現状は下落、先行きは上昇と正反対の方向に…2016年9月景気ウォッチャー調査は現状低下・先行き上昇

2016/10/11 16:00

内閣府は2016年10月11日付で2016年9月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で低下して44.8を計上し、水準値の50.0を下回る状態は継続する結果となった。先行き判断DIは先月比で上昇して48.5となったが、こちらも水準値の50を割る状態が続いている。結果として、現状低下・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、引き続き海外経済や金融資本市場の動向等への懸念がある一方、旅行・観光分野の回復、受注や求人増加の継続等への期待がみられる」となり、海外への懸念は継続しているものの、内需を中心とした消費活性化への期待が寄せられている実情がうかがえるコメントが示されている(【平成28年9月調査(平成28年10月11日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は低下、先行きは上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2016年9月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス0.8ポイントの44.8。
 →「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。「やや良くなっている」「変わらない」が減少。
 →詳細項目は「飲食関連」「住宅関連」が大きく増加し、家計動向関連はすべてマイナス。企業動向関連は「製造業」「非製造業」共にプラス。「雇用関連」は0.1ポイントだがプラス。水準値の50.0を超えた項目は「雇用関連」のみ。

・先行き判断DIは先月比でプラス1.1ポイントの48.5。
 →「やや良くなる」が増加。「やや悪くなる」が減少。
 →「サービス関連」「住宅関連」「非製造業」「雇用関連」で増加。
「住宅関連」のみがマイナスでそれ以外は全項目で増加。「サービス関連」の上げ幅が2.9ポイントで最大。水準値の50.0を超えた項目は「雇用関連」と「サービス関連」のみ。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。

近しい環境変化を与える出来事としては、今年6月分の調査の直前となる6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したにより、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

昨今ではその衝撃・影響も和らぎ、いくぶんの持ち直しを見せている。とはいえまだ円高は続いており、海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は大きい。水準値の50.0を超えた項目がほとんど無いのも、その実情の表れではある。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、イギリスショックの急落から大よそ下落分は回復したものの、まだ低迷感は否めない。

水準値超えは現状、先行き共に雇用関連のみ


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2016年9月)
↑ 景気の現状判断DI(-2016年9月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに2年以上が経過したが、それによってもたらされた消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させる材料が見当たらず、低迷感は継続。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いていると判断できる。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。昨今では1バレルあたりの価格が30ドルから50ドルの間を行き来するボックス圏に移行しており、ある程度の安定感の中での、あまり安すぎず、さりとて高値ではない状態を示しているのが幸いといえば幸いではある。

他方、上記にもある通り、国民投票を受けてイギリスのEU離脱問題やそれに絡んだ同国、さらにはEU全体の政治的混乱が多方面に波及し、為替は大きく円高に振れ、株価もリスク回避の流れを受けて売り込まれて下落。それらの要素はほぼすべて、日本にとってはマイナスの要因として降りかかり、消費者の消費マインド、企業の業務見通しに大きな影を差した。もっとも現在では円高こそ続いているものの、直接のパニック的な不安感はほぼ復調し、あとは為替のゆるやかな回復(円安化)を待つ状態となっている。

今回月の現状判断DIは家計動向関連では幅こそ違えど全項目でマイナス、企業動向は製造・非製造双方ともプラスとなり、極端な方向性を示している。雇用関連はプラスを維持しており、先月に続き唯一の項目ではあるが水準値の50を超えているのは安心感を持たせてくれる。雇用関連の値動きは他の項目に先行する傾向が(少なくとも経験則の限りでは)強いからだ。

景気の先行き判断DIは現状よりもポジティブな値動き。

↑ 景気の先行き判断DI(-2016年9月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2016年9月)

家計動向関連では住宅関連のみがマイナス。現状では最大の下げ幅を示した飲食関連も、先行きではプラスを示している。企業動向も双方ともプラス。雇用も幅こそ微少だが上昇を継続。前回月に上昇の勢いがほぼなくなった形となったが、今回月は再び勢いを増したようだ。為替のさらなる適正値化(円安化)による底上げが望まれるところ。

猛暑の影響は良し悪し、求人意欲は高いが先行き不安感も


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・熊本地震の被害が大きかったが、落ち着いたことで新規開店の祝いの花が多く出た(一般小売店[生花])。
・台風の影響により野菜の高騰が続いている。客の購買行動がよりシビアになっている(スーパー)。
・天候の影響もあり、秋冬物の動きが良くないため、客単価が下がり、売上も苦戦してい
る(百貨店)。
・天候により予約がキャンセルになったり、客の出控え、買い控えにより繁華街も人通りが少ない。朝も夜も非常に稼働率が悪い(タクシー運転手)。

■先行き
・年末年始の旅行は前年と比較して予約が若干増加傾向にあるので期待が持てる(旅行代理店)。
・2-3か月先の予約は、非常に悪かった9月よりはやや良い状況で推移している(ゴルフ場)。
・例年なら年末に向けて動きが出る時期だが、足元の様子からはあまり期待ができない。節約志向が強く、単価は低下が続いていく(商店街)。
・台風の影響で、今後の青果物の価格上昇が見込まれており、それでなくとも消費動向が停滞気味のなかで、価格に対する消費者の反応が一層厳しくなることが懸念される(スーパー)。

今回月は台風が団体旅行で押し掛けたかのように、相次ぎ大型の台風が上陸、あるいは接近し、各地に大きな影響をもたらすこととなった。上記コメントでも台風の影響で野菜などが高騰し、それが消費者へマイナスの影響を及ぼすとのコメントが複数寄せられている。さらに雨で外出機運が損なわれ、小売のセールスにもネガティブな動きが見られる。

他方、上記では取り上げていないが今回の現状・先行き指数の動向にもある通り、企業や雇用方面では景気の良い声が多分に見られるのも事実。全国のダイジェスト的な一覧でも「とにかく受注量が多い。断るのが、もったいないと思うほど」「人消費関連の求人件数が若干増加するなど、明るい兆しがみえ始めている」などのコメントが確認できる。

円高が落ち着きを見せ始めたようで、コメント中の「円高」の登場も減少。前回月は重複込みで12件だったが、今回は6件に減っている。

なお今回月では9月10日に広島東洋カープが25年ぶり7度目のセ・リーグ優勝を果たしたが、少なからず景況感に影響を与えたようで、コメントにも「地元プロ野球チームの優勝セールが好調で、販売量が大幅に増えて景気が良くなっている(家電量販店)」「地元プロ野球チームの優勝で小売業や飲食業に活気が出るものの、製造業や建設業にはあまり影響はなく、まだ景気全体を押し上げるまでには至らない。ただ今後のクライマックスシリーズや日本シリーズの結果次第では良い影響が出て来る可能性がある(会計事務所)」などの声が見受けられる。



今年の動向を振り返ると、原油価格の低迷に伴う関連企業の業績悪化懸念、そして中国経済・株式市場の急落、世界規模の市場下落、さらには為替の円高化、来年に迫った消費税率引上げにより、景況感は大きな減退を経験していた。

その後消費税率の引き上げ延期はなされたが、原油価格はじわりと上がり、4月の熊本地震、そして6月のイギリスのEU離脱への動きにより、為替と共に株価は大きく下落し、経済的な見通しもかなり怪しげな雲行きとなったことは否めない。今回月ではイギリスの動向そのものへの不安感はほぼなくなったが、株価の低迷と円高は続いており、これが多分に景況感の足を引っ張っている。さらに相次ぐ台風の上陸による影響、とりわけ北海道で多々伝えられている被害の大きさは、今後同地域だけでなく全国の景況感に作用している。

多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。昨今では可処分所得を削り取る大きな要素となる社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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