現状・先行き共に下落。人手不足が懸念材料…2017年3月景気ウォッチャー調査は現状低下・先行き低下

2017/04/10 16:00

内閣府は2017年4月10日付で2017年3月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で下落して47.4を計上し、基準値の50.0を下回る状態となった。先行き判断DIは先月比で下落し48.1となり、こちらも基準値の50を下回ることに。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は「ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる。先行きについては、引き続き受注等への期待がみられる一方、人手不足やコストの上昇に対する懸念もある」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて2001年8月分までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年3月調査(平成29年4月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きは上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年3月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス1.2ポイントの47.4。
 →原数値では「良くなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少、「やや良くなっている」「変わらない」が増加。原数値DIは50.6。
 →詳細項目は「サービス関連」がプラマイゼロでそれ以外は3ポイント台までの小幅な低下。基準値の50.0を超えた詳細項目は「雇用関連」。

・先行き判断DIは先月比でマイナス2.5ポイントの49.0。
 →原数値では「良くなる」「やや良くなる」が減少、「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加。原数値DIは49.0。
 →詳細項目では全項目でマイナス。最大下げ幅は「飲食関連」のマイナス5.0%。基準値の50.0を超えた項目は詳細区分では「サービス関連」「雇用関連」。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

近しい環境変化を与える出来事としては、2016年6月分の調査の直前となる6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したにより、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

昨今ではその衝撃・影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。例えばアメリカ合衆国の大統領選挙の結果を受け、同国の経済政策がいかなる変化を見せるのかに関して波乱を予想させる情報が相次ぎ、さらに不透明な部分は大きく、大いに気になるところ。また産油国の生産調整合意に伴い、原油価格の上昇が生じており、それを起因とする燃料コストの上昇リスクも懸念材料ではある。

そして今回月では3月25日から31日にかけて調査が行われたが、同じタイミングで米国の政局に大きな波乱が生じ(オバマケア代替法案撤退)、それをきっかけとした円高が進んで株価の下落が生じており、回答者のマインドに大きな足かせとなったことは否めない。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の下げ原因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。ただし今後の状況は海外要因を中心に、不透明な部分が少なくないのは否めない。

現状、先行き共に小幅な下落


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2017年3月)
↑ 景気の現状判断DI(-2017年3月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。昨今では上記の通り、産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形となっている。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示しており、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念される。

今回月の現状判断DIは総計で下落、詳細項目も大よそ下落の動きを見せている。先行指標の役割も担う「雇用関連」の下げ幅が小幅なのが幸いではある。他方、金額的に大きな影響を及ぼす「住宅関連」の下げ方が大きいのは気になるところ。

景気の先行き判断DIは現状と同様、大よその項目で小幅な下落。雇用関連の値の下落幅がやや大きめなのが不安要因。

↑ 景気の先行き判断DI(-2017年3月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2017年3月)

マイナスは詳細項目でも全項目。一番大きな下げ幅は「飲食関連」のマイナス5.0、次いで「雇用関連」のマイナス4.0。「雇用関連」は基準値の50.0をまだ超えているのは幸いだが、概況コメントでも人材不足が懸念材料の一つに挙げられており、注視すべき値動きではある。

値上げとコスト上昇と人材不足と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・今月は近隣地区のゴルフ場20か所で来場者数増加が目立っている(ゴルフ場)。
・春休みに入り、比較的学生など若い客が多くなっている。主要観光施設の駐車場も午後には満車になるところが多い(観光名所)。
・分譲マンション購入時の商談に要する時間が長くなってきており、客の歩留まり率も低下している(住宅販売会社)。
・例年であれば新生活や移動需要でにぎわう時期であるが、少子化の影響や類似商材を扱う競合店が増えたことで苦戦が続いている。前年と比べ来客数、販売量がここ数か月で最も落ち込んでいる(スーパー)。

■先行き
・親会社が4月から新しい列車を走らせる。また、近隣県にある名刹の国宝が3月に新しくなり、沿線に新しい観光素材ができる。今からそれを目的に旅行を計画する個人客を中心とした流れが見えるので、良くなるとみている(旅行代理店)。
・4月から3か月続く大型観光キャンペーンの重点販売地域に当県が入っている。また、新幹線の20周年記念などイベントが目白押しである。当ホテルにも好影響が表れることを期待している(都市型ホテル)。
・電気料金の値上げや為替変動等による輸入原材料の値上げが予測される。可処分所得の上昇は望めないため、余分なものは買わない傾向は、しばらく続く(スーパー)。
・トイレットペーパー等の紙類、サラダ油等の値上げが予定されている。今後、更に節約志向が高まりそうである(スーパー)。

今回月では年度替わり直前の調査であるため、年度更新に伴う値上げに関わる言及が多い。とはいえこれは毎年の事で、そのたびに騒がれるのは定例行事のようなもの(値下げがあっても騒がれないのは不思議な話)。また少子化云々の話が見受けられるが、これも中長期的な流れの問題であり、数か月の間に急激な動きが生じたわけではないことから、景気動向とはやや軸を異なるものとみて良い。

他方、人材に関わる面では不安要素が多い。現状と先行きそれぞれの全国の概要を抽出すると次の通り。

■現状
・来年度の新卒採用について、周辺の大、中規模企業では積極的に募集を行っている。年度末の3月は多忙なため、運送、サービス業は求人をしても、応募が極端に少なく、人手不足が続いている(求人情報誌製作会社)。
・3月に入り、独自の企業説明会を実施する企業が昨年より増えている。今年度、採用予定数に満たなかった企業は、焦りにも似た気持ちで説明会を実施しているようだ。特に中小零細企業でこの傾向が見られる(民間職業紹介機関)。

■先行き
・自動車の輸出台数は増加が見込まれるため、生産量は増加し、それに伴って雇用者数も増加する(アウトソーシング企業)。
・依然として、求職者が集まらない状況が続いており、企業へのマッチングに苦労している(人材派遣会社)。

景気の良い話、悪い話が混在しているが、いずれも企業側の人手不足、売り手市場状態であるのが分かる。人材を確保するためのコストアップは必要不可欠となり、それが中小企業にとっては重い負担となっている言及が見受けられる。とはいえコスト上昇を避けながら人材を確保する考えはデフレ感覚下のものであり、現状はすでにそのような環境では無い事を認識する必要があるのだが。

また「雇用関連」の指数の悪化は企業にとって確保すべき人手が足りない状況を意味しており、就職する雇用者側としては悪くない話ではある。

ネット界隈の受けはさほど良くなかった「プレミアムフライデー」だが、今回月は年度末とも重なったことから、実体化した影響はさほどなく、文言が確認できたコメントは次の2件のみ。「宿泊、レストランは、個人需要、法人宴会需要共に回復傾向であり、前年並みまで戻している。ただし、プレミアムフライデーに関しては、特に反応はみられていない(都市型ホテル)」「先月からスタートしたプレミアムフライデーで、非常に客の動きが良い。来客数、購入単価共に前年を大きく上回っている。土日の実績には影響が出ていないので、効果が期待できる(家電量販店)」。次回分の4月はゴールデンウィークの先駆け的な日取りのため、少なくとも今回月よりは明らかな動きが見られるだろう。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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