「確信犯」の本来の意味知ってます? 慣用句などの認識度合い

2016/10/18 11:41

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慣用句とは何らかの由来で生まれた、組み合わされた言葉そのものの直接的な意味とは別の内容を持つ言い回しで、習慣的なものとして使われる場合が多い。例えば大変に面白く、大笑いするような状態を「あごが外れる」と表現するが、本当にあごが外れてしまった状態は意味しない(まれに本当に面白くて大笑いし、外れてしまうことはあるが)。この慣用句などの利用実情、正しい意味で認識されているか否かについて、今回はいくつかの言い回しに関し、文化庁が2016年9月21日に発表した「平成27年度 国語に関する世論調査」の概要から、確認していくことにする(【発表リリース:平成27年度「国語に関する世論調査」の結果について】)。


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今調査の調査要綱は先行記事【配達の人に対する感謝の意、どんな言葉をあなたはかけるか】を参照のこと。

次に示すのは4つの慣用句「奇特」「確信犯」「琴線に触れる」「名前負け」について、二つの意味(うち一つは本来の意味)を提示し、そのいずれの意味と思っているか、それとも双方の意味だと認識しているか、あるいはそのいずれでもないと覚えているか、さらには分からないかのいずれかで答えてもらったもの。グラフ上では本来の意味の選択肢の棒を赤で着色し、回答項目部分の背景色を変えている。

↑ 慣用句などの使い方について(2015年度)
↑ 慣用句などの使い方について(2015年度)

4つの慣用句の中では一番誤用…というよりは本来とは異なる使われ方をしていることで知られている「確信犯」では、実に7割近い人が別の意味「悪い事と分かっていながら成される行為など」として用いている。本来の「政治や宗教などの信念に基づき正しいと信じて成される行為など」の選択者は2割にも満たない。両方を利用する人、両方とも使わず別の意味で用いる人もごく少数で、「確信犯」はすでに本来の意味合いでは無い方の意味での利用が主流となっている。

他の慣用句はいずれも本来の意味の方が利用率は高い。ただし「琴線に触れる」は本来の意味「感動や共鳴を与える」が38.8%なのに対し、別の意味「怒りを買ってしまう」は31.2%を計上しており、随分と肉薄している。他方「名前負け」は本来の意味「名前が立派で中身が追いつかない」が8割強と圧倒的多数を示している。

これを各用語の2つの選択肢、「本来の意味」と「別の意味(≒世間一般に使われる事がある意味)」に関する回答率を、年齢階層別で見たのが次以降のグラフ。青棒は本来の意味、赤棒は別の意味で統一してある。

↑ 「奇特」の意味の回答率(2015年度、年齢階層別、一部)
↑ 「奇特」の意味の回答率(2015年度、年齢階層別、一部)

30代までは本来とは別の意味「奇妙で珍しい」の方が優勢で、歳と共に値を減らし、本来の意味「優れて他と違って感心」が増え、40代で逆転する。若年層を中心に、本来の方では無い意味合いの使われ方が浸透しているようだ。世代が離れた間柄でこの言葉を用いると、意思の齟齬が生じそうではある。

↑ 「確信犯」の意味の回答率(2015年度、年齢階層別、一部)
↑ 「確信犯」の意味の回答率(2015年度、年齢階層別、一部)

今回取り上げた慣用句の中では唯一、本来とは別の意味の方が利用率が高いものだが、60代以上でやや低めの値が出ているものの、すべての年齢階層で本来の方では無い意味「悪い事と分かっていながら成される行為など」を多用している。40代では実に8割近い値を計上している。実質的に意味合いに関して、入れ替えが起きているような状態。

↑ 「琴線に触れる」の意味の回答率(2015年度、年齢階層別、一部)
↑ 「琴線に触れる」の意味の回答率(2015年度、年齢階層別、一部)

16-19歳では本来とは別の意味が主流となっているが、20代以上は本来の意味の方が回答率は高い。とはいえその差は大きくても10%ポイント程度なので、同年齢階層間でも意思の齟齬が生じる可能性はある。

↑ 「名前負け」の意味の回答率(2015年度、年齢階層別、一部)
↑ 「名前負け」の意味の回答率(2015年度、年齢階層別、一部)

最後は本来の意味で使う人が圧倒的多数の「名前負け」。16-19歳で多少本来以外の意味を使う人の回答率が高めなものの、大よそ1割前後。8割から9割は本来の意味を用いている。



今回の4つの言い回しで、本来の意味の選択肢を「正しい意味」、別の意味(≒世間一般に使われる事が多々ある意味)を「間違った意味」としなかったのは、専門用語や明確な定義が成されていない慣用句の場合、時代の流れ、利用状況によって、本来とは異なる意味もまた、利用しても問題ないものと認識されることが多々あるからに他ならない。いわば言葉の進化、変化とでも呼ぶべきか。「確信犯」が好例である。

その「確信犯」についてだが、今回公開された資料では、13年前の2002年度で同様の調査が行われた際の結果が併記してある。

↑ 慣用句などの使い方について(「確信犯」)
↑ 慣用句などの使い方について(「確信犯」)

10年強の時代の流れの中で、本来でない使い方の方がより多くの人に浸透したようではある。

他方、今回挙げたものの中では、例えば「奇特」のように、年齢階層などの属性別で解釈の多数派が異なる慣用句も少なくない。意思疎通をする際にその言葉を用いると、誤解釈が生じる可能性がある。十分に注意してほしいものだ。


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