世帯所得の中央値や世帯人員数の移り変わりをグラフ化してみる(最新)

2017/09/29 05:10

2017-0928先行記事【世帯当たりの平均所得金額推移をグラフ化してみる】にて厚生労働省が2017年6月27日に発表した平成28年版(2016年版)の「国民生活基礎調査の概況」をもとに、世帯の平均所得や所得中央値について解説したところ、「平均値は実情を表していない、中央値の動向を確認すべきだ」とのご意見をいただいた。そこで今回は中央値の動向をはじめ、いくつかの視点で世帯あたりの所得動向を見ていくことにする(【発表ページ:平成28年 国民生活基礎調査の概況】)。

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平均値と中央値


まずは言葉の定義の再確認。「平均(値)」とは統計の上での指標の一つで、一定の集団の実情を数字で表す方式、代表値。普段から使われている平均値とは算術平均や相加平均のことを指し、算出方法は対象集団の該当指標のすべてを足して、それを集団個数で割るもの。

例えばそれぞれ10個・20個・10個・60個・20個の石を持つ人がいる、合計5人の集団があるとすれば、その集団の平均の石の保有数は(10+20+10+60+20)÷5=24で、24個となる。

しかし平均値では数字の偏りが分かりにくい、全体像は示せてもゆがみが把握しにくいとの意見もある。今件具体例なら「60個も持っている人が平均値を引き上げている」なるものだ。そこで最近よく引き合いに出されるのが「中央値」。これは対象集団の個々を、該当指標順に並べ、その真ん中の対象個体の値を示すもの。

例えば上記の集団ならば、それを石の個数順に整列させると10個・10個・20個・20個・60個となる。真ん中は右から(左からでも良いが)3人目であり、この人が持っている石は20個なので、石の保有数中央値は20個となる。

ちなみに対象個体数が偶数の場合は中央値を算出する時に半分に切るわけにはいかないので、中央に近い前後2つの値の平均値となる。集団の構成が10個・20個・10個・60個・20個・10個なら、並べると10個・10個・10個・20個・20個・60個となり、中央に近いのは左から3番目と4番目、10個と20個だから、中央値は(10+20)÷2=15で、15個となる次第。

世帯所得中央値はバブル以降さえないが……


それでは早速「国民生活基礎調査」の結果をもとに、世帯所得の中央値の推移を確認する。1985年以降の値が取得可能なので、それをまとめたのが次のグラフ。なお「所得」の概念は「世帯当たりの平均所得金額推移をグラフ化してみる」で詳しく説明しているのでそちらでご確認を。また今件における世帯は総世帯を意味する。つまり、単身世帯・二人以上世帯合わせたもので、専業主婦世帯も共働き世帯も、年金生活をしている世帯も、高齢者世帯(65歳以上のみ、またはそれに18歳未満の未婚の人がいる世帯)も全部含めた結果である。

↑ 世帯所得中央値推移(総世帯、万円)
↑ 世帯所得中央値推移(総世帯、万円)

最高値はバブル時代末期からその直後の1993年と1995年の550万円。それ以降は前世紀末までは横ばいだが、それ以降はほぼ同じような傾斜で落ちていく。先の金融危機ぼっ発となる2007年ぐらいでようやく下落に歯止めがかかり、横ばいに移行した動きとなる。

このグラフの動きの限りでは、すべての世帯を合わせると所得中央値が落ちている。世帯単位ではバブル時代よりは豊かでない、景況感の実態感が無いとの印象も生じてしまう。

ここで思い出してほしいのは、このグラフの対象となる期間において、他に社会構造の変化があったか否か。同じ「国民生活基礎調査」をもとにした別記事【種類別世帯数の推移をグラフ化してみる】で詳しく解説しているが、日本は急速な高齢化の進行と共に核家族化、さらには単身世帯(単独世帯、一人身世帯)の増加が進んでいる。

↑ 全世帯数に占める世帯種類別構成比推移(1968年-2016年)
↑ 全世帯数に占める世帯種類別構成比推移(1968年-2016年)

三世代世帯ならば有業者は祖父・祖母、そしてその子供に当たる父母が該当しうる。当然有業者が多い方が世帯単位の所得は大きい。核家族世帯は三世代世帯よりも所得が少なくなるのは必然で、さらに所得が少ない(就業者は一人しかありえない)単身世帯が増えれば、全体から算出される平均値、中央値が減少するのは当然の話。

またこの十年ばかり、特に団塊世代が定年退職を迎えた以降は、それらの人達が非正規雇用で再就職するケースも増えている。その場合もまた、有業者の数に変わりはないが、所得が減ることになる。周辺環境が大きな変化を見せている以上、所得平均値でも所得中央値でも、上げ下げがそのままお財布事情の上下を意味するとは限らない次第。

