「ユーリ!!! on ICE」で小粒な特需…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2017年1月-3月)

2017/05/23 05:00

ゲームそのものの楽しさの提供だけでなく、周辺の人達とのコミュニケーションのための媒介・ツールとしての役割も大きい家庭用ゲーム機とその対応ソフトは、スマートフォンの普及浸透とそれ用のゲームアプリの大々的な展開で、大きな転換期の中にある。ただでさえインターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視されるゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる中で、二重の危機誘発要因の到来に違いない。「アプリ系ゲームの紙媒体専門誌を出せばよい」との意見もあるが、あまり上手くいった事例を聞かないのは、情報の更新伝達スピードがマッチしないのが主な要因だろう。まさに四方の行く手をさえぎられた状態のゲームやエンタメ系の専門誌の実情に関して、社団法人日本雑誌協会が2017年5月16日付で発表した、主要定期発刊誌の販売数を「各社の許諾のもと」に「印刷証明付き部数」として示した印刷部数の最新版となる、2017年1月から3月分の値を取得精査し、現状などを把握していくことにする。

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Vジャンはトップに変わりなしだが…部数現状


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語の内容に関する説明、読む際の諸般注意事項、さらには類似記事のバックナンバー一覧に関しては、一連の記事のまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明済み。必要な場合はそちらで確認のこと。また記事のカテゴリ名をクリックしてたどれる同一カテゴリの記事一覧からも、印刷証明付き部数関連の記事の過去のものを確認できるので、その手段も併用してほしい。

まずは最新値にあたる2017年の1-3月期分と、そしてその直前四半期にあたる2016年10-12月期における印刷実績をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 2016年の10-12月期と2017年1-3月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2016年の10-12月期と2017年1-3月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

少なからぬ雑誌で青よりも赤の方が短め、つまり部数が減退している様子が分かる。他方、差異はさほどないように見えるが、いくつかの雑誌で赤の方が長い、つまり部数が伸びている雑誌もある。もっとも、最大部数を示しているのは「Vジャンプ」で、このポジションに変化は無い。

今期では追加・非公開化の雑誌は無し。数四半期前に部数公開から脱落した「週刊アスキー」と「電撃PlayStation」の復活の兆しも無し。「週刊アスキー」は現在ではデジタル媒体上での展開となっているが、「電撃PlayStation」は現在もなお紙媒体として新刊が定期的に発行されており、休刊や電子化による非公開化では無い。単純に編集部、あるいは企業レベルでの都合による非公開化。

「電撃PlayStation」と似たような現象は以前「ニュータイプ」でも起きており、それも合わせ発売元であるKADOKAWAの方針の可能性は否定できない。株式公開企業や大型企業による法的な公開義務はないものの、すでに公開していた数字を非公開化する施策は、情報の非開示化との姿勢としては残念と評せざるを得ない。

ともあれ現在印刷証明付き部数を掌握しているゲーム・エンタメ誌は、現時点で7誌にまで減少している。すでに公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」は皆無(ジャンル区分そのものは今なお存在している)、「ゲーム・アニメ情報誌」でも6誌にまで減少しているのが現状。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

とはいえ、類似の主旨を持つカテゴリが存在しそうにないのも悩みの種。類似・同一ジャンルの雑誌としては例えば「Nintendo DREAM」「娘TYPE」が挙げられるが、印刷証明部数は非公開。残念ではある。

減退を見せる「Vジャンプ」、特需で伸びる3誌…前四半期との相違確認


次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2017年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2017年1-3月期、前期比)

マイナス方向に動いた雑誌はすべて誤差領域の5%を超えており、「メガミマガジン」「声優アニメディア」「PASH!」「Vジャンプ」の4誌が該当。特に「Vジャンプ」は上記の通り今分類では最大の部数を計上する雑誌で、その雑誌において2割に手が届きそうなほどの減退は少々ショッキングではある。同誌は付録や特集記事で大きな上下を見せることでも知られているが、昨今ではその上下の動きでも大よそボックス圏内に留まっていたが、今回の減少でそのボックス圏を底抜けしてしまった感はある。

↑ Vジャンプ印刷実績(部)
↑ Vジャンプ印刷実績(部)

「ボックス圏」の解釈の仕方にもよるが、今回の部数は2015年第1四半期の21.3万部すら下回るものであるのと共に、3四半期連続しての下げの結果であることから、下方トレンドに突入した可能性は高い。同誌は他誌以上に付録、特に人気ゲームと連動企画的なアイテムによって部数が変動する傾向が強いのだが、3四半期連続しての減少と、過去最少部数の更新は「たまたま需要がマッチせず、部数に結び付かない」では説明がし難い。

