2016年8月度外食産業売上マイナス1.7%…9か月ぶりに前年比マイナスを計上

2016/09/27 10:00

日本フードサービス協会は2016年9月26日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2016年8月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売り上げは前年同月比でマイナス1.7%を計上した。前年同月と比べると土曜日が1日少なく客入りの点でマイナス要因となり、また台風などの相次ぐ接近・上陸による悪天候も客足を鈍らせ、売上は概して上値を抑えられる形となった(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。

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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が194、店舗数は3万2990店舗。今月は前月と比較すると事業社数は減少しているが、店舗数は増加している。

全業態すべてを合わせた2016年8月度売り上げ状況は、前年同月比で98.3%となり、1.7%の減少を記録した。これは先月から転じる形で9か月ぶりの減少となる。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日こそ変わらないものの土曜日は1日少なく、客数の点ではマイナスの影響を与えている。また相次ぐ台風の接近や上陸で、北海道や西日本を中心に荒れ模様の日が続き、客足を引っ張っている。さらに該当月ではリオのオリンピックが開催されており、自宅で鑑賞する人が増えたことも、外出機運を鈍らせ、マイナスの影響を与えている。

業態別に動向を見ると、ファストフードは全体ではぎりぎりではあるが、前月から続く形で9か月連続のプラス(プラス0.6%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、2014年夏からの相次ぐトラブル、さらにはそれをきっかけとした中長期に渡る問題点の露呈化や市場動向の変化に対応しきれない状況が継続していた。昨今ではようやく単なる反動を超えた回復基調の気配も見せており、今回月では客数はプラスマイナスゼロ、客単価はプラス3.6%を計上し、売り上げもプラス3.6%を成している。

マクドナルド単体の2016年8月における営業成績はプラス15.9%(売上、既存店、前年同月比)とそれなりに大きな上げ幅を示しており、これがファストフード洋風全体へのプラスの影響を与えたものと考えられる。なお同業他社のモスバーガーではマイナス4.5%(同)を示している。

牛丼チェーン店を含む和風は、客数はマイナス5.1%、客単価はプラス0.4%と成し、売上はマイナス4.7%とマイナスを計上。「季節メニューが予想より振るわず」との言及があるが、牛丼御三家の月次報告記事でも言及した通り、吉野家の夏のメニューの不調ぶりが影響を与えたものと考えられる。

ファミリーレストラン部門は全部の業種でマイナス。客単価の下げ幅はごくわずか、誤差の範囲がほとんどだがやはり土曜日の少なさと天候の悪化が客足を引っ張り、売り上げも落ちた形となっている。堅調な焼き肉ですら、客足をマイナス2.6%と落としている(報告書にも「台風の影響等で」とズバリ記載されている)。

パブ/居酒屋部門では特に居酒屋の減退ぶりが著しい。客単価こそプラスマイナスゼロだが、客数がマイナス14.5%と、全詳細区分で最大の下げ幅。報告書にも「店舗整理が続く中でとくに客数が落ち込み」とあるが、店舗数はマイナス7.6%でしかなく、単純に店舗数が少なくなったための客数低迷ではないことがうかがえる。

ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数こそプラスマイナスゼロで同数を維持したものの、客単価がいくぶん落ち、売り上げもマイナス0.3%に。リリースでは「お盆期間中は好調に推移したところもあったが、土日の少ない曜日要因や台風などから」とあり、客数が売り上げを引っ張ったとの解説があるため、客単価の減少は想定の範囲内であったようだ。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2016年8月分)
↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2016年8月分)

日取りの上で
不利な上、
台風の相次ぐ到来と
オリンピックの開催で
外出機運は大いに低迷し
客足は減退、
売上にも大きな影響が。
2014年4月の消費税率改定に伴う消費性向の減退影響も直接的にはあまり生じなかった外食産業だが(今件各種計上値は税抜比較で行っているため、消費税率引き上げに伴う「税込の」売上上昇は、業績動向には直接は影響を与えない)、2014年夏における天候の悪化、そして中国産鶏肉食材問題と2つのイレギュラー的なマイナス要素が足を引っ張り、むしろ状況は2014年夏以降は低迷感をぬぐえない状態が続いていた。特に後者は食材問題自身の影響に加え、それをきっかけとして業界の一部部門(ファストフード・洋食)における根本的な問題が露呈する形となった。大きな社会問題化した異物混入事件まで加わり、2014年夏以降大きなシェアを有するマクドナルドに相次いでいる状況に、ファストフード部門、さらには外食産業全体が多分に振り回されている感はあった。

2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。ようやく業績そのものも回復しつつある。ただし売上の上昇の要因が客数ではなく客単価にある点を見ると、根本的な状況の改善にはまだ時間を要しそうである。あるいはこのまま高単価戦略へのかじ取りを成す可能性もある。

ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしている。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れている。今回月は季節商品の空振り三振的な状況と天候機運が災いした感は強く、後者はともかく前者に関しては、今後一層のリソース投入がなされる可能性はある。

居酒屋の不調続きは要注意ポイント。こちらは純粋にビジネススタイルそのものが時代の流れの中で歯車のずれを生じ、店舗数そのものも漸減してしまっている。

現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。複数人数が一緒に来店して会食をする点では、飲酒以外は類似点が多いファミリーレストラン部門が大よそ堅調なのも対象的。店舗数の急速な減少は、状況の悪化を受け、淘汰が進んでいるように見える。

吉呑みもっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけでは無い。牛丼チェーン店の吉野家が運用している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。最近ではスマートフォンのアプリと連動する形でのボトルキープなる手法も導入し、さらに注力度を高めている。ちょっと一杯飲みに行くスタイルでは先駆者ともいえる中華料理店の日高屋が好評を博しているとの報告もなされ、その市場の実情が明らかにされている現状を見るに(運営会社のハイデイ日高の月次売上を確認すると、ここ数年は前年同月比でほとんどの月においてプラスを呈している。ちなみに今回該当月にあたる2016年8月は既存店で客数マイナス4.0%・客単価プラス1.7%、売上高マイナス2.3%を計上している。やはり台風やオリンピックなどの影響が大きかったようだ)、既存の居酒屋にも環境を直視した上で、何らかの変化が求められているように思える。

牛丼業界の動きやディナーレストラン、ファミリーレストランの動きの良さを合わせ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。外食産業全体の動向を精査するうえで、店舗数動向もあわせ、今後も注視すべき重要ポイントに違いない。


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