2014年後半からの後退期を経て復調、一歩後退?…震災後のラジオ聴取動向をグラフ化してみる(2016年6月度版)

2016/07/15 05:00

従来型4大メディア(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)の中で、この数年においてもっとも大きな状況変化にさらされているのがラジオ。インターネットや携帯電話の普及でメディア力(りょく)の減退著しく、広告費は減退するばかりの中、先の震災をきっかけにその存在意義を認められ、新たな立ち位置を確保しつつあるとも言われている。今回はビデオリサーチが定期的にプレスリリースとして公開を実施しているラジオ聴取動向の最新発表値(【発表リリース:ビデオリサーチ2016年6月度首都圏ラジオ調査結果まとまる】)をはじめとした各種経年データを基に、震災前後のラジオ聴取動向について探りを入れていく。

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震災前後からの聴取率推移


今調査の調査様式などは先行記事【首都圏のラジオ平均聴取率6.3%、高齢者は平日でも1割強(2016年6月度版)(最新)】を参照のこと。

今件項目における「週平均の聴取率」とは「週全体(平日、土日を合わせた)における、1日単位での平均聴取率」を意味する。例えば「1週間全体において、1度でもラジオを聴いた人の割合」ではない(こちらは直近では61.8%)。

まずは全体的な聴取率の時系列推移。リリースなどから取得・利用可能なデータは2011年2月以降。そこでそれらの値を合わせてグラフ化する。東日本大地震・震災の発生は2011年3月11日だが、その期間以降に聴取率が上昇しているのがはっきりと見て取れる。

↑ 全局個人聴取率・時系列比較(6時-24時、週平均)(-2016年6月)
↑ 全局個人聴取率・時系列比較(6時-24時、週平均)(-2016年6月)

以前【地震情報で見直される「ラジオ」、評価を受ける「ソーシャルメディア」、そして……】などで解説したように、震災をきっかけとしてラジオはその価値を見直され、再評価(もちろんプラス)を受けることになった。また本震以降はしばらく大きめな余震が相次いだこともあり、ラジオを新たに備え、機会あるたびにスイッチを入れる人も少なくない(各通販サイトでも軒並みポータブルラジオの類が品切れとなった)。すでにラジオを持っている人も、聴取頻度は高まる。その結果、聴取率は7%台を回復する(2011年後半)。

しかし本震から時間が経過し、大きな余震の発生頻度も低下。それに合わせる形で聴取率も減少しはじめる。季節変動を考慮しなければ、減少は2012年春先から。2012年半ばには底を打ち、それ以降は多少ながらも回復したが、2013年には震災前の水準に戻ってしまった。その後やや起伏感を覚える中で、6%強の状態で横ばいのまま続いているように見えたが、2014年に入ると下落基調を示し、そして半年ほどは横ばい。底打ち感の雰囲気から、2015年6月では大きな跳ねを見せ、回復基調へのトレンド転換を期待させる動きを見せたものの、8月から10月では失速による下落。6月の上昇はリバウンドとしての動きかと思われた。

2015年12月では、ここ1年半ばかりの低迷感を一気に吹き飛ばすかのような上昇ぶりを示した。前回比でプラス0.7%ポイントの6.5%。2014年半ばまでの6.6%前後の水準へ一気に戻しを見せた。その後も高値の動きは続き、トレンドの転換を思わせたが、直近月では前回比マイナス0.5%ポイントの6.3%にまで後退してしまう。一時的な反動なのか、それとも前回月が天井だったのかは、もうしばらく様子を見て判断する必要があるが、このままの勢いならば震災後の高水準にまで持ち直す気配さえ見られただけに、残念な動きではある。

一連の動きを年齢階層別に見たのが次のグラフ。

↑ 全局個人聴取率・時系列比較(6時-24時、週平均)(年齢階層別)(-2016年6月)
↑ 全局個人聴取率・時系列比較(6時-24時、週平均)(年齢階層別)(-2016年6月)

グラフ領域内の動きを見ると、未成年者とシニア層における緩やかな減少、中堅層の増加といった傾向が確認できる。特に20-34歳は震災後にもほとんど動きが無かったものの、2012年の後半以降少しずつではあるが上昇していた。逆にシニア層・未成年者の減少は、震災後に半ば必要に迫られてラジオを整備・聴取を始めた層が、余震頻度の低下と共に必要性への認識も薄れ、再びラジオ離れを起こしているものと考えられる。

全体値では大きな動きが生じた2015年12月においては、中堅層以降、35歳以上の層における大規模な上昇が生じており、トレンド転換の原動力がこの年齢階層によるものであることが分かる。特に35歳から49歳層の増加は、その動きにより震災後のピーク値となる2012年2月につけた6.7%に接近するほど。50歳以上の高齢層と共に、この層の今後の動向が大いに注目されるところではある。

直近月の2016年6月分では、全年齢階層で前回月比にてマイナス。特に高齢層の下げ方が著しい。単なる統計上の誤差なのか、再び下方トレンドにシフトしたのかは不明だが、少なくとも特定の年齢層による腰引け感によるものでないことは無いのは間違いない。

前年同月との差で見ると……


この動きを分かりやすくするため、そして季節変動を無視できるように、世代別に前年同月との差を計算したのが次のグラフ。2012年2月より前の値が無いのは、元々の絶対値データが2011年2月以降しか取得できなかったためである。

↑ 全局個人聴取率・時系列比較(6時-24時、週平均)(前年同月比、%ポイント)(-2016年6月)
↑ 全局個人聴取率・時系列比較(6時-24時、週平均)(前年同月比、%ポイント)(-2016年6月)

2012年2月までと4月以降で、明らかにトレンドが変わっている。これは震災直後にラジオを整備し聴取した人の多くが、1年を経過して聴かなくなったことを意味する。この傾向は2013年4月から6月位まで続き、それ以降はまた違ったトレンドが生じている。2012年4月から2013年4月まではほぼすべての世代でラジオ離れが起きていたが、それ以降は若年層のラジオ離れ・中堅層のラジオ回帰の動きが見て取れる。

さらに2014年6月から8月以降は、動きが確認できる範囲では3回目のトレンド転換、具体的には緑色で囲った部分がほぼ確定となった。明らかにその左側の青色の期間と異なり、全体的な下げ基調に転じている。特にシニア層の減退ぶりが顕著で、傾向としては2012年8月以降のそれに類似している。

最近の動向としては、2015年10月分でその気配を見せた、緑部分のトレンドの終息は前回2015年12月分で確定的に。そして2016年2月以降は明らかに増加傾向を維持しており、新たな上昇トレンドの流れの気配を覚える。とりわけ前回月の2016年4月分では全年齢階層でプラスの値を示しており、とりわけ大きく伸びたのが確認できる。直近月では前回月比ではマイナスなものの、前年同月比ではほとんどがプラスで、この直近トレンドが継続中であることは一目瞭然。

「単に1年単位で上げ下げを繰り返しているだけ。前年同月がマイナスならば反動のためにプラスを示すのは当然」と読めるかもしれないが、それならば増加トレンドと減少トレンドの期間は1年きっかりにならねばいけない。しかし実際にはずれが多分に生じている。さらに下げトレンドの時の下げ具合と上昇トレンドの時の下げ具合では、明らかに前者の方が大きいため、単なる反動では説明がつかない。

このうねりの中で、長期的には聴取率は減退のさなかにあると見るべきかもしれない。次回調査以降の動向でそれが立証できるのか、計測を続けたいところだ。


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