現状上昇、先行きも大きく上昇へ…2016年7月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇

2016/08/09 15:00

内閣府は2016年8月8日付で2016年7月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇して45.1を計上したが、水準値の50.0を下回る状態は継続する結果となった。先行き判断DIは先月比で上昇して47.1となったが、こちらも水準値の50を割る状態が続いている。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は欧州情勢の混迷化を受けた先月からの回復感もあり「景気は、金融資本市場が落ち着きを取り戻す中、持ち直しの兆しがみられる。先行きについては、引き続き海外経済や金融資本市場の動向等への懸念がある一方、経済対策への期待がみられる」となり、時間の経過とともに落ち着きを見せ始めた市場動向に合わせ、持ち直しを示しつつある実情がうかがえるコメントが示されている(【平成28年7月調査(平成28年8月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2016年7月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス3.9ポイントの45.1。
 →「良くなっている」「やや良くなっている」「変わらない」が増加。「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。
 →詳細項目は「住宅関連」のみマイナス0.1ポイント。それ以外はすべてプラスで上げ幅が3ポイントから4ポイントと大きめ。水準値の50.0を超えた項目は前月から続き皆無。

・先行き判断DIは先月比でプラス5.6ポイントの47.1。
 →「やや良くなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。
 →全項目で増加。「サービス関連」以外は5ポイント以上の増加。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。ただしここ数か月は原油価格も再びじわりと値を上げており、それに伴いガソリン価格も上昇の兆しを見せていた。

前回月となる6月分では、6月23日にイギリスで行われた国民投票で、同国のEU離脱を望む意見が多数となり、離脱に向けた各方面の動きが活発化したことで、これを受けた影響が多角的に、大よそ日本にとってはマイナスの方向で生じた。この動きが対外輸出入をはじめとした経済、消費マインドにネガティブな影響を与えるものとして、大きな懸念が生じ、さらにそれをきっかけに大きく円高に為替が動き、株価も下落、景況感は現状・先行き共に大きな下落を示した。

今回月は先月時のパニック的な混乱も鎮静化し、円高はまだ続いているものの、市場も人心も混乱から回復の動きを見せ、復調の動きを示すこととなった。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、先月の急落から大よそ下落分は回復、現状に関してはここ数か月間の下落分すら取り戻すほどの上昇ぶりを示している。

水準値超えは現状ゼロ、先行きもゼロ


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2016年7月)
↑ 景気の現状判断DI(-2016年7月)

消費税率改定からはすでに2年以上が経過したが、それによってもたらされた消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させる材料が見当たらず、低迷感は継続。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いていると判断できる。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。昨今では為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほどである。そしてここ数か月に限れば原油価格は底打ち感から上昇の機運を見せていた。それに伴い原油関連企業の状況は一息ついた感はあるが、今度はガソリン価格の上昇を受け、運輸関連を中心に懸念が高まりつつある。

他方、上記にもある通り、国民投票を受けてイギリスのEU離脱問題やそれに絡んだ同国、さらにはEU全体の政治的混乱が多方面に波及し、原油価格もやや下落に転じ、為替は大きく円高に振れ、株価もリスク回避の流れを受けて売り込まれて下落。それらの要素はほぼすべて、日本にとってはマイナスの要因として降りかかり、消費者の消費マインド、企業の業務見通しに大きな影を差した。今回月では原油価格の下落と円高は続いているが、直接の不安感はほぼ復調し、あとは為替と原油価格の回復を待つ状態となっている。

今回月の現状判断DIは住宅関連以外の全項目でプラス。上げ幅は3ポイントから4ポイントと押し並べてそこそこな上昇ぶり。住宅関連の下げ幅もわずか0.1ポイントで誤差の範囲。景況感の回復、安心感の浸透がほぼすべての界隈に浸透したことを表している。

景気の先行き判断DIは現状と比べるとさらに回復感が強く、全項目で上げ。しかも上昇幅は現状DIよりもはるかに大きい。前月の下げ方が急だっただけに、その反動も大きいものがある。

↑ 景気の先行き判断DI(-2016年7月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2016年7月)

最大の上げ幅を示したのは製造器用のプラス7.2ポイント。ほぼ同数で飲食関連がプラス7.1ポイント。すべてが5ポイント以上の上昇を示している。ただし今回の上昇でも水準値の50.0を超えている項目はまだ皆無で、もう少し大きな勢いの上昇が望まれるところではある。為替がもう少し円安に動けば、企業動向関連は容易に超えそうな感もあるのだが。

