映画館離れなど無い…映画館での映画鑑賞の動向推移をグラフ化してみる(最新)

2017/11/28 05:08

2017-1122最近では社会現象まで巻き起こすヒット作が相次ぐ映画業界。しかしながらそのメインとなるプラットフォームにあたる、映画館での映画鑑賞は不調であるとの話をよく見聞きする。入場者数などはすでに業界団体から開示されているが、一般利用客の利用性向としてはどのような実情なのだろうか。総務省統計局が2017年7月14日以降順次結果を発表している2016年社会生活基本調査などの結果を基に確認する(【平成28年社会生活基本調査】)。

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映画館離れどころか実情は


今調査の調査要綱は先行記事【ボランティア活動の実態をグラフ化してみる】を参照のこと。

まず最初に示すのはデータが取得可能な1986年以降の映画館での映画鑑賞の行動者率(調査日において過去1年間に1日でも映画館で映画鑑賞をした人の割合)と行動者数。1986年から1991年は15歳以上が、1996年以降は10歳以上が対象となっているため、厳密には双方に連続性は無い。さらに1986年と1991年分は総数の行動率が計上されていない(対象年齢が異なるためだろう)。そのため行動者率推移では考察から外している。

↑ 映画館での映画鑑賞の行動者率推移(男女別)
↑ 映画館での映画鑑賞の行動者率推移(男女別)

↑ 映画館での映画鑑賞の行動者数推移(万人、男女別)
↑ 映画館での映画鑑賞の行動者数推移(万人、男女別)

明らかに男女とも、映画館での映画鑑賞の行動者率は増加の一途をたどっている。2011年に一時的に落ち込んだのは、同年3月に発生した東日本大震災に伴う直接の被害や自粛ムードに伴うものだろう。1996年当時には男性で1/4近く、女性で3割近くが少なくとも年に1日は映画館に足を運んで映画鑑賞をしていたが、直近の2016年では男性で4割近く、女性は4割強にまで増加している。

行動者数では2011年だけでなく1991年でも減少の動きを示したが、大よそ増加の流れにある。1986年当時と比べ、30年が経過した2016年では男性で600万人強、女性では1000万人近く増加している。

これを年齢階層別に見たのが次のグラフ。年齢階層の仕切り分けを古い調査にあわせてあるので、直近2016年の調査よりは粗いものとなっている。

↑ 映画館での映画鑑賞の行動者率推移(年齢階層別、男性)
↑ 映画館での映画鑑賞の行動者率推移(年齢階層別、男性)

↑ 映画館での映画鑑賞の行動者率推移(年齢階層別、女性)
↑ 映画館での映画鑑賞の行動者率推移(年齢階層別、女性)

↑ 映画館での映画鑑賞の行動者数推移(万人、年齢階層別、男性)
↑ 映画館での映画鑑賞の行動者数推移(万人、年齢階層別、男性)

↑ 映画館での映画鑑賞の行動者数推移(万人、年齢階層別、女性)
↑ 映画館での映画鑑賞の行動者数推移(万人、年齢階層別、女性)

まず行動者率だが、調査年のヒット作とその対象年齢で少なからぬ影響も生じているようだが、大勢としては男性は30代以降、女性は20代後半以降はおおむね映画館での映画鑑賞をより積極的に行う傾向を示している。若年層は映画館での映画離れ的な動きも一部で見られるが(特に男性)、2016年では大いに挽回をし、調査対象期間内では最大の行動者率を計上している。直近年ベースの精査記事でも言及したが、「君の名は。」が貢献した可能性を示唆する動きではある(「この世界の片隅に」は2016年11月上映開始のため、今回調査結果では反映されていない)。

行動者数の動向でも似たような状況が確認できる。男性は30代までが漸減、30代で増加の後に横ばい、それ以降は漸増。女性は行動者率とはやや異なり40代以降で好調化の動きをしている。



【60年余りの間の映画館数の変化をグラフ化してみる】でも示しているが、業界団体の公開資料の限りでは、映画館入場者(延べ人数)は1958年をピークに大きく減少したあと1970年代以降は緩やかな減少、今世紀に入ってからは横ばい、先の震災以降は漸増の動きの中にある。

↑ 映画館入場者数(億人、年単位)(再録)
↑ 映画館入場者数(億人、年単位)(再録)

↑ 映画館入場者数(2001年-、億人、年単位)(再録)
↑ 映画館入場者数(2001年-、億人、年単位)(再録)

昨今一部界隈で語られている「映画館での映画鑑賞離れ」といった話は、今回の調査結果の限りでも確認することはできない。あるいは1950年代から1960年代の時のような状況では無いから足が遠のいているとでも評しているのだろうか。

当時と現在とでは、人の生活に関わる映像娯楽の環境は大きく様変わりを示している。1958年をピークに大きく入場客が落ち込んだのはテレビの普及によるものであり、テレビが無かった時代と同じような活況ぶりを期待する方が間違っている。

インターネットの普及に伴い高解像度の動画が自宅で楽しめるようになり、テレビも大型化・高画質化・多機能化を示している。映画館での映画鑑賞の動員数増加を目指すのなら、それらと対抗できる良質コンテンツの輩出を成しえる土壌づくり、インターネットや家庭のテレビでは得られない魅力あふれる体験を提供する模索が求められよう。

なお映画館以外での映画鑑賞も今調査では調査対象項目に挙げられているが(「映画館以外での映画鑑賞(テレビ・DVD・パソコンなど)」)、2006年と2011年の調査では「DVD・ビデオなどによる映画鑑賞(テレビからの録画は除く)」とずれのある対象行動だったため、時系列的な比較ができない。「自宅で映画館並みの大スクリーンで、好きなだけ映画を鑑賞できるようになったので映画館への入場客が減っている」という話を考察するデータは得られないことを記しておく(入場者数そのものが増えているのだから、考察する必要そのものも無いのだが)。


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