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式だったはず。その方程式にゆがみが生じたのか、あるいは代入できる要素が空振り状態なのか。

他方「PASH!」は前四半期でプラス112.7%というダイナミックなまでの上昇ぶりを見せているため、その反動によるもの以外の何物でもない。

一方プラス方向に動いたのは誤差範囲が「アニメディア」、確実な増加が「アニメージュ」「声優グランプリ」。該当期間の発売誌動向を見ると、複数誌で「ユーリ!!! on ICE」 が深く関係していることがわかる。最大の上げ幅を示した「アニメージュ」では、2017年2月号で「ユーリ!!! on ICE」 のクリアファイル2枚セットが付録に、4月号ではステーショナリーセットとB2サイズの両面ポスターが付録として収められている。それぞれの評価も高く、ファンが喜んで取得したのも納得がいく。

伸び率は誤差範囲だが上昇を見せた「アニメディア」では、2月号で「ユーリ!!! on ICE」と「劇場版 黒執事」のクリアファイル、4月号ではロングピンナップ。それぞれ特集も掲載されており、こちらもファン必見の内容。前四半期では「おそ松さん」と「ユーリ!!! on ICE」が一部雑誌の部数けん引役を果たしたが、今四半期では「ユーリ!!! on ICE」の独壇場となった形。

一方で1割以上の伸びを示したもう1誌「声優グランプリ」だが、こちらは「ユーリ!!! on ICE」ではなく、2回にわたって展開された別冊付録「声優名鑑2017」が大いに人気を博した模様。ジャンルファンにとって非常に有益な辞典となりうる名鑑が付録につくとあらば、この号だけでも取得したいと考える人は多いだろう。

厳しさ見せる前年同期比


続いて前年同期比における動向を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べればロングスパンの値動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2017年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2017年1-3月期、前年同期比)

前四半期比ではプラスを計上した雑誌も複数誌あったが、前年同期比ではすべてが誤差を超えた下げっぷり。これは多分に「ユーリ!!! on ICE」や「おそ松さん」特需で跳ねた反動によるもの。ただし「Vジャンプ」は別格で、上記グラフの通り下方トレンドへの値動きの中の結果によるものと考えられる。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、関連業界では「三大アニメ誌」とも呼ばれている、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向。「ニュータイプ」の部数が非公開となったため、今回も残り「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を続ける。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。その後順位はしばしば入れ替わり、もみあいの形を維持している。最近では1年前の2016年第1四半期で両誌とも「おそ松さん」特需で跳ねた際に立ち位置が逆転し、その状態が現在まで続いている。

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2017年1-3月期まで)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2017年1-3月期まで)

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2017年1-3月期まで)(ニュータイプ除く)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2017年1-3月期まで)(ニュータイプ除く)

直近値では「アニメージュ」5万2117部、「アニメディア」4万1100部。前四半期と比べ、両誌の差異は2倍近くに広がった計算となる。

非公開化直前の「ニュータイプ」は「アニメージュ」「アニメディア」とさほど変わらない部数だったことから、昨今のつばぜり合いにおいてどのようなポジションを示しているのか、大いに気になるところ。しかし非公開である以上、その願いはかなうことはない。



【CESA、2015年分の国内外家庭用ゲーム産業状況発表】にもある通り、日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。冒頭の解説の通り、少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も低迷は続くことだろう。

動向が掌握可能な期間の限りでは「進撃の巨人」や「おそ松さん」、そして今四半期では「ユーリ!!! on ICE」が一部雑誌に特需をもたらしている。元々部数が6ケタ台に届いていないのも一因だが、アニメ業界のトレンドに乗る形で適切な供給を行えば、大きな勢いを得られることが改めて明らかになった。

世界的に話題となり社会現象すら巻き起こした、スマートフォン向けアプリの「ポケモンGO」だが、本来は今ジャンルの各誌が対象となる。しかしスマホが対象であることから、各誌の部数動向に影響を与えたとの話は耳にしない。「ポケモンGO」のような広範囲の属性に浸透するタイプではないものの、大いに人気を博し、他分野にも影響を示すタイトルは複数存在している。例えば「Vジャンプ」のカードのように、それらアプリとの連動企画が可能なら、定期的な部数底上げが期待できるのだが。


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