理想と予定、子供の数の推移をグラフ化してみる…(下)理想数まで子供を持たない理由(2010年分反映版)

2011/10/30 12:00

国立社会保障・人口問題研究所は2011年10月21日、「第14回出生動向基本調査」のうち「夫婦票」の結果概要を公表した。以前【日本の「恋愛結婚」「見合い結婚」の推移をグラフ化してみる】をはじめとした、夫婦・独身者の結婚や出産に関する記事で用いた資料の、最新版に相当する。そこで今回はそのデータを元に、夫婦における子供数の「理想」と「予定」について考察した記事の上編【理想と予定、子供の数の推移をグラフ化してみる…(上)理想数と予定数推移(2010年分反映版)】に続き、下編となる「理想数まで子供を持たない理由」に関する記事の内容更新を行うことにする(元資料:【第14回出生動向基本調査:結婚と出産に関する全国調査 夫婦調査の結果概要】)。

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今調査は基本的に5年おきに実施されているもので、今回は2010年6月1日時点で妻の年齢が50歳未満の夫婦を対象に、無作為抽出した5510か所から840地区を選定。その上で配票自計・密封回収方式で行ったもので、有効回答数は2010年調査では7847組。そのうち初婚同士の夫婦6705組について集計が行われている。

まずは「上編」の終わりの部分で「結婚後あまり期間が過ぎていない夫婦は、理想と予定が近い傾向にあり、結果として差異が小さくなる。全般的に差異がもっとも大きいのは結婚持続期間10-19年の層」とした件について。結婚持続期間別に夫婦を区分し、それぞれに「理想の子供数」と「(最終)予定子供数=現存子供数+追加予定子供数」を集計した結果が次のグラフ。

↑ 結婚持続期間別に見た、平均理想子供数と平均予定子供数(2010年)
↑ 結婚持続期間別に見た、平均理想子供数と平均予定子供数(2010年)

継続時間が長い夫婦ほど、「理想の子供数」が増える。一方で現在抱えている子供数に、予定している子供数を足した「現実的な予定子供数」は減少。結果として差が開いていくのが分かる。

また、2010年調査では該当項目が公開されていないので提示できないが、前回の2005年調査では「現在子供数が2人までは”理想はもっと””予定は下”」「現在子供数が3人で”理想と予定がイコール”」「現在子供数が4人以上で”理想より多いかな”」という流れが確認されている。2010年もさほど大きな意識変化は無いはずだ。

↑ 現存子供数別に見た、平均理想子供数と平均予定(=現存+追加予定)子供数
↑ 現存子供数別に見た、平均理想子供数と平均予定(=現存+追加予定)子供数(2005年次、再録)

それでは調査母体の夫婦のうち、「理想子供数より予定子供数の方が少ない夫婦」について、「なぜ理想の子供数まで予定として産もうとしないのか」、その理由を複数回答で聞いたものが次のグラフ。妻の年齢別に区分してあるので、夫婦の、特に妻の事情によって大きな変移があるのが確認できるものとなっている。

↑ 妻の年齢別に見た、理想の子供数を持たない理由(2010年)(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、複数回答)
↑ 妻の年齢別に見た、理想の子供数を持たない理由(2010年)(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、複数回答)

トップは「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」。これは差異があれど、妻の年齢に関係なく最上位にある。他に主な傾向を見ると、

・「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」「家が狭い」は妻の歳が上がると共に減少する。世帯主の収入アップなどで、金銭的余裕が出るからか。
・「高年齢で産むのはいや」「育児の精神的・肉体的負担に耐えられない」「健康上の理由」「欲しいけれど出来ない」は高齢になるにつれて増加する傾向がある。
・「夫の家事・育児への協力が得られない」は若年の妻の方が高い。若夫婦だと夫の理解が得にくいのかもしれない。
・「自分(妻)の仕事に差し支える」は若年の妻の方が高い。共働きが多いか、自らの仕事へのこだわりが強い可能性が高い。

