現状も先行きも下落。人手不足はまだ継続中だが…2017年7月景気ウォッチャー調査は現状低下・先行き低下

2017/08/09 05:00

内閣府は2017年8月8日付で2017年7月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で低下して49.7を計上し、基準値の50.0を割り込む形となった。先行き判断DIは先月比で低下し50.3となったが、基準値の50超えは維持された。結果として、現状低下・先行き低下の傾向となり、基調判断は「持ち直しが続いている。先行きについては、人手不足に対する懸念もある一方、引き続き設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて2001年8月分までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年7月調査(平成29年8月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年7月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス0.3ポイントの49.7。
 →原数値では「変わらない」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少、「良くなっている」「やや良くなっている」が増加。原数値DIは51.0。
 →詳細項目は「サービス関連」が小幅なプラス。下げ幅は「製造業」が最大の1.6ポイント。基準値の50.0を超えている詳細項目は「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは先月比でマイナス0.2ポイントの50.3。
 →原数値では「良くなる」「やや良くなる」「悪くなる」が減少、「変わらない」「やや悪くなる」が増加。原数値DIは50.6。
 →詳細項目では「小売関連」「雇用関連」がプラス。最大の上げ幅は「非製造業」の2.5ポイント。基準値の50.0を超えている項目は詳細区分では「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

昨今では昨年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。昨今ではとりわけ中東方面における政情不安定化によるエネルギー方面のコスト増リスク、欧州方面のテロ事案と合わせ生じる円高による輸出関連のネガティブな影響の体現化、そして朝鮮半島情勢の緊迫化によるリスク回避の動きが心配される。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。

現状、先行き共に小幅な上昇


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年7月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年7月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

最近ではアメリカ合衆国内の原油ストックの増加を受け、さらに中東情勢の緊迫化で原油減産の協定が有名無実になるのではとの懸念もあり、じわりと原油価格は下落の値動きに転じている。少なくとも利用側にとっては幸いな状態へとなりつつある。

今回月の現状判断DIは総計で低下、詳細項目では「サービス関連」以外が下落している。しかし下げ幅は限定的で1.0ポイント前後で済んでいる。企業動向関連が双方ともやや下げ幅が大きめなのが気になるところ。

景気の先行き判断DIは大よその項目で小幅な上昇。下げている詳細項目は2つだけで下げ幅は限定的。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年7月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年7月)

プラスは詳細項目では「小売関連」「雇用関連」だけ。「非製造業」の下げ幅が2.5ポイントなのはやや気になるが、それでも基準値は超えている。むしろ「住宅関連」がここ数か月下げ続けている方が要注意な値動き。

周辺環境の変化にあった動き


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・気温の上昇に伴い、エアコンを中心とした季節商材の販売が伸びている。また、高付加価値商品の販売に注力することで利益も確保されている(家電量販店)。
・大手携帯電話会社の新料金プランの発表によって、金額的にも魅力ある端末が増えて客は買いやすくなっている。店頭においてもプラス提案がしやすくなったため、販売台数が増えた(通信会社)。
・宿泊に関しては、インバウンドは引き続き好調である。中国からの団体客は、個人旅行に変化しており、欧米からの個人客も好調に推移している。ただし、国内の個人旅行は相変わらず元気がない。一方、レストラン売上や宴会売上は、このところ順調である(都市型ホテル)。
・気温の高い日が続いているが、夏物のクリアランスセールに対して、積極的な購買姿勢はみられていない。低単価商品と比較しながらの慎重な購入スタイルは依然として顕著である(百貨店)
・展示場の来場者数が減少している。また商談の客も全体的に減少気味である(住
宅販売会社)。

■先行き
・メディアで取り上げられた商品は即時完売や問い合わせが相次いだりするので、客の消費意欲は落ちておらず、天候や流行など何かのきっかけがあれば景気が上向く気配はある(スーパー)。
・11月にかけて例年以上の予約数があり、すでにスタート枠の70%を確保できている
(ゴルフ場)。
・売上の内容をみると、価格を安くしないと売れないことがわかる。全体の売上高はやや良くなっているが、個人消費が改善しているとは楽観的に見れない(都市型ホテル)。
・とてつもない猛暑である。夏は暑く冬は寒いというのが家電が売れる条件である。金利政策や海外の状況があるが、やはり今夏は暑くエアコンが非常に売れている。前年の倍近く売上が上がっている。ただこれも続かないので今後はやや悪くなる(家電量販店)。

猛暑に伴い喜々こもごもが生じているが、全般的にはポジティブな方向に動いているようだ。業界における新たな動きに乗じて波に乗れるようなところも見られる。他方、住宅関連では利用客が減っているとのことで、指標の減退を再認識させられるコメントもある。

企業回りの景況感では興味深い話が見受けられる。今回月の値動きが微妙なのも理解できる。

■現状
・居住環境に対する設備投資の考え方が以前よりも前向きになっており、学校や特別養護老人ホームに環境改善機器の納入が増えている(電気機械器具製造業)。
・人手不足で売上増加に結び付かない(その他サービス業[警備])

■先行き
・製品単価の値上げや工法によるコストアップ、人件費の高騰などによって、工事の見積額は上昇傾向にある。消費者の所得がそれに追い付くまでは、購入をためらうことになる(建設業)。
・建物建築の関連業者では人手不足の影響で対応できる仕事が少なくなってきている(司法書士)。

リフォーム関連への注目が高まっているとの話はよく見聞きするが、環境改善との観点で需要が伸びているようだ。訴求力向上には環境を良くすることが何よりとの認識が広まっているのだろうか。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合わせた対価を提示しているのか」との疑問が付きまとう。人手不足を認識しているのなら、相応のコストの上乗せは必要不可欠。これまでと同等の条件提示で同様の求人がまかなわれるとの考えが支配的なのだろうか。競争が激化すれば条件の改善が不可欠なのは、市場経済の原則なのだが。

人材不足の話は割合的には減ったものの、まだ少なからぬ数が見受けられる。ただしネガティブな声は減っている。

■現状
・求職者そのものは減ってはいないが、ミスマッチが多い状況が続いている(人材派遣会社)。

■先行き
・年末に向けての受注が増え、求職者も増える傾向にある。東京に関してはオリンピック関連の受注もますます増加し、安定してきている(民間職業紹介機関)。

求職者数が変わらずミスマッチが増える状況は色々と想定できるが、求職者の層が拡大した、求人側が多様な方面に広がっている、マッチングしやすい(汎用性の高い、人気のある)求人はすぐに埋まってしまう、求職者の求める条件のハードルが上がっているなどだろうか。ミスマッチは少なければそれにこしたことは無いのだが、市場がある程度熟成化してくると、一定率で生じることは仕方がない。

なお南関東における「その他の特徴的コメント」を挙げると次の通りとなる。

■現状
・100万本クラスの超大型ソフトが2タイトル、20万本クラスも複数タイトルあり、ここ数年で一番の盛り上がりが期待できる(その他小売[ゲーム])。
・競合店の値引きが落ち着いても、インターネット通販の影響があるため、実店舗は厳しい状況が続いている(家電量販店)。

■先良き
・東京オリンピック1,000日前に近づき、イベント的なにぎやかしも多くなり、盛り上げる雰囲気が出てくる(通信会社)。
・客単価の動きをみると、低価格商品に販売が変化している傾向が若干ある(コンビニ)

色々と状況に即した、あるいは他方面の実情と連動した話が出ており、非常に興味深い。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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