現状上昇、先行き下落。人手不足やコスト上昇への懸念継続…2017年11月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落

2017/12/08 14:00

内閣府は2017年12月8日付で2017年11月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇し55.1を計上し、基準値の50.0を超える状態は維持。先行き判断DIは先月比で下落して53.8となったが、基準値の50超えは維持される形となった。結果として、現状上昇・先行き下落の傾向となり、基調判断は「緩やかに回復している。先行きについては、人手不足やコストの上昇に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年11月調査(平成29年12月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年11月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス2.9ポイントの55.1。
 →原数値では「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少、「やや良くなっている」が増加。原数値DIは52.4。
 →詳細項目は「住宅関連」「製造業」のみ下落。「飲食関連」のプラス7.8ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は全項目。

・先行き判断DIは先月比でマイナス1.1ポイントの53.8。
 →原数値では「やや良くなる」が減少、「良くなる」「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加。原数値DIは51.7。
 →詳細項目では「雇用関連」のみプラス。最大の下げ幅は「非製造業」のマイナス3.2ポイント。基準値の50.0を超えている項目は詳細区分では全項目。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、昨年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。昨今ではとりわけ中東方面における政情不安定化によるエネルギー方面のコスト増リスク、欧州方面のテロ事案と合わせ生じる円高による輸出関連のネガティブな影響の体現化、そしてなによりも朝鮮半島情勢の緊迫化によるリスク回避の動きが心配される。また消費税率の引き上げに関して消費減退の懸念もそろそろ消費動向に影響を与えてきそうではある。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。

現状はおおむね上昇、先行きはほぼ下落


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年11月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年11月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年以上が経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

最近ではアメリカ合衆国内の原油ストックの増加を受け、さらに中東情勢の緊迫化で原油減産の協定が有名無実になるのではとの懸念もあり、じわりと原油価格は下落の値動きに転じた。少なくとも利用側にとっては幸いな状態へとなりつつある。しかしながら直近では朝鮮半島情勢や中東情勢などを受けて上昇基調。同時にアメリカ合衆国内のシェールオイルの採掘量も増加しているので、天井が見える状態ではあるのだが。

今回月の現状判断DIは総計で前月から2.9ポイントのプラス、詳細項目では「住宅関係」「製造業」のみが下げ。「飲食関連」の上げ幅がプラス7.8ポイントと大きめだが、これは前月に台風の影響で大きく下げたことの反動。とはいえ前々月比でもプラス1.4ポイントであるから、上昇基調には違いない。

景気の先行き判断DIは「雇用関連」以外はすべて下げ。下げ幅が最大で3.2ポイントに留まっているのが幸い。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年11月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年11月)

下げはしたものの、全項目の基準値超えは維持されたのが幸いではある。

人手不足への懸念が強まる


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・今月は天候もほぼ安定し、客の来場も順調で、秋のゴルフコンペも盛況である。コンペが多かったため、客単価も安定している(ゴルフ場)
・冷蔵庫やエアコンの省エネタイプなど、高付加価値で価格の高い商品が動いている(家電量販店)
・付加価値のある商品が上向いて、客単価が上昇している(スーパー)
・前年11月に比べ、中旬以降は最低気温10度以下の日が多く、コートを中心とした重衣料の動きが好調である。また、外国人観光客の購入も好調が続いている(百貨店)
・戸建て住宅の引き合いが減って半年たつが、回復の兆しがない(設計事務所)

■先行き
・冷蔵庫は大型の物がよく売れている。テレビも大画面の4Kテレビが主流になってきて
おり、年末商戦に期待感が出てきている(家電量販店)
・食品の買上客数が増えてきているため、この先も集客増が見込める(スーパー)
・食料品価格や人件費の上昇などを始め、良くなる要素が見当たらない(一般レストラン)・悪天候が続く予報となっており、来客数が減少する(テーマパーク)

相次ぐ台風の到来で大きな影響を受けた前月と比べ、天候は平年通りとなり、天候起因のプラスマイナス的な影響は見受けられない。景況感は回復の動きを示しているが、業態や個別企業単位では軟調なところも少なく無い。他方、人手不足による人件費の上昇がマイナスになるとの意見も見受けられる。

他方、企業回りの景況感でも景気の回復と同時に人手不足の声が聞かれる。

■現状
・緩やかながら輸送物量が増加している。同業他社の運賃値上げにより当社に荷主が移行する動きもある(輸送業)
・ユニフォーム関連や自動車関連を中心に、前年並みの受注量を確保している。しかし、受注の勢いはさほど強くない(繊維工業)

■先行き
・この先も人手不足の厳しい状況は更に続く。人件費や燃料費の高騰による経営への影響を考えると、先行きも慎重にならざるを得ない(輸送業)
・原油高の影響で来年にかけて原料の値上げが想定される。製品の値上げを行う必要があるが、需要の低迷につながる恐れがあり、悪い方向へ行く(化学工業)。

原油高に伴う燃料方面でのコストアップの懸念も目に留まる。とはいえ、かつてのような70ドル、80ドルといった高値にはなりにくい要因があるため、現状からさらに上放れすることは可能性としてあまり高く無い。

雇用関連ではポジティブな声が多い。要は雇う側からは大変だが、雇われる側にしてみれば状況は確実に回復している次第。

■現状
・2019年度採用のインターンシップイベントに参加する企業数は多く、ほとんどの企業が採用数を増やすと回答している。学生有利の就職戦線が続いており、予算も増えている
様子である(民間職業紹介機関)。

■先行き
4月以降の雇用に向けて、年明けから求人活動が積極化すると思われる。特に、売手市場で人手不足が続くため、企業による囲い込みの動きは早い(人材派遣会社)

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合わせた対価を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を見渡すと、「人手不足」の文言を多数見受けることができる(現状・先行き合わせて67件)。そのためにコストがかさむが販売価格に反映させると競争力が落ちる、売上減と経費増で困るなどの話が目に留まる。これらは見方を変えれば労働条件の改善やコストの適正化への動きにつながるだけに、正しく市場原理が作用するための一プロセスと見ることもできよう。

興味深い意見としては先行きに関わるコメントで

・最低賃金の上昇及び仕入れ等経費の値上がりにより、今年9月より販売価格を5%程度値上げしたが、客足は落ちていない。

・前年の伸びが良かった分、今年は前年割れである。競合店が増えて、来客数に影響が出ている。また、最低賃金上昇により、時給が上がり、営業利益が圧迫されている。

・売上は今後も順調に伸びる一方で、最低賃金の引上げ等の影響が10月より出ている。また、米などの原材料値上がりも響くことが予想されるため、しばらくは横ばいで推移する。

・人手不足の状況は相変わらずであり、最低賃金がアップしたものの、景気に及ぼす影響度合いは変わらない。

・最低賃金の引上げによる、給与全体の引上げが零細企業でも行われ、消費者の外食利用にも良い影響を及ぼす。

なるものが挙げられる。人件費の上昇の一因となる最低賃金の引き上げでコストは当然上昇するわけだが(見方を変えると上昇した場合、それまでは最低賃金のレベルでしか賃金を支払っていなかったことになる)、その影響がポジティブにもネガティブにも表れている。要は周辺環境に対応できているか否かということだろう。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

もっとも昨今では直接影響のある半島情勢が緊迫化している。国外要因と国内要因がリンクしている状態なだけに、非常にたちの悪い話には違いない。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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