現状横ばい先行き上昇。人手不足は継続中で海外情勢への懸念も…2017年8月景気ウォッチャー調査は現状横ばい・先行き上昇

2017/09/08 15:00

内閣府は2017年9月8日付で2017年8月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で変わらず49.7を計上し、基準値の50.0を割り込む形を継続することとなった。先行き判断DIは先月比で上昇し51.1となり、基準値の50超えは維持された。結果として、現状横ばい・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「持ち直しが続いている。先行きについては、人手不足や海外情勢に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年8月調査(平成29年9月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は横ばい、先行きは上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年8月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラスマイナスゼロポイントの49.7。
 →原数値では「やや良くなっている」「悪くなっている」が減少、「良くなっている」「変わらない」「やや悪くなっている」が増加。原数値DIは49.6。
 →詳細項目は「飲食関連」「製造業」が2ポイント台の上昇。下落は「サービス関連」のマイナス1.2ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは先月比でプラス0.8ポイントの51.1。
 →原数値では「やや良くなる」「変わらない」が減少、「やや悪くなる」「悪くなる」が増加。原数値DIは50.1。
 →詳細項目では「雇用関連」がマイナスでそれ以外はすべてプラス。最大の上げ幅は「住宅関連」の2.1ポイント。基準値の50.0を超えている項目は詳細区分では「小売関連」「飲食関連」「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、昨年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。昨今ではとりわけ中東方面における政情不安定化によるエネルギー方面のコスト増リスク、欧州方面のテロ事案と合わせ生じる円高による輸出関連のネガティブな影響の体現化、そしてなによりも朝鮮半島情勢の緊迫化によるリスク回避の動きが心配される。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。

現状は高安まちまち、先行きは上昇多し


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年8月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年8月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

最近ではアメリカ合衆国内の原油ストックの増加を受け、さらに中東情勢の緊迫化で原油減産の協定が有名無実になるのではとの懸念もあり、じわりと原油価格は下落の値動きに転じた。少なくとも利用側にとっては幸いな状態へとなりつつある。しかしながら直近では朝鮮半島情勢を受け、また米国に相次ぎ襲来している大型台風の影響を受けて、再び50ドル台をはさんでの値動きを見せつつある。

今回月の現状判断DIは総計で前月から変わらず、詳細項目では上げ下げまちまち。しかし値幅は限定的で最大でも2.9ポイント。「飲食関連」が基準値を目指すかのような動きを見せているのが頼もしい。

景気の先行き判断DIは大よその項目で小幅な上昇。下げている詳細項目は「雇用関連」のみ。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年8月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年8月)

家計動向内では取引金額の大きい「住宅関連」がまだ基準値以下なのが少々気がかりだが、それ以外はおおむね堅調といえよう。

不調な夏の影響がそこかしこに


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・引き続き、富裕層を中心とした高額商品の動きが良い。また、客単価が高いインバウンド消費も継続的に伸びている(百貨店)。
・8月は開店と同時に満席になり、午後3時ごろまで満席が続いている。売上も前年比プラス3%とようやく前年を上回るようになった。日中は子ども連れの観光客など、家族客が多く、夕方以降は年齢層の高い客が目立つ。また、外国人客もちらほらとみられる(高級レストラン)。
・今月はとにかく天候が悪く、来客数が減少している。それに伴い売上も3〜4%落ち込んでいる(コンビニ)。
・宿泊間際の予約が全く伸びなかった。梅雨明けからの長雨やゲリラ豪雨と、この夏は悪天候に影響を受けている(観光型ホテル)。

■先行き
・天候不順による一時的な売上低下が改善されれば、前年と同程度の売上傾向で推移する(コンビニ)。
・軽自動車の人気車種のモデルチェンジが予定されているため、大いに期待している(乗用車販売店)。
・マイホーム建築費や土地価格が値上がりしているなか、住宅ローン金利が低く推移しているため、住宅展示場への来場者数は前年同月比で増えている(住宅販売会社)。
・関東方面がずっと雨であったため、野菜の値上がりが続く可能性もあり、その場合は厳しい(スーパー)。

今年の夏は西日本はともかく東日本・北日本で悪天候が続き、夏が長期休暇を取ったような、梅雨が遅刻してそのまま居ついてしまったような状態となり、季節物商品を中心としてBtoC系のビジネス全般への悪影響が懸念される形となったが、コメントにもそれを体現化したような話がそこかしこに見受けられる。天候を除けば好調な話が少なくないだけに、今夏の天候不良がつくづく残念でならない。

なお「天候」のキーワードは重複合わせて26か所で確認できる。その多くは東日本・北日本で、ネガティブな内容。いくつかは西日本でも見受けられるが、ポジティブなものも多い(例えば四国における「天候に恵まれ、客足は順調である。青果の相場安も収束してきていることから売上が回復傾向にあり、景気は上向いている(スーパー)」など)。

他方、企業回りの景況感ではその悪天候に関わる興味深い話も見受けられる。

■現状
・例年8月の受注はお盆休みの影響で落ち込むが、今年は前月と同じ、もしくはそれ以上の見込みである(一般機械器具製造業)。
・全国の1日当たりの取扱物量が、お盆明けから減少しており、3か月前にはなかった傾向がみられる。8月は閑散期ではあるが、例年にはない傾向にある(輸送業)。

■先行き
・受注先工場の工事関係で、受注量が増え生産量が増加している(精密機械器具製造業)。
・昨今、豪雨など自然災害が続くなかで、雨水対策などの設備投資を優先する企業が増えており、発注額も増えてきている。また、相変わらず人手不足が続いており、人件費が上がるにつれ見積額も上がっているのが現状である(建設業)。

悪天候によるネガティブな話は多々見聞きするが、ポジティブな話はなかなか無い。それゆえに、悪天候を受けて対策を講じる企業が増え、その関連の需要が増しているとの話はなるほど感を覚えさせる。

人材不足の話は割合的には減ったものの、まだ少なからぬ数が見受けられる。ただしネガティブな声は減っている。

■現状
製造業を中心として求人数が増加傾向にあり、求人倍率も高水準で推移している。また、企業から人手が足りないとの声も多く聞いている(職業安定所)

■先行き
求人があっても求職者数が少ないため、マッチングの成立が難しい(人材派遣会社)。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合わせた対価を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を見渡すと、いくつか「人手不足」の文言を見受けることができ、そのために納期対応に支障が出ている、輸送コストの見直しが必要、人件費の高騰、新規事業に手が出せないとの話に続いている。これらは見方を変えれば労働条件の改善やコストの適正化への動きにつながるだけに、正しく市場原理が作用するための一プロセスと見ることもできよう。

他方、求職者数が変わらずミスマッチが増える状況は色々と想定できる。求職者の層が拡大した、求人側が多様な方面に広がっている、マッチングしやすい(汎用性の高い、人気のある)求人はすぐに埋まってしまう、求職者の求める条件のハードルが上がっているなどだろうか。ミスマッチは少なければそれにこしたことは無いのだが、市場がある程度熟成化してくると、一定率で生じることは仕方がない。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

もっとも昨今では直接影響のある半島情勢が緊迫化している。国外要因と国内要因がリンクしている状態なだけに、非常にたちの悪い話には違いない。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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