トランプ大統領の誕生で米国は政治的に二分された? いいえ昔からです

2017/01/27 05:15

昨今の国際情勢でもっとも気になるのは、アメリカ合衆国の新・米大統領トランプ氏の施策と、その存在自身に否定的な各方面の発言や動向。選挙期間中の報道界隈の姿勢問題に始まり、選挙人選出の選挙において得票総数ではクリントン氏が上だったにも関わらず選挙の仕組み上トランプ氏の勝利となったこと、さらにトランプ氏側の選挙人に対しトランプ氏に投票しないようにとの運動が起きたが、結果としては逆にクリントン氏に投票するはずだった選挙人が他に投票した数の方が多かったことなど、選挙が終わるまでの間に限っても、様々な話題が伝えられることとなった。トランプ氏が新大統領となった後も、アメリカ合衆国内では反対派の活動の活発化を中心に、政治的分断が深刻な状態となっている……とは外電などで伝えられている。では本当に、同国ではトランプ大統領の登場が政治的分断の引き金となったのか、それまではその類の構造は生じていなかったのか。同国の民間調査会社PewResearchCenterが2017年1月19日に発表した調査結果【On Eve of Inauguration, Americans Expect Nation’s Deep Political Divisions to Persist】を元に確認していく。

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アメリカ合衆国は政治的に分断されている…との認識は昔から


今調査の直近分は2017年1月4日から9日にかけてアメリカ合衆国内に居住する18歳以上の男女に対し電話による通話応対方式で行われたもので、有効回答数は1502人。そのうち固定電話は376人、携帯電話は1126人(うち674人は固定電話無し)。各種属性に関して国勢調査の結果を元にウェイトバックが行われている。

外電として日本に伝えられるアメリカ合衆国の現状は、政治的な分断が深刻な事態であるとの話だが、実のところ同国内では一時期を除き常に「政治的に分断された状態が以前より深刻化、悪化している」との認識で占められている。

↑ 昔と比べて今の自国は政治的に分断された状態だと思うか(アメリカ合衆国)
↑ 昔と比べて今の自国は政治的に分断された状態だと思うか(アメリカ合衆国)

2009年初頭に大きく分断意識が低下し、一致団結感が強まっているが、これは前大統領のオバマ氏就任に伴うもの。当時の選挙結果が圧倒的な差異によるものだったことに加え、同国では初の黒人大統領として誕生したこと、インターネット、特にソーシャルメディアを駆使したことで知られ「インターネット選挙(革命)」「ソーシャルメディア選挙(革命)」とも伝えられ、明るい未来を予見させるだけの素質を有していた。

しかしながら就任からしばらくすると政治的分断を覚える人は増加し、2012年(第二期オバマ政権)に入ると8割に達する。その後も8割前後は維持されたままで、今回のトランプ大統領の誕生で86%に上昇する。見方を変えればオバマ大統領の治世において、第一期の後半からすでに政治的な分断が生じているとの認識は多数の人に及んでおり、昨日今日に始まった話では無いことが分かる。むしろオバマ前大統領の就任直後が異様な状態だったのかもしれない。

これを支持政党別で見ると、どちらの党の支持者であっても認識にさほど違いは無いことが分かる。

↑ 昔と比べて今の自国は政治的に分断された状態だと思うか(アメリカ合衆国)(支持政党別)
↑ 昔と比べて今の自国は政治的に分断された状態だと思うか(アメリカ合衆国)(支持政党別)

取得可能な数字が限定的でやや粗いグラフとなっているが、オバマ氏の大統領就任時には所属していた民主党の支持者の方が分断意識は低く、以後その状態が続くが、共和党支持者との差異はほとんど無い。そしてトランプ氏の大統領就任で、共和党支持者と民主党支持者の値が逆転し、差異はさほどないものの、民主党支持者の方が強い分断を覚えることになった。

もっともオバマ氏の前の大統領はジョージ・W・ブッシュ氏で共和党所属だったことを思い返せば、「自分が支持する政党から大統領が輩出されれば、世の中の政治的分断は生じていないと考える人が多くなる」という、現金な結果が出ているとの見方もできる。