実際、世帯構造の変化に伴い、世帯あたりの平均人員だけでなく、平均有業人員も減っている。

↑ 世帯あたり平均人員と平均有業人員(人)
↑ 世帯あたり平均人員と平均有業人員(人)

共働き世帯の増加に伴い、平均人員数より平均有業人員数の減少ぶりは穏やかだが、兼業主婦の稼ぎは概して世帯主である夫よりも少ないため、世帯単位の所得の底上げには貢献するが、有業人員あたりの所得にはむしろマイナスとなる。

所得中央値を人員で割ってどこまで意味があるのか怪しいが、指標の一つとして、世帯所得の中央値を世帯人員と有業人員で割った結果が次のグラフ。

↑ 世帯所得中央値(平均世帯人員、平均有業人員数あたり(万円)
↑ 世帯所得中央値(平均世帯人員、平均有業人員数あたり(万円)

バブル期をピークとしていることに変わりはないが、人員あたりでは今世紀に入ってからはほぼ横ばい。有業人員あたりでは多少落ちてはいるが世帯所得中央値ほどではない。この下げ方は上記で説明の通り「兼業主婦や定年退職後の再雇用者による押し下げ」によるところが大きい。むしろそれらの要素がある上で、この動向で留まっているのは、世帯主の健闘がうかがいしれる。

平均所得と平均可処分所得を世帯人員で割ると


平均世帯人員が抽出できたので、良い機会でもあることから、世帯平均所得を合わせ用いて、世帯人員1人あたりの推移を見ていくことにする。ちなみに可処分所得とは、所得から所得税、住民税、社会保険料及び固定資産税を差し引いたもの。自由に采配できるお金。

↑ 世帯人員1人あたり平均所得金額と平均可処分所得金額(万円)(国民生活基礎調査)
↑ 世帯人員1人あたり平均所得金額と平均可処分所得金額(万円)(国民生活基礎調査)

先の平均世帯人員あたりの世帯所得中央値と似たような動きをしている。ピークはバブル後の1996年。以後、今世紀初頭にかけて下げた後は横ばい。この数年は少しずつだが上昇に転じる気配もあるほど。単純な世帯所得中央値の推移とは随分と異なる印象ではある。



平均値は極端な値で全体像がぶれる可能性はある。他方中央値はどのようなデータでも全体ではなく個体数の真ん中でしかないので、全体の把握や変化の確認、比較には適していない。最初の石の例なら、60個の石を持つ人が600個でも6000個でも中央値は20個でしかない。これが単なる石なら問題は無いかもしれないが、例えば試験の成績だとしたら、高得点を取ってもクラス全体の中央値に変化がないので意味がないと判断されれば、苦労の甲斐が無くなってしまう。

これ以外に最頻値(もっとも多く出てくる値)なる概念もあるが、これは全データの具体的値を知る必要があるのと、データの母数が少ないと使えない、データの仕切り分け次第で結果を操作できてしまうなどの弱点がある。ヒストグラム(分布を柱状のグラフで表したもの)が使えれば良いが、これは単一調査項目ならまだしも、複数項目や経過を確認するのにはデータが多すぎて判断が逆に難しくなる。度数折れ線(ヒストグラムの折れ線グラフ化)でも良いが、比較対象の項目が増えると、やはり情報量が多くなり見難いものとなる。

例えば次のグラフは、比較的世帯構造の変化によるぶれが少ない、児童(18歳未満の未婚の者)がいる世帯に限定した、所得金額の階層別・世帯数相対度数分布。いわゆる度数折れ線グラフだが、10年単位で4回分を抽出しただけでも、かなり見難いものとなってしまっている。

↑ 所得金額階層別・世帯数相対度数分布(児童がいる世帯)
↑ 所得金額階層別・世帯数相対度数分布(児童がいる世帯)

それでも何とか解釈してみると、1985年では低所得世帯が多かったのが、1995年以降は全体的に所得増加にシフトしている。これは世帯主の稼ぎが増えたことに加え、兼業主婦が増加したのも一因。兼業主婦の増加によるところが多々あるものの、1995年以降は子供がいる世帯における所得水準に大きな変化は生じていないことが確認できる。

エンゲル係数関連の記事でも言及しているが、物事を表す指標はその指標を算出する要素そのものや、その要素に影響を及ぼす環境に変化が生じると、比較するのは困難なものとなるどころか意味をなさなくなる。戦前の10円と今の10円を比べるとか、1ドル80円時代の日本のGDPと現在の日本のGDPを、それぞれ当時のドルベースでそのまま比較するようなもの。

数字が表していること自身は事実かもしれないが、そこから導き出されているものまでも事実とは限らない。数字の背景にあるもの、連動するさまざまな環境の変化を推し量り、正しい実情を把握してほしいものである。


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