などが確認できる。

ちなみにこれらの値の総計を前回比(5年前比)で見たのが次のグラフ。

↑ 理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、複数回答)(総計、前回調査結果との比較)
↑ 理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定、複数回答)(総計、前回調査結果との比較)

金銭的束縛や高齢出産を嫌う理由がやや後退した代わりに、望んでいるが身体的に難しいとする意見が増加しているのが確認できる。

具体的な理想・予定子供数別に見ると……
以上は全体、及び妻の年齢階層別による、「理想子供数より予定子供数の方が少ない夫婦」について、「なぜ理想の子供数まで予定として産もうとしないのか」の理由づけだった。次に示すのは「理想子供数より予定子供数の方が少ない夫婦」における、「理想子供数と予定子供数の内訳別に見た、理想の子供数を持たない理由」。子供の数と、「理想より予定が少ない理由」について、何らかの関係があるのか否かが分かる。

↑ 予定子供数が理想子供数を下回る夫婦の内訳
↑ 予定子供数が理想子供数を下回る夫婦の内訳

↑ 理想・予定子供数の組合せ別、理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定)
↑ 理想・予定子供数の組合せ別、理想の子供数を持たない理由(予定子供数が理想子供数を下回る夫婦限定)

ポイントはグラフ中に赤い丸で示した三つ。上から順に「理想も予定も子供数が多くなるほど、金銭負担を重圧として認識し、理想子供数より減らす傾向がある」、「予定子供数が少数の夫婦では、望んでいるが出来ない場合が多い(主に身体的状況をある程度自認している。「健康上の理由」も同じ傾向を示していることから、明らか)」、そして最後は一つ目と重なる部分があるが「理想も予定も子供数が多くなるほど、自分自身や周囲環境との調整が付きにくくなる」である。

概して「予定数が少ない夫婦は身体的な問題」「予定数が多い夫婦は周囲環境や経済的な問題」が重しになっているのが分かる。



以前【いわゆる「未婚の母」による出生率をグラフ化してみる】で、少子化・出生率の低下を「先進国病」と表したが、今回のデータもそれを体感できる結果が出ている。理想子供数以下の予定子供数を計画している夫婦の多く(とりわけ若年層)は、その主要原因として「経済的な問題」を挙げている。これは「現状経済が厳しい」「経済状態が良好になれば出生率・子供数の増加が見込める」ことを意味するが、同時に「経済状態を見据えた上で、夫婦が出生や子供数をコントロールする傾向が強まっている」ことをも表している(「経済的な問題」と認識しているからこそ、子供の数を意図的に押さえているわけだ)。

この動きは新興国の少なからずの国で見られる傾向「貧しいならばさらに子供を産み、少しでも働き口を増やす」という考えとは逆行している。これは子供が成人になるまでの保護者としての教育・養育方針の違いであり、概して先進国ほど「子供が成人になるまで両親が手厚く保護する」傾向が強まるため、必然的に家庭全体の経済的負担も大きくなるからである。

つまり「先進国ほど家計における子供に対する、保護のための負担が大きくなる(時間の長短だけでなく期間単位レベルでも)」「経済的観念も高まる」「従って子供の保有数を計画する際にも”ソロバン勘定”の要素が強まり、必然的に(色々な意味で)無理な人数を出産しなくなる」という次第である。これが先進国病たるゆえんといえよう。

もちろん「ならば出生率を上げるには、夫婦に金をばら撒けば良いのか」という回答は愚策以外の何物でもない。【覚え書き......フランスとドイツの家庭生活調査-フランスの出生率はなぜ高いのか-】で例示しておいたが、先進諸外国ではトライ&エラーの形でさまざまな試みが行われている。(これまでの記事で提示した「非嫡出子」の社会的認知とサポートも一つだが)総合的なシステムを創り上げた、あるいは補強した上での手厚い保護、言い換えれば「ソフトとハードの両面からの支援」「社会全体で見守る仕組み」が求められ、実際に構築され、それが成果を上げつつある。さらにこれまでの各種少子化関連の記事を読み返せば、解消策のヒント、先例はいくらでも見つけることができよう。

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