人の仕事がロボットやコンピューターに任せられるようになったら…色々な問題と夢への思い、その米国事情

2017/10/22 05:21

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新技術の開発と普及は、社会の様々な面に大きな影響をもたらすようになる。元々技術は人の行動を(主によい方向に)変えるために開発されたものだから、影響が生じるのは当然ではあるが、直接関係する領域だけでなく、連鎖反応的に多様な方面の変化が生じることもある。昨今の新技術の代表格であるロボットやコンピューターが、今以上に進歩を続け普及が進み、人の仕事の多くをそれらが代替するようになったら、どのような問題が発生すると認識されているのだろうか。アメリカ合衆国の事情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月4日に発表した、技術と人々の暮らしに関わる調査結果【Automation in Everyday Life】を元に確認していく。


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今調査の調査要綱は【技術の発展は自分の仕事にどのような影響を与えているのか、米国就業者の思い】を参照のこと。

次に示すのは現在人が従事している仕事の多くを、新技術の代表格であるロボットやコンピューターが代替できるようになったら、どのような影響が生じるのかについて、回答者の意見を求めた結果。例えば「貧富格差は拡大する」は肯定が76%とあるので、3/4強の人はロボットやコンピューターが人の仕事の多くを代替するようになれば、人の貧富の格差は今よりも大きなものになると考えている。

↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになったら(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになったら(2017年5月、米国、18歳以上)

貧富格差は拡大するだろうとの意見は76%、生活は苦しくなるだろうと思う人は64%。ロボットやコンピューターもまた、仕事の効率化、安全性の向上、低コスト化を目指して開発導入されるものであり、進歩の言葉通り先に進む手立てであるはずなのだが、多くの人はかえってつらい思いをするようになると認識している。要はロボットやコンピューターは誰にとって都合の良い道具なのか、ということなのだろう。

経済の効率化や人が仕事の多忙さから解放されるとの意見は4割程度、雇用拡大や人の仕事への対価が上乗せされるだろうとの意見は1/4程度でしかない。もう少し明るい未来を夢見ている印象はあったのだが、少なくともアメリカ合衆国の人達にとって、ロボットやコンピューターが仕事を代替するのは、あまり都合のよい話には見られていないようだ。

しかし実情としては、技術は常に前に進み、多くの新技術が仕事場にも導入される。現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターがするようになるとしたら、どのような対応が必要だろうか。いくつかの事例を挙げて、それに賛同するか否かを尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになる場合、次の事柄に賛同するか(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになる場合、次の事柄に賛同するか(2017年5月、米国、18歳以上)

多くの仕事をロボットやコンピューターができるようになっても、人の仕事を代替させるのは人が行うのには危険な場、非健康的な場合に限るように制限を設けるべきだとの意見は8割強が賛成派。できるものはすべて機械任せとする考えは、多くの人が反対している。

逆に機械ではなく人によるやり取りには、より多くの対価が支払われるべきだとの意見は6割強が賛成派。きめ細やかな配慮対応はロボットやコンピューターでは難しいこともあり、賛同する人は多い。ただしこの場合、見方を変えれば品質が同程度、あるいは少しばかり質が落ちたもの、杓子定規な対応でも、安ければよいとの判断も同時に肯定されるため、二極化が進むことになる。例えば自動レジがある程度導入されたデパートで「人によるレジ清算の場合、手数料として100円が上乗せされます」「自動レジの場合は買い物袋は無料で提供されますが、人のレジでは有料になります」となった場合、どちらのレジが使われるだろうか。

単純作業や技術のあまりいらない仕事がロボットやコンピューターに任されるため、その類の仕事で糧を得ていた人は働き口が奪われ、生活が不可能となる。そのような人のために政府によるベーシックインカムを導入するべきだとの意見は6割強が賛成派(ただしベーシックインカムは原則として国民全員が対象となるため、職を奪われた人に限定されない)。また意図的に人力での作業を必要とする公共事業を行い、ロボットやコンピューターに職を奪われた人を賄うべきだとの意見は6割近くが賛成派。

これらの意見が社会的・経済的に正しいか否か、そして実現度がどれだけ高いのかはさておくとして。ロボットやコンピューターによる人の労働の代替が行われる未来の社会は、あまり明るいイメージが持たれていないように見えるのだが。


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