裏付け、そして「たばこ盛況」の良し悪しを検証…コンビニでは1日何箱たばこが売れているのかを計算してみる(下)(2015年)

2015/10/02 13:00

先の記事【コンビニでは1日何箱たばこが売れているのかを計算してみる(上)】ではローソンの決算短信補足資料やアニュアルレポートを基に各種計算を行い、1日に303箱もコンビニでたばこが売れている実態が明らかになった。今記事ではそれの裏付けと、たばこの売上が全売上のうち大きなシェアを占めている状況について「諸手で歓迎するような状況」なのか否かを検証してみることにする。

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本当に1日数百箱も売れているのか


あくまでも概算ではあるが、計算上はコンビニ大手のローンソでは平均して1日303箱ものたばこを販売していることになる。24時間営業店舗ならば5分近くに1箱の割合である。他の大手コンビニも状況はさほど変わらないだろう。しかし本当に303箱も1日で販売しているのだろうか。確かにレジ後方には山ほどのたばこが積み重ねられているが、あの山が大きく入れ替わるほどの数が売られているのか。無論カートン販売の場合もあるので(1カートンは10箱入り)、あのストックからのみの販売では無く、カートン買いをする人がいれば48分に一人で良くなるので、あながち非現実的とは言い切れない。

それを裏付けるデータが、コンビニのPOSシステムデータを集計したデータベースシステムを提供する【PosBank】の提供するブログ(【タスポ(Taspo)開始で、コンビニ変わる? 来店客とタバコ販売数、増加? タバコ深夜販売比率は、減少?】)にあった。書込みの時期は2008年の7月、ちょうどタスポが導入された直後のものである。

箱数を元にしたものは記事中本文後・上部の折れ線グラフ。数字の表は「全体的に占める比率」で箱数ではなく、いずれにしても具体的な箱数は分からない。しかし例えば7月6日の「セブンスター」が65箱前後/日、「マイルドセブン スーパーライト」が50箱前後/日の値を示しているなど、国産たばこだけでも当時で300-400箱、外国たばこで150-200箱は発売されており、直近年におけるローソンの「1日303箱」がありえない数ではないことが分かる。

また、この記事のグラフを見ると、タスポ導入直後の週はそれ以前の週と比べて1.5-2.0倍ほどの売上箱数がアップしていたことが確認できる。今ではもう少しおとなしめになっているはずだが、それでも「大きくたばこの売上を引き上げた」ことには違いない。

さらに念のため、2012年時点でローソンのIR部局に上記計算式を提示したところ、このような考え方・解釈で問題は無い、という回答をいただいている。303箱/日は間違いないようだ。

たばこの売上増で万々歳、なのか?


ローソンの「1日303箱」の実績にもあるように、「たばこの売上が伸びており、それが全体の売上を引き上げている」のは事実である。実に店全体の売上の約1/4がたばこで占められており、「たばコンビニ」という表記すらあながち間違っていない感すら覚える。

しかし企業は(業績上においては)売上がアップするだけて良しとするものではない。売上はあくまでも利益を上げるためのもの。最終的に利益を得なければ話にならない。商品が一つ売れるとどれほどの利益が得られるかはもちろん決算短信上などでは非公開だが、【日経ビジネスアソシエの記事「たばこ目当ての客で売り上げ増加、だが来年は…」(2008年12月)】の記事に粗利益に関する貴重な言及があった。曰く、

・たばこ……約10%

・コンビニ商品全体の平均……約30%

であるとのこと。またJTのIR資料などを基にした記事【たばこ税の推移をグラフ化してみる】でも明らかにしている通り、JT販売のたばこに関しては、たばこの販売店におけるマージン(販売手数料)は販売価格の10%であることが確認されている。そして前述の記事【コンビニの商品種類別売上の変化をグラフ化してみる】の通り、ローソンに限れば商品区分別の粗利益は3割から4割が平均的。

↑ 商品別総粗利益率の推移(単体、チェーン全店、ローソン)(再録)
↑ 商品別総粗利益率の推移(単体、チェーン全店、ローソン)(再録)

この状況は何を意味するか。「同じ売上でも、たばこは他の商品の1/3から1/4しか利益があがらない」、言い換えれば「たばこは儲かりにくい」との事実が浮かび上がってくる。例えば、粗300円のお弁当(利益率30%)を売れば90円の儲け(300×0.3)だが、同じ額面の300円のたばこを売っても30円しか儲からない(300×0.1)。同じ手間ヒマがかかるのなら、採算性が1/3に減少したことに他ならない。

また、上記の日経ビジネスアソシエの記事でも指摘しているように、たばこ購入客の常連化を目指して品揃えを良くするために在庫を抱えるのは良いが、在庫過剰で財務的な負担が増加するリスクも負うことになる。



日経ビジネスアソシエの記事では、ファミリーマートの事例として「たばこの単品購入目的のお客にフライドチキンを勧める」との記述があった。レジ横・レジ前の甘味系食品やフライヤーアイテムと呼ばれる揚げ物、そしておでん、中華まん、さらにはドーナツなどは非常に採算率が高い(つまりマージンが大きい)。最近これまで以上にコンビニがレジ横・レジ前商品に力を入れているのも、中食需要が伸びたのが主要因だが、粗利益の低いたばこ購入者に、粗利益の高いこれらの商品をついで買いさせるとの思惑がある、と考えた方が自然である。

またこれまでの記事で記した通り、たばこの売上はマイナスへのトレンド転換が確認されている(直近では消費税率引き上げに伴う特需発生で売上はプラス化しているが、販売本数は減退を継続中)。粗利益は望めないが集客効果が高くついで買いも期待できるエース的存在が、次第にその勢いが衰え、長所部分の成績も急速な減少の動きを見せ始めている。そして今後起死回生的な挽回を示す可能性は低い。

コンビニ各社がたばこに代わる主力選手(例えばオリジナルスイーツ、プリペイドカード、カウンターコーヒー、高付加価値のプライベートブランド、健康志向の強い独自食品)を急ぎ育成中なのも十分理解ができるというもの。今後コンビニにおけるたばこの立ち位置は少しずつ、そして確実に変化していくに違いない。


■一連の記事:
【コンビニでは1日何箱たばこが売れているのかを計算してみる(上)】
【コンビニでは1日何箱たばこが売れているのかを計算してみる(下)】

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