現状上昇先行き低下。人手不足、海外情勢への懸念継続…2017年9月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き低下

2017/10/10 15:00

内閣府は2017年10月10日付で2017年9月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇し51.3を計上し、基準値の50.0を超える形となった。先行き判断DIは先月比で低下し51.0となったが、基準値の50超えは維持された。結果として、現状上昇・先行き低下の傾向となり、基調判断は「着実に持ち直している。先行きについては、人手不足や海外情勢に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年9月調査(平成29年10月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きは低下


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年9月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス1.6ポイントの51.3。
 →原数値では「やや悪くなっている」が減少、「やや良くなっている」「変わらない」「悪くなっている」が増加。原数値DIは49.6。
 →詳細項目は「製造業」「雇用関連」のみ下落。「小売関連」のプラス3.8ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「小売関連」「飲食関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは先月比でマイナス0.8ポイントの51.0。
 →原数値では「変わらない」「やや悪くなる」が減少、「良くなる」「やや良くなる」「悪くなる」が増加。原数値DIは50.4。
 →詳細項目では「サービス関連」「製造業」がマイナスでそれ以外はプラスかゼロ。最大の上げ幅は「住宅関連」の3.4ポイント。基準値の50.0を超えている項目は詳細区分では「小売関連」「飲食関連」「サービス関連」「住宅関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、昨年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。昨今ではとりわけ中東方面における政情不安定化によるエネルギー方面のコスト増リスク、欧州方面のテロ事案と合わせ生じる円高による輸出関連のネガティブな影響の体現化、そしてなによりも朝鮮半島情勢の緊迫化によるリスク回避の動きが心配される。また消費税率の引き上げに関して消費減退の懸念もそろそろ消費動向に影響を与えてきそうではある。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。

現状は上昇多し、先行きは高安まちまち


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年9月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年9月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

最近ではアメリカ合衆国内の原油ストックの増加を受け、さらに中東情勢の緊迫化で原油減産の協定が有名無実になるのではとの懸念もあり、じわりと原油価格は下落の値動きに転じた。少なくとも利用側にとっては幸いな状態へとなりつつある。しかしながら直近では朝鮮半島情勢を受け、また米国に相次ぎ襲来している大型台風の影響を受けて、40ドルを底値とした50ドル台までの間におけるボックス圏での値の動きを見せつつある。

今回月の現状判断DIは総計で前月から1.6ポイントのプラス、詳細項目では「製造業」「雇用関連」のみが下げ。値幅は限定的で最大でも3.8ポイント。「小売関連」「飲食関連」と2項目が新たに基準値超えを果たしたのが頼もしい。

景気の先行き判断DIは上げ下げがほぼ均等。全体ではマイナス0.1ポイントだが、実質的にはほぼ横ばい的な状況。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年9月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年9月)

家計動向内では取引金額の大きい「住宅関連」が基準値を超え、一安心というところ。他方「サービス関連」がやや大きめな下げ幅で、基準値を割り込みそうなのがやや心配。

冷夏が継続、逆にプラスになるところも


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・これまで売上をけん引してきた訪日外国人客や富裕層を差し引いても、好調な様子がうかがえる(百貨店)。
・今年は気温の低下が早く、季節商材の動きが活発になっており、特に薄手の羽織物が好調である。低調になっていた夏物商材の動きは値下げ効果で回復しつつある(スーパー)。
・レストラン全体の来客数が、前年同月と比較して上昇している。客単価は低いものの、食に対する消費意欲は高まっているように見受けられる(高級レストラン)。
・台風の接近に伴う輸送量の減少がみられた(その他サービスの動向を把握できる者[フェリー])

■先行き
・10月に入ればいろいろな行事があるので、予約も増えてきており何とか良くなっていく。アジアからの外国人観光客が増えてきており、宴会も多いので今後期待している(高級レストラン)。
・新型スマートフォンが続々登場し、冬商戦が活発化すると期待している(通信会社)。
・衆議院選挙が終わるまでは、客の動きや売上が鈍る。中国政府の旅行規制等もあり、今後の動向が心配である(百貨店)。
・北陸新幹線開業効果が落ち着きをみせ、向こう3か月の予約状況を前年同月比でみても、団体客を中心に約1割近い減少になる(テーマパーク)

前月は冷夏の影響を受けて季節物商品が振るわず、外食系をはじめとしたBtoC系のビジネス全般が軟調な動きを示したが、今回月ではその寒さがプラスに働き、秋冬物がよく動いたようだ。他方、台風の接近によるマイナス影響もあったが、天候そのものは今夏ほどの不調ぶりは見せず、業界内での新商品の展開による消費底上げなど、各種イベントによる消費活性化への期待が期待できるとの意見も見受けられる。

なお天候に絡んで高齢化が影響しているとの意見「客層が高齢化しており、天候の良い日や涼しい日が多ければ繁盛する(美容室)」が目に留まる。天候動向による影響は、今後はこれまで以上に大きなものとなるかもしれない。

他方、企業回りの景況感では通信関連の好調さが相次いでいる。

■現状
・モノのインターネット、セキュリティ、電子商取引関連の新サービスが取引先に浸透しつつあり、サービス紹介の依頼や提案機会が増加している(通信業)。
・今月になって、少し引き合いが弱まっている。通常の小規模な注文はあるが、大型案件の引き合いが減っている(一般機械器具製造業)。

■先行き
・中小企業向けの通信事業が比較的順調である。課題解決型の営業によって客のニーズにマッチしてきたためとみられる(通信業)。
・人手不足でコストがかさむ。販売価格に反映させると価格競争力を失い、受注が低調になる恐れがある(化学工業)。

人手不足の話も同時に出ていることから、コスト削減や人手不足をIT系技術で補おうとする動きなのかもしれない。

その人材不足の話は割合的には減ったものの、まだ少なからぬ数が見受けられる。ただしネガティブな声は減っている。

■現状
・地元での国体開催で観光、飲食、広告など大変景気が良くなっている。それと同時に、事業者としては人材不足が更に深刻化している(人材派遣会社)。

■先行き
・主に製造業の求人数が増加傾向にある。ただし、各企業とも人材確保できるまでに至っておらず、求職者が不足する状況は、今後も継続するとみている(民間職業紹介機関)。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合わせた対価を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を見渡すと、いくつか「人手不足」の文言を見受けることができる(重複合わせて16件)。そのためにコストがかさむが販売価格に反映させると競争力が落ちる、売上減と経費増で困るなどの話が目に留まる。これらは見方を変えれば労働条件の改善やコストの適正化への動きにつながるだけに、正しく市場原理が作用するための一プロセスと見ることもできよう。

他方「待遇より自分に合った環境での仕事を選ぶ傾向がある」との興味深い文言も見受けられる。ただし「決して景気がよいということではない」と続いているが、景気が良く無ければ自分の特性にあった仕事を選ぶなどということはできないので、コメント者の分析は正しくない。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

もっとも昨今では直接影響のある半島情勢が緊迫化している。国外要因と国内要因がリンクしている状態なだけに、非常にたちの悪い話には違いない。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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