支持政党別で大きく異なる「大統領権限の強化」への是非

2017/03/22 10:23

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先行記事【「自国内の民主主義体制を維持していくのには何が必要か」米国の人達に聞いてみました】において、アメリカ合衆国の民間調査会社PewResearchCenterの調査結果【Large Majorities See Checks and Balances, Right to Protest as Essential for Democracy】を基に、同国の民主主義体制を強固なままで維持していくため、どのような施策の維持が必要かに関する意識の確認を行った。今回はそれに絡み、同国の事実上のトップの立場にある大統領の権限について、同国民がどのような認識を抱いているかを見ていくことにする。


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今調査の調査要綱は先行記事「『自国内の民主主義体制を維持していくのには何が必要か』米国の人達に聞いてみました」を参照のこと。その記事にもある通り、民主主義体制を維持するのに必要だと思われる政策への支持・重要性の認識は、支持政党≒政治社会への考え方によって少なからぬ違いが生じている。

↑ 自国内で強固な民主主義体制を維持していくのには何が必要か(2017年2月、アメリカ合衆国)(「大変重要」の回答率、支持政党別)(再録)
↑ 自国内で強固な民主主義体制を維持していくのには何が必要か(2017年2月、アメリカ合衆国)(「大変重要」の回答率、支持政党別)(再録)

それではアメリカ合衆国のトップの立場にある大統領の権限に関し、いかなる思いを抱いているのかが今回精査する内容。

昨今のアメリカ合衆国の施策に対し議会や司法などの抵抗が強まっていると相次ぎ報じられているが、これは三権分立的な仕組みである大統領と議会と司法がそれぞれ独立し、相互監視をしながら国を運営しているからに他ならない。特定部局の独善による暴走を防ぐ仕組みとしては好ましいものの、一方で物事を推し進める際には邪魔な仕組みであると認識されることもある。

そこで自国内の問題を速やかに解決するため、現状以上に大統領の権限を強くし、議会や司法に束縛されにくい仕組みを構築するべきだとの意見が生じてくる。その意見には反対する、問題があると思う人の割合を示したのが次のグラフ。

↑ 自国内の問題を解決する際に、現状以上に大統領の権限を強くし、議会や司法の力を弱めるのは問題だ(2017年2月、アメリカ合衆国、もう一つの選択肢として「自国内の問題をよりよく解決するためには、大統領の権限を強化し議会や司法を気にしないようになれば良い」)
↑ 自国内の問題を解決する際に、現状以上に大統領の権限を強くし、議会や司法の力を弱めるのは問題だ(2017年2月、アメリカ合衆国、もう一つの選択肢として「自国内の問題をよりよく解決するためには、大統領の権限を強化し議会や司法を気にしないようになれば良い」)

無回答の人も少数存在する可能性があるが、大よそ100%からこのグラフの値を引いた人が「自国内のあれこれを素早く、よりよく解決するためには、大統領の権限を強化して、議会や司法に足を引っ張られないようにすればよい」と考えていることになる。直近で全体では77%が大統領権限の強化には反対。ところが共和党支持者(現大統領のトランプ氏所属、大よそ保守的思想)は65%に留まり、大統領権限の強化を望む人が少なからずいることが分かる。他方、民主党支持者(前大統領のオバマ氏所属、大よそリベラル的思想)では87%に達し、より多くの人が権限強化には反対していることが分かる。

単にリベラル的発想では三権分立的な体制を強く望み、保守的思想では大統領の権限強化が望ましいと考えているのか。それとも現大統領の所属政党から自らの思想に近いか遠いかを判断し、大統領の権限の強化への是非を考えているのか。その答えは前回の調査結果、2016年8月分を見れば明らかになる。

2016年8月当時はまだオバマ氏が大統領として施策を執り行っており、トランプ氏は共和党の候補ではあったが、当時民主党候補者のクリントン氏と比べて劣勢が伝えられていた。その時点で支持政党別の回答は、民主党支持者と共和党支持者で直近の値とほぼ逆転する結果が出ている。つまり民主党支持者は「大統領権限強化反対」とする人は少なめ、共和党支持者は多め。

要は、回答時点で回答者の支持する政党が大統領に就任していれば「大統領の権限を強化すべし」とする人が増え、支持しない政党の大統領ならば減る。いずれのパターンでも権限反対者が過半数を占めているのは幸いだが、多分に現金な実情が見えてくる次第ではある。


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