為替と市場の回復、そして補正予算待ち、猛暑はポジティブに


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・クリアランスセールが1日に一斉に始まったこともあり、上旬からセール品を中心に好調に推移している。今年は天候にも恵まれ、早めに立ち上がった晩夏物や初秋物の定価商品も、堅調に推移している(百貨店)。
・募集ものの海外旅行の申込が、予想より多く集客できている(旅行代理店)。
・熊本地震以降激減した客が夏季休暇に入ったことで戻り始めたので、風評被害は回復しつつある(観光名所) 。
・前年より来客数が改善し、売上も伸びているのは猛暑の影響で、一時的なものだ。景気回復ではないと考える(コンビニ)。
・高額品の売行きが鈍化している。原因の一つに株安による逆資産効果で富裕層の買い控えが進行していることがあり、特に、高級時計などに顕著に影響が出ている。もう一つは、円高によるインバウンド消費の鈍化である。外国人旅行客の購入は増加しているものの、単価が低下しているため、結果として売上はマイナスとなっている(百貨店)。

■先行き
・欧州の政情不安が一段落し、株価が戻ってきたほか、政府の経済対策が決定することにより、消費マインドが幾分回復してくる(百貨店)。
・2-3か月後は旅行業界にとっては、秋の旅行シーズンである。国内は順調だと思うが、海外がやはり団体を中心に伸び悩んでいるため、国内へのシフトが一層進む。そのため、多少は国内旅行のお陰で良くなる(旅行代理店)。
・夏休みまで熊本地震特需によるプラス効果が期待できそうであるが、9月以降は風評被害も沈静化され、ある程度現状維持が見込めそうである。しかし、世界経済の悪化による影響については想定できない(百貨店)。
・競合店と同様に、来客数を伸ばす観点から値引きやプレゼントなどの集客施策が増えてきている。そうした施策が景気回復につながるとは思えない(自動車備品販売店)。
・円高傾向や先行きに対する不安から消費を控えるなど、前年とは一転し、全体的に前年を下回る予想となっている。法人、個人共に動きが鈍く、客単価の上がらない状況が続いており、景気が上向くとは期待できない(都市型ホテル)。

先の熊本地震は風評被害も含めてほぼネガティブな影響は無くなり、回復のための施策や基調がポジティブな面を生み出しつつある。また夏らしい気象状況を受けて消費が堅調化しているとの指摘もある(景況感の回復で無いとの指摘もあるが、気象状況による需要の上下は、多分に景況感そのものに影響を与える)。また、先月大きな心理的影響を与えたイギリス事案は、それ自身はほぼ終息したものの、置き土産的な株価低迷と円高基調は、浅からぬ傷跡を残していることも分かる。

一部専門家界隈からは疫病神的扱いをされている低金利・マイナス金利だが、住宅関連を中心にポジティブな意見も見受けられる。庶民感覚との表現は陳腐に過ぎるが、一般的な需要には福の神的な存在のようだ。また建設業関連ではポジティブな意見が多々見受けられるが、補正予算への期待の声も大きい。

他方、同じ業界からの意見でも大きく伸張をしたとの意見がある一方で、厳しいとの意見も少なくないケースも見受けられる。業界内でも時節の波に乗れた企業と、そうでない企業の差異が出てきているようだ。

なお4月分・5月分では熊本地震に特化したコメントの集約が掲載されていたが、今回月では6月分に続きその項目が無い。各コメントには言及しているものもあるが(重複合わせて9件)、先月ほどの量、率では無くなったとの判断によるものだろう。それだけ状況が鎮静化した証ではある。



今年の動向を振り返ると、原油価格の低迷に伴う関連企業の業績悪化懸念、そして中国経済・株式市場の急落、世界規模の市場下落、さらには為替の円高化、来年に迫った消費税率引上げにより、景況感は大きな減退を経験していた。

その後消費税率の引き上げ延期はなされたが、原油価格はじわりと上がり、さらに4月の熊本地震、そして6月のイギリスのEU離脱への動きにより、為替と共に株価は大きく下落し、経済的な見通しもかなり怪しげな雲行きとなったことは否めない。今回月ではイギリスの動向そのものへの不安感は薄らいだものの、株価の低迷と円高は続いており、これが多分に景況感の足を引っ張っている感は強い。気象予想通り今夏は猛暑となり、季節物商品の売上には大きな貢献がなされているが、それだけで他の要因をすべてカバーできるはずもない。

多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。昨今では可処分所得を削り取る大きな要素となる社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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