現状も先行きも水準値超え、先行きは燃料コストへの懸念あり…2016年12月景気ウォッチャー調査は現状横ばい・先行き下落

2017/01/12 15:00

内閣府は2017年1月12日付で2016年12月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で横ばいとなる51.4を計上し、水準値の50.0を上回る状態となった。先行き判断DIは先月比で下落して50.9となったが、こちらも水準値の50を上回る形は維持した。結果として、現状横ばい・先行き下落の傾向となり、基調判断は「着実に持ち直している。先行きについては、引き続き設備投資や求人増加の継続等への期待がある一方、燃油価格などコストの上昇等への懸念がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて2001年8月分までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成28年12月調査(平成29年1月12日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は横ばい、先行きは下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2016年12月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラスマイナスゼロポイントの51.4。
 →原数値では「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。「やや良くなっている」「良くなっている」が増加。
 →詳細項目は家計動向関連においては「飲食関連」が増加し、「小売関係」「住宅関連」が減少。企業動向関連、雇用関連はすべてプラス。水準値の50.0を超えた詳細項目は「小売関連」「住宅関連」以外。

・先行き判断DIは先月比でマイナス0.4ポイントの50.9。
 →原数値では「良くなる」「変わらない」「悪くなる」が増加、「やや良くなる」「やや悪くなる」が減少。
 →「住宅関連」と「雇用関連」のみ増加で、それ以外は減少。下げ幅は「製造業」の1.1ポイントが最大。水準値の50.0を超えた項目は詳細区分では「サービス関連」と企業動向関連全部、雇用関連。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。

近しい環境変化を与える出来事としては、2016年6月分の調査の直前となる6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したにより、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

昨今ではその衝撃・影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は大きい。例えばアメリカ合衆国の大統領選挙の結果を受け、今後同国の経済政策がいかなる変化を見せるのかに関して波乱を予想させる情報が相次ぎ、さらに不透明な部分は大きく、大いに気になるところではある。また後述するが産油国の生産調整合意に伴い、原油価格の上昇が生じており、それを起因とする燃料コストの上昇リスクも懸念材料ではある。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の下げ原因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復したかのようには見える。ただし今後の状況は不透明な部分が多いのは否めない。

現状、先行き共に小幅な値動き


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。

↑ 景気の現状判断DI(-2016年12月)
↑ 景気の現状判断DI(-2016年12月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。昨今では上記の通り、産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形となっている。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示しており、輸送分野をはじめと各方面への影響が懸念される。

今回月の現状判断DIは総計で横ばい、詳細項目も上下感はあるがその幅は限定的。先行指標の役割も担う雇用関連が上昇しているのは幸いだが、全体的には天井感を覚えさせる。

景気の先行き判断DIは現状と比べて勢いに欠け、マイナスが目立つ形となっている。とはいえ現状同様に値動きの幅は限定的。

↑ 景気の先行き判断DI(-2016年12月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2016年12月)

プラスは詳細項目では「住宅関連」、そして雇用関連のみだが、上げ幅は最大で1.0ポイント。下げた詳細項目でも最大下げ幅は1.1ポイントに留まり、小幅な値動き。やはりこのあたりが現状の景況感では上限、天井なのだろうか。

株価の恩恵と原油価格や新・米大統領への不安と


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・株価が上昇し、富裕層の高額品購買が増えてきている。特に、特選ブランドの売上が軒並み上昇している。中間層は吟味してではあるが、気に入ったものは多少高額でも購買する傾向にある(百貨店)。
・繁忙月ということもあり前年以上の売上になっている。企業のボーナスも多かったことも影響している(一般レストラン)。
・来客数には動きがみられず、回復傾向が感じられない(一般小売店[事務用品])。
・お歳暮時期に入り普通ならば売上は増加するところだが、来店客数も減少し単価も低いため、増収には至らなかった。相変わらず低調な状態は続いている(一般小売店[茶])。

■先行き
・株高がまだまだ続きそうなムードがあるため、投資意欲がこれから上向いてくることで住宅関連の消費にもつながってくることを期待している。今後については、景気が良くなるとみている(住宅販売会社)。
・米国の大統領選によって次期大統領が決まってから、株高、円安の傾向が続いている。この傾向がしばらく続けば、富裕層を中心とした高額品の購買意欲が高まると考えられる(百貨店)。
・1月に就任する米国の次期大統領の言動が気にかかる。地方においては、円安や原油高の影響により輸入製造品のコストが上がり、価格への転嫁も見込まれる。また、前月からのガソリン、灯油価格の高騰や野菜の価格高騰もあるものの、それらの要因が消費に影響するまでには時間を要するため、しばらくは現在の状況が続くとみている(スーパー)。
・収入が横ばい又は下がっているなど、家計に厳しい状況の中で、円安の影響で原油などの原材料価格や輸入品の値上がりが生じることで、財布のひもがますます固くなる。欲しいものがあっても、我慢してお金を使わないことが懸念される(商店街)。

自然現象に伴う景況感への影響に関わる言及はほとんどなく、経済関連への社会の動向に左右される意見が多々見受けられる。円安に伴う株高を受け、売り上げが伸びた、財布のひもが緩んでいるように見えるとの好意的意見は多く、一部で言われている「株価の上昇は富裕層のみにプラスへと影響する」との説は的外れであることがうかがえる。

他方、原油高に伴いガソリン価格の上昇を受け、直接燃料費が増加する業態や、間接的にコストに上乗せされることで利益が圧縮される、価格上昇のために売り上げが落ちるなどの懸念の声も少なからず見受けられる。

一方、ラストスパート状態の人も少なからずいるであろう、今年度卒業予定の人たち、そして中途採用を望む人達に対する求人需要は大変堅調で、雇用関連のコメントだけでなく、例えば「技術職の稼働率は目一杯の状況で、予定物件の受注は順調に推移しており、この先1年は目途が立っている」のように、企業動向関連にも活況状況が手に取るように分かる文言が見受けられる。

なお「円安」に絡んだ言及は19件(重複含む)。ネガティブな使われ方は半分ほど。燃料費の増加の一因として挙げられているケースが多い。その燃料費関連だが、「原油」は11件(重複含む)。来月以降はさらに増加することが予想され、その分景況感の足が引っ張られる可能性はある。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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