4マスは高安まちまち、ネットは両社とも堅調(電通・博報堂売上:2016年7月分)

2016/08/10 05:00

博報堂DYホールディングスは2016年8月9日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2016年7月分の売上高速報を公開した。一方、電通も同年8月5日付で、同じく同社7月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2016年7月次の売上データが一般公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去の公開値などを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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4マスはラジオが不調で他はまちまち、ネットの好調さは両社とも


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらで確認のこと。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2016年7月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2016年7月分種目別売上高前年同月比

4大従来型メディアと当サイトでは命名している(かつては4大既存メディアと表記)昔ながらの主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、今回月はラジオは両社ともマイナス、テレビは電通がプラスで博報堂はマイナス。紙媒体では新聞・雑誌とも電通がマイナスで博報堂がプラスとなった。特に電通は新聞・雑誌ともに1割を超える減退ぶりで、前年同月も新聞では1割超えの下落を示しており、反動による底上げ効果があったにも関わらずこの結果が出たことから、多分の危機感を覚えるものがある。

その電通では3か月連続で紙媒体の新聞と雑誌双方のマイナスが出たことになる。インターネットなどにいくぶんのコンテンツの移行がなされているとはいえ、紙媒体離れが確実に進んでいるように見える。ちなみに1年前の2015年7月では電通の新聞項目は前年同月比でマイナス15.5%、2年前同月比を試算するとマイナス25.4%。2年間で売上の1/4が削れたことになる。雑誌の2年前同月比はマイナス18.3%と2割近く。あまりよろしい状況では無い。

テレビは電通がプラス2.1%、博報堂はマイナス6.1%。電通の合計における下げ幅が紙媒体の不調にも関わらず最小限に留まっているのは、テレビの健闘によるところが大きい。

インターネットは電通・博報堂共にプラスで両社とも2割超え、博報堂に限れば4割強もの上昇(前月から継続)。博報堂の前年同月における値はプラス19.6%で、今回月は反動による躍進ではなく、純粋な売上の向上による結果なのが分かる。この傾向は数か月継続した動きで、両社の同分野における成長ぶりがうかがえる。

従来型広告は一部をのぞけば博報堂が大よそ堅調、電通は高安まちまち。ただし電通の「その他」は前年の反動によるところが大きい(前年同月ではマイナス69.1%だった。2年前同月比を試算するとマイナス65.5%となる)。

これらの動きを見るに昨今の広告業界に関する不調感については、業界全般では無く、4マスの不調と表現した方が適切な感はある。昨今ではテレビはいくぶん上下感があり、ラジオもそれなりに健闘の動きを示していることから(今回月は両社ともマイナスだったが)、とりわけ紙媒体の不調と見るべきかもしれないが。

電通に限るが2年前比を試算すると次の通り。

↑ 参考:電通2016年7月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2016年7月度単体売上(前々年同月比)

4マスはすべてマイナス、特に紙媒体の下げ幅が大きい。他方インタラクティブメディア(インターネット)の伸び方が抜きんでている形となっている。「その他」の下げが大きいのは、事実上FIFAワールドカップによる特需での大盛り上がりとの比較となるため。

各年7月における電通の売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月となる7月を基準にした毎年7月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を有し、売り上げに大きく影響を与える事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。あくまでも電通だけの話だが、大いに参考になる(今回月は上記の通り、2年前にFIFAワールドカップの特需が発生しているため、その影響が出てしまっているが)。

↑ 電通月次売上総額推移(各年7月、億円)(-2016年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年7月、億円)(-2016年)

大よそではあるが景況感を反映した値動きを示している。ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。7月に限定すれば上記の通り2013年までの復調に加え、2014年はFIFAワールドカップで大いに盛り上がり金融危機以前を超える額面を計上。翌年以降は正常化している……が、直近の2016年は前年よりも失速し、同社の足踏み感を覚えさせる流れとなっている。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱い領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している(もちろん日本には両社以外にも多数の代理店が存在する)。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記していることもあり、その値が両社の売上と誤解される場合がある。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2016年7月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2016年7月における部門別売上高(億円)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を計上しているものの、売上金額=市場規模としては他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マス以外の従来型広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。電通、博報堂共に、各社の全売り上げの4割から5割もの額面を示している。

一方電通と博報堂間では、全項目で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、ラジオのようにほとんど変わらない部門もあれば、テレビのように大きな差を示す部門もある。

「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」の仕切りそのものの問題も多分にある。メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となると考えられ、年々「その他」に該当する項目が増えてしまい、金額も積み増しされてしまう。

この「その他」の区分内容の膨張問題は、経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。他項目も含めた再統合では調査データの連続性が失われてしまうため、「その他」の内部における仕切り分けの追加を求めたいところではある。もっとも電通に限ってもこの項目は「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツなどの業務」とあり、2分割や3分割程度の細分化は難しいのも事実。さらに細分化されると、電通と博報堂両社における共通性が無くなる可能性もあり、(両社それぞれにおいては何の問題もないのだが)比較する点では問題を抱えることになる。



今回分の2016年7月分は2年前のFIFAワールドカップの影響が今なおあちこちで表れていたのが目に留まるが、それを除いても電通の不調さがそこかしこに見受けられ、やや不安を覚える結果だったといえる。最初のグラフを見返せば分かる通り、青棒(電通)のマイナス領域側が多い。プラスはテレビとインターネット、その他のみである。それらの額面が大きいため、合計のマイナス幅が1.0%に留まっているのが幸い。

そして電通の最近の動向を再確認すると、やはり全体としての4マスの今一つ感は否めない。経産省の広告費動向でも同様の、2015年初頭以降の弱い動きが確認されており、気になる動きではある。テレビはプラマイゼロ領域をふらふらとしたまま。新聞と雑誌は低迷感が継続中。

↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)
↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)

新聞は2015年に入ってから前年同月比でプラスの月が無く、雑誌も2015年4月の一か月に限られる。電通や博報堂に限らず広告業界全体で、小さからぬ、そして以前から指摘されていた、媒体に係わるムーブメントが起きている、加速化しているのかもしれない。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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