「今後はよくなる」との発想も結局は支持している人か否かの違い


政治的分断の意識は今後の政策への期待・不安からも見て取れる。調査時点でこれまでの1年間と今後の1年間はどのような状況変化が生じるか、大局的に良くなるか悪くなるかの択一で答えてもらったものだが、全般的には良くなるとの意見が49%、悪くなるとの意見が42%だった。

↑ 2017年は2016年と比べて良くなるか悪くなるか(2017年1月、アメリカ合衆国)
↑ 2017年は2016年と比べて良くなるか悪くなるか(2017年1月、アメリカ合衆国)

興味深いのは支持政党別。トランプ大統領が属する共和党支持者では83%の人が良くなると認識しているのに対し、敗れたクリントン氏が属する側では24%しかいない。自らが支持する(政策を有する)候補が大統領となった側は「今後は良くなる」とし、そうでない側は「今後は悪くなる」と認識する。これもまた現金な反応であり、ある意味当然な心理動向には違いない。

この動きは「良くなる」「悪くなる」と回答した人の、その具体的理由からも見て取れる。

↑ 2017年は2016年と比べて良くなる・悪くなるとした人のその理由(2017年1月、アメリカ合衆国)
↑ 2017年は2016年と比べて良くなる・悪くなるとした人のその理由(2017年1月、アメリカ合衆国)

クロス回答値が取得できないので推測でしかないが、共和党支持者は自分の推挙した大統領の施策に期待し、民主党支持者は自分が推挙しなかった大統領の施策に絶望し、それぞれ2017年の展望を見ていることが分かる。また第二位以降の項目を見ると、「良くなる派」は多分にポジティブな、具体性の無い思考の方向性にあるのに対し、「悪くなる派」は政治的やリベラル思考の観点での悲観論が目に留まる。

両党の支持者の思惑、そしてもう一つの対立点ともいえるリベラルと保守の動きは、トランプ新大統領への期待からも見えてくる。現時点で長期的に成功するか否かを、当選直後に答えてもらった結果が次のグラフ。オバマ氏は2009年1月、ブッシュ氏は2001年1月時点での同様調査の結果である(いずれも第一期の就任直後)。

↑ 就任直後の大統領に関して、長期的に見て成功するか否か(アメリカ合衆国)
↑ 就任直後の大統領に関して、長期的に見て成功するか否か(アメリカ合衆国)

共和党支持者では「保守派」「中庸・リベラル派」、民主党支持者では「保守・中庸派」「リベラル派」と仕切り分けが異なっている。これは【米大統領選挙前後のごたごた感はリベラル層の「こんな世界は認めない」が一因では】でも解説している通り、元々民主党がリベラル的な要素が強く、議員も支持者もその傾向が強いから。そして共和党は保守的方向性が強く、議員も支持者もその傾向が強いため。全般的には大よそ民主党=リベラル、共和党=保守と見ても問題は無い。

過去大統領との比較を見ると、他の報道でも伝えられている通り、トランプ氏への期待度は低い。しかしオバマ氏が異様な高さを示しているのも主要因だが、ブッシュ氏などと比べると大きな差異はない、そもそも就任直後では時期尚早でしかないとの意見が多数を占めている。

支持政党別にトランプ氏への判定を見ると、民主党支持者、特にリベラル層の反発が強く、全体の失敗派の値を底上げしているのが分かる。共和党支持者でも中庸・リベラル派では6%の人が今の時点で「失敗するだろう」と答えており、リベラル層がいかにトランプ氏を嫌っているかがあらためて確認できる。



数々の過激な発言、前大統領のオバマ氏とあまりにも相反する特性などを受け、アメリカ合衆国内の報道(と自称するもの)はもちろん、それを伝える日本の報道界隈も、多分に感情論的な方向性、見方で同国の実情を伝えている感は強い。選挙戦の際に特定の候補の支持を表明しただけで、対する候補の支持者からさまざまな仕打ちを受けたとの話も多数伝えられ、感情のぶつかり合いが体現化され、それが事実を見えにくくさせている。特に選挙結果が出た後のリベラルと呼ばれる層の挙動は、後々まで記憶に残り、記録されるに違いない。

感情論に振り回されること無く、数字を見て、冷静な判断で実情を認識してほしいものではある。


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