現状下落、先行き下落。人手不足やコスト上昇への懸念継続…2017年12月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2018/01/12 15:00

内閣府は2018年1月12日付で2017年12月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で下落し53.9を計上したが、基準値の50.0を超える状態は維持。先行き判断DIは先月比で下落して52.7となったが、基準値の50超えは維持される形となった。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「緩やかに回復している。先行きについては、人手不足やコストの上昇に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに併せて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も併せ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年12月調査(平成30年1月12日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きも下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年12月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス0.2ポイントの53.9。
 →原数値では「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少、「よくなっている」「やや良くなっている」が増加。原数値DIは53.9。
 →詳細項目は「住宅関連」「製造業」のみ上昇。「サービス関連」「非製造業」のマイナス1.3ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は全項目。

・先行き判断DIは先月比でマイナス0.7ポイントの52.7。
 →原数値では「やや良くなる」「悪くなる」が減少、「良くなる」「変わらない」「やや悪くなる」が増加。原数値DIは51.3。
 →詳細項目では「飲食関連」「サービス関連」のみプラス。最大の下げ幅は「住宅関連」のマイナス1.9ポイント。基準値の50.0を超えている項目は詳細区分では全項目。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、昨年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。また消費税率の引き上げに関連する形での消費減退の懸念も、そろそろ消費動向に影響を与えてきそうではある。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。

現状・先行きともに小幅な下落


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年12月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年12月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年以上が経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

最近では石油産出国の協調減産の動きを受け、さらに中東情勢の緊迫化もあり、原油価格は少しずつ上昇を示している。原油価格の上昇にあわせて活動が活発化し市場の調整役・頭を押さえる役割を果たしているアメリカ合衆国内のシェールオイルの採掘も、同国内での寒波の影響で需要が増しているため、調整がうまく進んでいない。結果として日本国内のガソリンや灯油価格も上昇の気配を見せている。

今回月の現状判断DIは総計で前月から0.2ポイントのマイナス、詳細項目では「住宅関係」「製造業」のみが上げ。前回月とはまったく反対の値の動きである。もっとも最大の上げ幅はプラス2.1ポイント、下げ幅はマイナス1.3ポイントで、小幅な値の動きに留まっている。

景気の先行き判断DIは「飲食関連」「サービス関連」以外はすべて下げ。しかし下げ幅は最大で1.9ポイントに留まっているのが幸い。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年12月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年12月)

「小売関連」がやや危ういが、それでも全項目の基準値超えは維持されたのは朗報ではある。

人手不足の現状となぜそれが起きるのかと


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・競合店に対抗した販促強化の効果もあり、少し単価の高いこだわり商品の売行きが良くなってきている(スーパー)。
・冷蔵庫、洗濯機等の白物家電の動きも良く、特に季節商材が活発である(家電量販店)。
・前月まで好調に推移していた紳士及び婦人防寒衣料が若干失速している。来客数に変化はないが、全体的な売上は減少している。ただし、クリスマス商戦はプラスで推移している(百貨店)。
・コラボやクリスマス等の各種イベントを実施したが、首都圏のファミリー層の集客が弱く、3か月前よりやや悪くなっている(遊園地)。

■先行き
・客は少しでも良い物を購入したいという感覚に変わってきており、単価が上がっている(衣料品専門店)。
・1月に新型車が投入される。新型車効果で販売台数が伸びる(乗用車販売店)。
・年明けは、青果物の収量、相場が安定せず、水産物は漁獲量が安定する見込みがない。食肉の相場も高止まりをしており、消費の冷え込みが懸念される(スーパー)。
・売上が維持できていても、原料価格高騰に加えて人手不足に拍車がかかっており、利益を圧迫している(コンビニ)。

キャベツなどの葉物の高騰で最近とみにニュースで取り上げられるようになった野菜の高騰だけでなく、水産物に関わる問題も指摘されているのは興味深い。もっとも、相場高=業績の悪化と見るのは一面的な問題で、例えばチェーンストア業界の月次報告では得てして、相場高になるほど業績が堅調化している。消耗品、特に食料品はある程度の相場高ならば消費量の落ち込みはさほど無く、売上がアップするからに他ならない。他方、人手不足による人件費の上昇が業績にはマイナスになるとの意見も見受けられる。

企業まわりの景況感でも景気の回復と同時に人手不足の声が聞かれる。

■現状
・アメリカ向けが好調であることに加え、新興国向けの需要が回復していることから、輸出関連の発注が増えている(金属製品製造業)。
・冬場にしてはまずまずの仕事量があったが、軽油の値上がりが徐々に影響してきており、利益増には結び付いていない(輸送業)。

■先行き
・年度末に向けても人件費の上昇や人手不足、燃料費の高騰など、業況改善は見込めない(輸送業)。
・運送業者の手配が困難である。運転手不足のため、配送に影響が現れている(化学工業)。

原油高に伴う燃料方面でのコストアップの懸念も目に留まる。とはいえ、かつてのような70ドル、80ドルといった高値にはなりにくい要因があるため、現状からさらに上放れすることは可能性としてあまり高く無い。しかしながらしばらく原油価格が40ドル前後の市場動向に慣れていた面もあり、現状水準における価格帯でもツラさを覚えるところも多いだろう(直近ではWTIは63-64ドル台で推移している)。

雇用関連ではポジティブな声が多い。要は雇う側からは大変だが、雇われる側にしてみれば状況は確実に回復している次第。ただし一部業界で開き直りの動きも見られる。

■現状
・企業からの求人は引き続き旺盛であるが、求職者の登録が減少しておりマッチングに苦慮している(人材派遣会社)。

■先行き
・人手不足の改善傾向がみられないなか、賃金上昇に伴う人件費の増加と求人に掛かる経費の増加で求人意欲が低下している業種があり、今後の企業活動への影響が懸念される(求人情報誌製作会社)。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合わせた対価・条件を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を見渡すと、「人手不足」の文言を多数見受けることができる(現状・先行き合わせて76件)。そのためにコストがかさむが販売価格に反映させると競争力が落ちる、売上減と経費増で困るなどの話が目に留まる。これらは見方を変えれば労働条件の改善やコストの適正化への動きにつながるだけに、正しく市場原理が作用するための一プロセスと見ることもできよう。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

もっとも昨今では直接影響のある半島情勢が緊迫化している。国外要因と国内要因がリンクしている状態なだけに、非常にたちの悪い話には違いない。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

昨今問題視されている、そして報道では得てして否定的に取り上げられている人手不足にしても、雇用市場の需給バランスの正常化、そして適切な労働対価が労働力とやり取りされる状態となるための移行プロセスに過ぎないと考えれば、むしろ肯定的に見るべき問題ではある。現在の社会環境がそのコスト水準を求めており、それに応じたコストの算出ができないのであれば、ビジネスモデルそのものが現状に対応しきれていないか、そろばん勘定の上でどこかゆがみが生じている。昔と今とでは状況が異なることを認識すべきではある。


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