、客足動向そのものや原油価格の上昇に伴うガソリンや灯油の価格上昇は総じてマイナスに働いており、消費マインドを冷やす形となっている。

季節動向やガソリン価格の動きへの関心が強かったが、今回月では全国規模でも人手不足に関わる話も見受けられた。もっとも「他地域の方が就業条件がよいのでそちらに人材が逃げてしまい、自分のところでは人手不足となった」とは、ある意味自業自得とも受け止められるのだが。むしろ縛り付けられることを強要される人材の方が可哀想ではある。変わったところではオリンピック鑑賞に熱中するあまり、外出機会が減り、来客数が減ったのではとの推測も見受けられる。

企業関連の景況感では原油価格の動向や為替など、海外要因による反応が複数で見られる。

■現状
・現在は新生活関連商材や白物家電、花粉の季節を前に空気清浄機などの輸送依頼量が前年を上回っている。しかし、燃料価格の高騰などにより、利益は少なくなっている(輸送業)。
・仕入原料のプラスチックの価格が上昇し、利益が減少している(化学工業)。

■先行き
・金融機関の得意先は、マイナス金利継続により来期も経費削減対策継続のため、広告費等の削減が見込まれる。また多くの得意先も競合が厳しく広告費等は削減傾向であり、余り大きく変わらない見込みである(広告代理店)。
・国内受注量は堅調であるが、海外需要の変動が大きい上に、為替の動向が不透明である(一般機械器具製造業)。

原油価格は燃料費に直接影響するだけで無く、原材料費にも影響を及ぼしているのが確認できる。

雇用関連では人手不足に関わる懸念が見受けられる。

■現状
・派遣登録者数が全く伸びず、客の依頼に対応できない状況である(人材派遣会社)。

■先行き
・企業業績が好調な企業も多いが、人手不足を解消できなければ、今後の見通しは不透明となる(人材派遣会社)。

雇用市場が完全な売り手(優位)市場(就職側の有利市場)である現状では、企業としては現状の人手をつなぎ止め、新規を呼び寄せるための環境改善を行なわねばならない状況にある。そのような状況下においては、例えば派遣よりは正規をとの考えが企業・就職希望者双方に及ぶため、派遣登録者が少なくなるのは致し方ない。そのような場面で相変わらず派遣に頼る企業のは、状況協判断としてはどうなのだろうか(職種として仕方が無い、むろし好ましいケースもあるが)。むしろ派遣業者が人材不足に陥る状況は、雇用市場全体としては悪い話であるとは言い切れない感もある。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合致した対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を見渡すと、「人手不足」の文言を多数見受けることができる(現状27件、先行き47件、合わせて74件)。人手不足を解消しようとするとコストがかさむが、販売価格に反映させると競争力が落ちる、売上減と経費増で困るなどの話が目に留まる。これらは見方を変えれば労働条件の改善やコストの適正化への動きにつながるだけに、正しく市場原理が作用するための一プロセスと見ることもできよう。

実際、これ以上の条件改善の提示は難しいので人手不足感が天井に来たという意見もあれば、現状の改善状況では人手不足は解消できないのでさらに賃金や就業条件などを見直そうとの声もあり、企業によって判断が多種多様にわたっていることが確認できる。また「働き方改革をすると営業時間が減るので売上が減るから困る、休日の設定を強いられる」とする、これまでの状況がいかに就業側に大きな負担があったのかを認識できる声もある。人手不足で受注できない、売上が伸びないとの意見が少なく無いが、果たしてどこまで現状にかなう姿勢を示しているのか、その点までは今調査のコメントから確認できないのは残念ではある。種も蒔かずに育てもせず、いざとなったら果実が欲しいと騒ぐのは、あまりにもむしがよい話ではある。ましてや人手不足の状況においては育てられていなかったのは果実では無く、人である。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

もっとも昨今では直接影響のある半島情勢が緊迫化している。国外要因と国内要因がリンクしている状態なだけに、非常にたちの悪い話には違いない。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

昨今問題視されている、そして報道では得てして否定的に取り上げられている人手不足にしても、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題ではある。現在の社会環境がそのコスト水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じているか、判断を間違っていたまでの話。昔と今とでは状況が異なることを認識すべきではある。


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