出版物の種類別売上の変化をグラフ化してみる(前年比)(2015年)

2015/10/30 05:00

昨今は「出版不況」「書籍不況」なる言葉も日常化し、紙媒体に関しては書籍に限らず新聞、そして手帳などの文房具ですら、厳しい状態が続いている。これもひとえにデジタル機器の普及に伴う、利用者側の購入・利用性向の変化によるもの。今回はその中から特に景況感の上で取り上げられることが多い出版物の売上状況について、主要種類別、そして書店の規模別に区分した動向を、日販の『出版物販売額の実態』最新版(2015年版)を基に確認していくことにする。

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コミックと総記がかろうじてプラス


まずは出版物の分類別、売上高の前年比。前年2013年分と比較するとプラス項目数は2つ。「コミック」と「総記」がプラスを示している。前年では全項目で前年比がマイナスだったことと比較すれば、該当項目は随分と健闘したことになる。

↑ 分類別売上高前年比(2014年)
↑ 分類別売上高前年比(2014年)

なお項目中「実用書」は「旅行地図」も含んでおり、辞典(「学参」には集計されない)・事典・日記・手帳・その他をまとめて「総記」と呼んでいる。

【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】でも解説しているが、出版物の売上高は漸減傾向にある。当然2013年と比べて2014年の売上高もマイナスだが、「出版物の分類によってその減少ぶりには違いがある」こと、「下げ基調の中で踏みとどまり、むしろはいのぼる機運を持っている分類もある」ことが分かる。

特にマイナス値が大きいのは「文芸」。これは前年2013年分において、村上春樹氏の新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が輩出されヒット作となり、元々下げ基調だった同分類の下げ幅が最小限に留まったことの反動。それだけ昨今における「文芸」の不調度が大きい実態が改めて認識される。

他方、書店の規模別に売上高の動向を見たのが次のグラフ。

↑ 店舗規模別売上高前年比(2014年)
↑ 店舗規模別売上高前年比(2014年)

ここ数年「大規模店舗ほど売上高の上で成績が良い、少なくとも減退率が低い」との傾向がみられている。今年はその動きに加えて出版不況要素が加わったような結果が出ている。まずすべての規模の店舗で前年比はマイナスであり、出版物のセールスが落ちている現状が反映されている。そして101坪以上の店舗ではマイナス4.3%前後で変わらずの値が出ており、中規模以上の店舗ではスケールメリットすら見いだせなくなっている実態が出てしまっている。

ただし100坪以下に限ればそれ以上の下げ幅が計上されており、いわゆる町の本屋さん的な個人営業の小規模書店の経営上の厳しさが、よりはっきりと浮かび上がっている。書店単位の平均面積が増加の一途をたどっているのも、小規模店舗が経営不振から淘汰されてしまう実態が大きな要因なのだろう(。そしてそれは多くの人が身近な本屋さんの推移で見聞きしているはずだ)。

↑ 書店1店舗あたり平均売り場面積推移(経産省・商業統計調査から試算、平方メートル)(再録)
↑ 書店1店舗あたり平均売り場面積推移(経産省・商業統計調査から試算、平方メートル)(再録)

「書店規模」と「分類別売上高前年比」を掛け合わせると……


次に「書店規模」と「分類別売上高前年比」をクロスさせ、傾向を見て行くことにする。大きく「大規模書店ほど好業績」「小規模書店ほど好業績」の2区分に該当する、出版物分類項目をそれぞれ抽出し、グラフ化を行う(双方に該当せず、下記2つのグラフには登場しない分類もある)。これは毎年行っている分析なのだが、今回年分は少々これまでと異なる状況が生じてしまった。

最初は「大規模店舗ほど好業績」の分類。「好業績」とはいえ、実態としてはプラスではなく「前年比マイナスの値が小さい」でしかない。表現としては「比較して悪くない」「業績悪化度が小さい」とした方が妥当。ともあれ、スケールメリットが効いているはずの領域。

↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績項目)(2013年)
↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績項目)(2013年)

ややイレギュラーな動きが一部の分類、具体的には「ビジネス」「専門」で見られる。とはいえ小規模店舗の値が少々健闘している程度で、大勢には変わりない。その動きをのぞけば、概して整った形で右肩上がりの状態となっている。

「小規模店舗ほど好業績」は…今回年は事実上皆無。ほんのわずかだが平均値よりも高い値を示す分類もあるのだが、その分類はむしろ大規模店舗の方が良い値が出てしまっている。

↑ 分類別売上高前年比(2014年)(全国平均と100坪以下店舗限定)
↑ 分類別売上高前年比(2014年)(全国平均と100坪以下店舗限定)

売上総計で100坪以下店舗のみが突出して大きな下げ幅を計上したのは、実のところこのような形で、ほとんどの分類で売上を落としていたから。特にプラス勘定だった「コミック」がマイナスに、大きな下げ幅を示した「文芸」の下げ率がさらに大きくなっており、足を引っ張ったことが分かる。わずかに「ビジネス」が全国平均よりも良い値だが、上記の通り同分類はむしろ大規模店舗ほど良い値が出てしまっている。



2013年から2014年への推移概要としては、「中堅規模以上の店舗は押し並べて軟調」「小規模店舗の不調ぶりが加速気味」とまとめることができる。2013年における「スケールメリットも単に下落スピードをゆるやかにさせるブレーキでしかなく、プラス化を見出すエンジンには成り得ていない状況」の説明に加え、「全体としての下落スピードがさらに大きくなり、ブレーキの無い小規模店舗が加速してしまった」と表現できるだろうか。

小規模店舗でも固定客の利用により一定の売上が計上され続ければ、存続は不可能では無い。しかしインターネット通販の普及加速化と地方の過疎化・高齢化に伴う商用圏単位での利用人口の減退は、数少ない固定客をも少しずつ削り取ってしまう。

昨今では小規模な書店が担ってきた定期刊行誌の取り置きや、人気書籍の取扱を大手コンビニが業務の一つとして担う動きも示している。今後ますます小規模な書店のビジネスは難しくなるかもしれない。


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※各グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください
(C)日販 営業推進室 店舗サービスグループ「出版物販売額の実態2015」

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