「プレジデント」がプレジデント状態継続中だが奮闘誌も…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2016年4月-6月)

2016/08/07 12:00

インターネットに代表される電子情報技術の加速的進歩、機動力に長けたスマートフォンの普及浸透で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の情報をつかさどる専門誌では、正しさはもちろんだがスピーディな情報展開への需要が天井知らずのものとなる。デジタルとの比較で生じる時間的遅れは紙媒体の致命的な弱点となり、その弱みをくつがえすほどの長所が今の専門誌では求められている。このような状況下の「ビジネス・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2016年8月5日付で発表した、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

スポンサードリンク


「プレジデント」一強時代は変わらず、だが


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近分にあたる2016年の4-6月期とその前四半期に該当する、2016年1-3月期における印刷実績。

↑ 2016年1-3月期と2016年4-6月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2016年1-3月期と2016年4-6月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

【「クーリエ・ジャポン」が来年2月で休刊、有料会員制のウェブサービスに移行】でも伝えた通り、「クーリエ・ジャポン」が2015年2月25日発売の4月号で休刊となり、有料会員制のウェブサービスに移行した(現時点では一部記事は無料閲覧可能で有料登録すると全部閲覧できる仕組み)。前四半期で部数開示は終了し、今記事の対象雑誌はこれまでから1誌減り、全部で6誌となってしまった。ただし不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今回顔を見せており、それが加わり全部で7誌となっている。何か追加したいところではあるが、該当ジャンルで合致しそうな雑誌は他にないのが残念ではある。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から継続する形でトップ。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは2倍強もの差をつけている。その「PRESIDENT」の部数だが、2013年後半から上昇傾向が始まり、ここ数四半期は踊り場状態が続いていたが、前四半期では大きく下落。1年分の上昇をすべて清算してしまった。そして今四半期も下げ幅こそ縮小したものの、減退が続いている。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2016年4-6月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2016年4-6月期まで)

この動きはイレギュラー的なものとも言い難い。「この流れを維持できれば、あと数年で40万部への大台に手が届きそう」とは半年前におけるコメントだったが、その目論見は吹き飛んでしまった感は強い。トップのつまづきは該当ジャンル全体の不安を想起させる材料になるだけに、頑張ってほしいものだが。

2誌がプラス、4誌がマイナス、上下幅は誤差範囲…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前四半期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手身近に各雑誌の状態を知るのには適している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2016年4-6月、前四半期期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2016年4-6月、前四半期期比)

今四半期ではプラス領域は2誌、マイナス領域は4誌。もっともプラスもマイナスも、誤差領域内(5%内の振れ幅)の動きであり、実質的には大きな変動は無いものと見て良い。なお「¥en SPA!」は前四半期内では発刊が無かったので、今グラフからは除外されている。

「週刊東洋経済」は前四半期の反動によるところが多分だが、「週刊ダイヤモンド」は【週刊ダイヤモンドの6月18日号が重版したとのお話】でも伝えた通り、特定号の人気がけん引した可能性が高い。「他誌にはないコンテンツ」がオンリーワン的付加価値をもたらし、売上を底上げした次第。これは専門誌に限らずビジネスの結果を伸ばす基本の一つではあるが、最近の専門雑誌には特に必要不可欠な要素に違いない(同時にリソースの消費も大きく、必ず成果が出るとは限らないので、躊躇されがちなのも事実だが)。

↑ 週刊ダイヤモンド印刷証明付き部数
↑ 週刊ダイヤモンド印刷証明付き部数

「週刊ダイヤモンド」は今カテゴリでは珍しく、部数低迷の度合いも緩やかで、2013年以降は事実上横ばいで推移している。市場の縮退、インターネットコンテンツへのシフトの現状を考慮すれば、大健闘に違いない。

より厳しい前年同期比動向


続いて前年同四半期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2016年4-6月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2016年4-6月、前年同期比)

前四半期比では大人しかった部数動向だが、前年同期比ではダイナミックな動きが見える。誤差範囲内だがプラス圏にあるのは「週刊ダイヤモンド」のみ。マイナス圏はそれ以外(「¥en SPA!」も前年同期で発刊されたので数字を計上している)すべて。しかも誤差領域を超えた5%超のマイナスが5誌に及んでいる。今ジャンルでは最大部数を示している「PRESIDENT」ですら、1割超えの部数減は、多少ならずとも衝撃の事実には違いない。

最大の下げ率を見せたのは「THE 21」。1年ほど前から部数を盛り返して注目を集めていたが、その後失速している。その上昇期との比較となるため、大きなマイナス値の計上となった。中長期的に見ると低迷感は否めないが、この数年は6万部前後を維持しており、安定感はある。

↑ THE21 印刷証明付き部数(2016年4-6月期まで)
↑ THE21 印刷証明付き部数(2016年4-6月期まで)

小さな起伏の繰り返しは、何らかの試行錯誤の繰り返しをしているようにも見える。何かきっかけがあれば大きく上昇しそうではあるのだが。そのきっかけを探し、見出すのが難しいのは「THE 21」に限った話ではない。



内容の斬新さから注目を集めると共に部数を伸ばしていた「COURRiER Japon」が、編集方針の変更と思われる内容性向の変化と共に失速して一部有料のデジタル媒体に移行したことで、印刷証明付き部数の開示は無くなってしまった。昨今の雑誌媒体ではよくあるケースとはいえ、やはり寂しいものはある。見方を変えると、時流によるところもあるとはいえ、ひとつかじ取りを違えると大きく航路を外してしまう実例なのかもしれない。

書籍的な保存を半ば目論んだ企画構成の「PRESIDENT」「THE21」も、少し前までは部数を伸ばし堅調に見えたものの、昨今では今一つな状況が続いている。記事冒頭で触れている「インターネットにスピード感では絶対に太刀打ちできない、紙媒体としての専門誌の勝利の方程式」の一つに、内容の充実性、さらに突き詰めれば蓄積性、保存性の高さの強調があり、それを実践することで支持を集めてきた雑誌であるだけに、最近の軟調さは気になるところ。単なるイレギュラーであると良いのだが。

それゆえに今回該当期における「週刊ダイヤモンド」の重版話は、非常に心強く、そして他誌にも大いに参考となるケースに違いない。以前と比べて市場は縮小し、また紙媒体を求める層も人数を減らしているかもしれないが、「この雑誌だけ」「この号だけ」のようなオンリーワンの価値ある情報を提示し、それが需要に応えるものであれば、相応のセールスは確保できる。

元々ビジネス誌ではその編集方針として連載物、あるいは特集の記事を再構築して加筆し、書籍として再展開する傾向が強い。コミック誌における雑誌連載と、その集約+描き下ろしによる単行本のような関係ではある。雑誌の掲載時点で捨て置かれる程度のものでは無く、保存して単行本のごとく取り扱ってもらう、価値あるものとしての作りを成すのは、雑誌そのもののセールスを高める点では一つの方法論としてありうる。一冊一冊が保存に値する、少なくともその価値が見いだせる号が頻繁に登場する期待を読者予備軍にアピールできれば、定期購読を模索する人も増え、部数の安定化も確保できるのだが。


■関連記事:
【「電子書籍ビジネス調査報告書2016」発売】
【定期更新記事:出版物販売額の実態(日販)】
【就業者に読まれているビジネス・経済誌、トップは「日経ビジネス」】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー