4マスは雑誌が特に軟調で両社とも1割以上の下げ、ネットは両社とも順調(電通・博報堂売上:2017年2月分)

2017/03/10 05:00

博報堂DYホールディングスは2017年3月9日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2017年2月分の売上高速報を公開した。一方、電通も2017年3月7日付で、同じく同社2017年2月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2017年2月次の売上データが一般公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去の公開値などを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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4マスはテレビが両社ともキリギリプラス、雑誌は共にマイナス


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらで確認のこと。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2017年2月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2017年2月分種目別売上高前年同月比

4大従来型メディアと当サイトでは命名している(かつては4大既存メディアと表記)昔ながらの主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、今回月は紙媒体のうち雑誌は両社ともにマイナス、新聞は電通がプラスで博報堂はマイナス。ラテと呼ばれる電波媒体はテレビが両社ともプラスだが、ラジオは電通がプラスで博報堂がマイナス。電通と比べると博報堂の調子が良くないようだ。また紙媒体の不調ぶりは相変わらずで、電通の新聞こそプラスを計上しているが、それ以外はすべて1割超の下げ幅。

電通の紙媒体はここしばらくの間軟調さが続いているが、今回月は新聞がプラスを示し、どうにか連続したマイナスから脱した感はある。ただし後述する2年前同月比試算ではマイナスのままで、今回のプラスは前年の反動以上のものでは無いことが確認できる。インターネットなどにいくぶんのコンテンツの移行がなされているとはいえ、紙媒体離れが確実に進んでいるようだ。

インターネットは電通・博報堂共にプラスで、両社とも1割を超える上昇ぶり。両社とも前年同月における値はプラスで、特に博報堂では前年同月の前年同月比はプラス40.9%であり、反動どころか大きな足かせすら振り払い、さらに大きく上昇した実態がうかがえる(2年前同月比を試算するとプラス64.1%)。この傾向は数か月継続した動きで、両社の同分野における成長ぶりがうかがえる。

従来型広告はOOHメディアで電通、クリエーティブで博報堂、その他で博報堂がプラス以外はマイナス。久々に全般的な軟調感が見受けられる。

電通に限るが2年前比を試算すると次の通り。

↑ 参考:電通2017年2月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2017年2月度単体売上(前々年同月比)

4マスはラテがかろうじてプラスだが紙媒体はマイナス。特に雑誌の下げ幅が3割強と著しい。2年間で3割を超える広告費の減退は並みのダメージではあるまい。他方インタラクティブメディアの伸びが堅調であるのも確認できる。また「その他」が大きく下げているのも目に留まる。

各年2月における電通の売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月となる2月を基準にした毎年2月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を有し、売り上げに大きく影響を与える事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。あくまでも電通だけの話だが、大いに参考になる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年2月、億円)(-2017年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年2月、億円)(-2017年)

大よそではあるが景況感を反映した値動きを示している。ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。ただし2月動向に限ると、2014年を天井とし、それ以降は漸減の動きに転じてしまっている。今回大きな下げを計上した「その他」の不調が小さからぬ要因で、他月では無かった変化であるだけに、気になる動きではある。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱い領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している(もちろん日本には両社以外にも多数の代理店が存在する)。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記していることもあり、その値が両社の売上と誤解される場合がある。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2017年2月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2017年2月における部門別売上高(億円)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を計上しているものの、売上金額=市場規模としては他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マス以外の従来型広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。電通、博報堂共に、各社の全売り上げの5割近くもの額面を示している。

一方電通と博報堂との間では、全項目で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、ラジオのようにあまり変わらない部門もあれば、テレビのように大きな差を示す部門もある。

「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」の仕切りそのものの問題も多分にある。メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となると考えられ、年々「その他」に該当する項目が増えてしまい、金額も積み増しされてしまう。

この「その他」の区分内容の膨張問題は、経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。他項目も含めた再統合では調査データの連続性が失われてしまうため、「その他」の内部における仕切り分けの追加を求めたいところではある。

電通の「その他」は具体的内容として「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツなどの業務」とあり、2分割や3分割程度の細分化は難しいのも事実。さらに細分化されると、電通と博報堂両社における共通性が無くなる可能性もあり、(両社それぞれにおいては何の問題もないのだが)比較する点では問題を抱えることになる。

また電通限定の話だが、「その他」の膨張の原因の一つとして考えられるのが、デジタルコンテンツ系の広告事業の拡大。今件記事は公開されている電通単体の売上を元にしているが、その電通に限れば今回月のインタラクティブメディア部門(「インターネット、モバイルに関する広告枠の取引業務」)の売り上げが全体に占める割合は7.1%。しかし電通の国内グループ全体の値を参照すると、インタラクティブメディアを多分に含めた「デジタル領域構成比」は19.7%(直近四半期決算概況より)となっている。「その他」には多分にデジタル的なものが含まれている可能性は多分にある。

さらにその「その他」が2月分に限ればここ数年で大きな減退を示している。中身の仕切り分けが不明であることから詳細は分からないが、2年で4割強の減少は何か小さからぬ変化が生じたものと考えられる。



今回分の2017年2月分は電通の「その他」の不調のような実態の見えない流れ、4マス以外の従来型広告市場の軟調などのイレギュラー的な動きもあったが、4マスやネットに限ればほぼ順当な動きといえる。新聞がプラスに跳ねたのがやや目立った動きか。

↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)
↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)

最近では額面の大きなテレビがプラス圏を大よそ維持しているのは喜ばしい限り。他方、新聞や雑誌の軟調さは相変わらず。雑誌のプラス圏への顔見せは2015年4月と8月の二か月、新聞に至っては2016年8月の一か月に限られていたが、今回月ようやく2回目として2017年2月が加わった。

電通や博報堂に限らず広告業界全体で、小さからぬ、そして以前から指摘されていた、媒体に係わるムーブメントが起きている、加速化しているのかもしれない。


■関連記事:
【30年近くに渡る広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【30年近くに渡る広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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