現状も先行きも上昇。人手不足はまだ継続中だが…2017年5月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2017/06/08 15:00

内閣府は2017年6月8日付で2017年5月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇して48.6を計上したが、基準値の50.0を下回る状態は維持された。先行き判断DIは先月比で上昇し49.6となったが、こちらも基準値の50を下回った状態が継続している。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「持ち直しが続いている。先行きについては、人手不足に対する懸念もある一方、引き続き受注や設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて2001年8月分までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年5月調査(平成29年6月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年5月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス0.5ポイントの48.6。
 →原数値では「やや良くなっている」「悪くなっている」が減少、「良くなっている」「変わらない」「やや悪くなっている」が増加。原数値DIは50.1。
 →詳細項目は「小売り関連」「飲食関連」「雇用関連」が小幅なマイナス。上げ幅は「非製造業」が最大の3.1ポイント。基準値の50.0を超えた詳細項目は「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは先月比でプラス0.8ポイントの49.6。
 →原数値では「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が減少、「良くなる」「やや良くなる」が増加。原数値DIは51.5。
 →詳細項目では「サービス関連」のみがマイナス。最大の上げ幅は「飲食関連」の3.6ポイント。基準値の50.0を超えた項目は詳細区分では「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

大きな環境変化を与える近しい出来事としては、2016年6月分の調査の直前となる6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したにより、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

昨今ではその衝撃・影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。昨今ではとりわけ中東方面における政情不安定化によるエネルギー方面のコスト増リスク、さらには欧州方面のテロ事案と合わせ生じる円高による輸出関連のネガティブな影響の体現化が心配される。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。

現状、先行き共に小幅な上昇


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年5月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年5月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。昨今では上記の通り、産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形となっている。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示しており、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念される。

もっとも最近ではアメリカ合衆国内の原油ストックの増加を受け、じわりと原油価格は下落の値動きに転じており、利用側にとっては幸いな状態へとなりつつある。

今回月の現状判断DIは総計で上昇、詳細項目では「小売関連」「飲食関連」「雇用関連」が下落している。しかし下げ幅は限定的で1.0ポイント未満で済んでいる。他方上昇している詳細項目はそれ以外で、「製造業」「非製造業」と企業動向が共に上昇しているのが頼もしさを覚えさせる。金額的に大きな影響を及ぼす「住宅関連」がやや大きめのの上げ幅なのも注目に値する。

景気の先行き判断DIは大よその項目で小幅な上昇。下げている詳細項目は1つだけで下げ幅は限定的。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年5月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年5月)

マイナスは詳細項目では「サービス関連」のみ。下げ幅も1.0ポイント未満と誤差の領域。プラスはそれ以外で、最大の上げ幅は「飲食関連」の3.6ポイント。「雇用関連」は基準値の50.0を超えさらに上向きの気配を見せているのが頼もしい。

業務周りが好調、人材不足は解消に向かうか


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・アジア圏からの観光客が好調である。特にゴルフ目的の観光客が好調であり、大統領選挙を終えたばかりの韓国人観光客は活況を呈している。国内企業の大型報奨旅行も好調に推移している(観光型ホテル)。
・今期に入り売上は前年を維持している。季節商材の白物家電の動きが良い(家電量販店)。
・来客数及び買上点数は前年並みを維持しているものの、単価が下がった分、売上は微減の状態が続いている。価格最優先の志向が根付いている(スーパー)。
・今年のゴールデンウィークは曜日並びがよく、5月中旬までは前年を上回る集客を続けていた。しかし、後半は来客数の伸びが失速し、昼の客単価が例年の90%しかない状態で苦戦を強いられた(高級レストラン)。

■先行き
・東京オリンピックに向けて、インバウンド客も増えており、来客数はまだ伸びそうである(一般レストラン)。
・郊外店は少し苦戦しているが、都心店のインバウンド売上は、まだまだ力強く推移している。化粧品は、郊外店にまで波及効果が出始めている(百貨店)。
・ボーナスシーズンを前に主力車種の変更も発表されるため、店頭ににぎわいが戻り、夏休みの予定に合わせた新車購入の検討が進むことを期待したい(乗用車販売店)。
・北朝鮮情勢の不透明感、欧州での相次ぐテロ事件で、海外旅行の需要の低迷が懸念される(旅行代理店)。

一時期概況でも指摘されていたインバウンドに絡んだ動向だが、最近ではほとんど聞かれなくなったものの、今回月ではまた再び複数で言及されるようになった。これが単発的なものか、継続する動きを見せるのかは、現時点では不透明ではある。

他方、欧州で相次ぐテロ事件に代表される国際情勢の不安定化に伴い、海外旅行の需要が減退するのではとの不安も見受けられる。こればかりは日本がどうこうできる問題では無いので、運次第なのだが。

企業回りの景況感では高安まちまちといったところ。業態により景気の良いところと悪いところがあるように見受けられる。またデフレ脱却の中での対応、姿勢が功を奏したか否かもありそうだ。

■現状
・ここ数か月は前年同月を上回る傾向である。一般小売用はどちらかといえば苦戦しているものの、業務用や輸出用商材は好調に推移している(食料品製造業)。
・受注量は順調に推移しており、施工計画をしっかり立てないと、工期に間に合わないという状況である(建設業)。

■先行き
・メキシコ自動車業界向け等、保留となっていた案件が受注できる見込みである。北米自動車業界向けの設備投資も、動きが活発である(一般機械器具製造業)。
・雇用の安定が進むなかで、個人所得の伸びによる消費や、前向きな設備投資が徐々に盛り上がり、景気押し上げ効果の期待が持てる(経営コンサルタント)

前月と比べると人材不足の話は割合的には減ったものの、まだ少なからぬ数が見受けられる。ただし前月と比べるとネガティブな声は減っている感が強い。

■現状
・企業からの訪問は増えており、求人数も伸びている(学校[大学])。

■先行き
・中途採用ではバブル期と同じ有効求人倍率なので、求職者にとって有利な市場となっているが、景気と採用者数は比例するため、今後しばらくはこの状況が続く(求人情報誌製作会社)。

他方全国の雇用関連のコメント詳細を確認すると、ミスマッチの多さを嘆いたり、技術を持った人材の不足感が大きいとの話が見受けられる。失われた20年、あるいは30年において人材の層が薄くなっている年齢層があり、それが足かせとなっている様子がうかがえる。景気の足を引っ張る可能性も言及されているが、条件の改善を図らずに人材を求める動きも多々見受けられるため(条件の良い方に流れてしまう云々など)、まずは求人の条件を(さらに)上げてみてからではないかとの感もあるのだが。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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