全社プラス継続中…牛丼御三家売上:2016年7月分

2016/08/06 05:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2016年8月5日、吉野家における2016年7月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その内容によると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でプラス2.3%となった。これは先月から続く形で、4か月連続のプラスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業の状況を確認すると、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年7月における売上前年同月比はプラス7.3%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はプラス8.4%との値が発表された。今回月は3社とも前年同月比でプラスの売上を計上することとなった(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通り。特記事項が無い限り既存店(1年前に存在していた店のみの値を集計したもの)の動向を記していることに注意。

↑ 牛丼御三家2016年7月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2016年7月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2015年7月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はプラス16.2%。同社では【吉野家の牛丼、300円から380円へ値上げ・12月17日15時から】にある通り、2014年12月17日から主力商品の牛丼価格をはじめ各種商品価格の引き上げを実施しているため、これ以降は客数の減少と客単価の増加が直接的な影響要因として計上されている。

結果として2015年7月は客数マイナス11.3%・客単価プラス16.2%、売上高プラス3.0%と、客単価の上昇で客数の減退を吸収し、売上をプラスにけん引した状態となっている。今回月はこれらの値との比較となるため、客数はプラス、客単価はマイナスの反動による補正が加わる状況下での結果となる。

さらには【吉野家の豚丼が1000万食突破したとのお話】にある通り、2016年4月6日から復刻発売を開始した豚丼が大いにセールスを伸ばしており、客単価はマイナス・客数はプラスの状態に拍車をかける状況となっている。一方、今回月では前月末から発売となった「ねぎ塩豚丼・ねぎ塩牛カルビ丼」が客単価を底上げ、また7月20日から導入を開始した「デジタルボトルキープ」が吉呑みにおける飲料関係の売上を伸ばす一因となっている(具体的にどれほどの効果があるかは未知数だが)。

これらの補正や環境変化があった結果、客数は3.5%の増加となり、客単価は1.1%の減少を示す形となった。売上高は差し引きでプラス。3社中では一番小さな上げ幅だが、プラスには違いない。

今回月の吉野家の業績にも少なからぬ影響を与えた復刻版の豚丼だが、販売価格も以前の展開時と同じ水準とし、同社のこれまでの「客単価引上げ戦略」とは様相を異なる切り口であることがうかがえる。冬場のけん引役であった鍋定食シリーズの動きが今一つだったことなど、客数の減り方が吉野家側の想定以上で、その状況への対応策が豚丼の復活だったようだ(今年は「ベジ丼」はあるものの「牛バラ野菜焼き」のような鍋応用系定食は現時点で未発売)。

ねぎ塩牛カルビ丼もっとも上記の通り、今回月では定番の「ねぎ塩豚丼・ねぎ塩牛カルビ丼」をこれまでの価格帯で展開しており、いくぶんの安心感を覚えさせる。また【吉野家の夏の定番麦とろ御膳、今年もがっつり登場するよ】にもある通り、夏の定番となる「麦とろ御膳」の発売を開始しており、こちらもこれまで通りの戦略に沿った商品展開と読める。

昨今では各社とも客単価と客数が大きく動く施策(メニュー全体の価格引上げなど)が相次いでいることもあり、反動による前年同月比の変化の影響が多分に生じている。その影響を最小化するために、前々年同月比を試算したのが次のグラフ。2年に渡った変化率であることから、ここから年平均を求めるにはルート換算をすれば良い。例えば吉野家なら、2年前同月比の売上から年平均を試算すると2.7%のプラスとなる。

↑ 牛丼御三家2016年7月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2016年7月営業成績(既存店)(前々年同月比)

前年同月比だけでなく、前々年同月比で見ても、2度に渡る主力商品の相次ぐ値上げをして突出している吉野家だけでなく、3社が客単価の引上げにより客数の減退を補い(あるいは客数減退を覚悟しても客単価の引き上げを模索し)、売上を維持している様子が把握できる。

結果としてこのような状況になったのか、あるいは意図してのものなのかは(当然未公開のため)確認はできないが、明らかに施策としてのかじ取りの転換がなされているのが数字からも確認できる(その観点で、松屋が客数をほとんど落としていないのは奇跡に近い)。

続いて松屋。前回月では創業50周年記念でワンコインキャンペーンの大展開を行った同社だが、今回月では7月5日に「茄子と豆腐と粗挽き肉の四川風麻婆定食」、19日に「山形だし牛めし」、26日に「スタミナ肉野菜炒め」と、いつものペースに戻った形で続々と新商品の展開を行っている。また、牛丼チェーン店の店舗数動向で詳細を解説している、揚げ物系系列店となる「松のや・松乃家・チキン亭」の専用ウェブサイトを立ち上げ、松屋がいよいよ本格的にこの分野にも展開を始めるとの意気込みを感じ取ることができる(今記事では揚げ物系の店舗によるものも含めた上での売上高などの精査となる。単独の値は未公開)。

結果として7月の業績は、客単価が1.6%とプラスを維持、客数は5.7%と大きなプラス、売上は7.3%と堅調な結果を計上している。客単価も客数も大きなぶれが無く、一歩ずつ確実に業績を積み増ししていく、質実剛健的な同社の姿勢が見える形となっている。2年前同月比では客数の減退幅が3社で一番小さく、客単価の上げ幅も大人しく、結果として売り上げの上昇幅はトップについている。

最後にすき家。牛丼がメインのためにあまり知られていないが、吉野家・松屋同様すき家でもカレーが定番メニューとして販売されている。そのトッピングとして夏野菜のナスとアスパラが加わることになった。また前月末からニンニクの芽牛丼なども導入されており、野菜系のプッシュが多分になされている。

結果として客単価は3社中で一番プラス幅の大きい2.0%プラス、客数も6.3%と3社中最大、そして売上も8.4%のプラスと大健闘の形となった。前々年同月比では松屋に抜かれているものの、5.5%のプラスを計上しており、それなりに良い業績が出たことになる。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2016年7月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2016年7月)

売上高の中期的動向としては、ここ数年に限れば、すき家の人員不足騒動や吉野家の鍋旋風でそれぞれぶれが生じているが、それ以外は大よそ横ばいに推移している。少なくとも震災前のような大幅な上下感は確認できない。

他方、直近で2015年8月とその前年2014年11月に起きている吉野家の売上における跳ね上がりは、新商品の導入に伴う客単価の大きな底上げによるもの。逐次インパクトのある商品投入で、業績に活力を与えるのがここ数年の吉野家の施策とも読める。その反動も合わせ、昨今では吉野家のみが大きな揺れ動きをしているようにも見える。

ただしこの数か月に限定すると、3社とも比較的堅調な動きにシフトしている。これまでにはあまり無かった現象で、今後もこの流れが続くのか、注目したいところではある。

客数の減少・客単価の増加は戦略転換によるものに違いなく


次に示すのは各社の客数動向。先の消費税率改定に伴い各社とも(規模、タイミングこそ違えど)メインとなる牛丼・牛めしをはじめ各商品の価格引き上げを実施しているが、それからすでに1年以上が経過しているため、消費税率改定による客数減退の影響は消え去り、むしろ前年同月比動向ならば反動で底上げ効果が生じてもおかしくないが(イベントによる減退が生じた場合、次年はそのイベントの影響が無くなっているため、特異的に減少した値との比較によって大きなプラスが生じ得る)、相変わらずマイナス値のままで低迷した状態が続いていた。2015年10月に松屋とすき家で客数が大きく跳ねたのは、牛めし・牛丼の期間限定の値引きによるところが大きい。案の定、その影響が無くなった翌月の2015年11月では、客数はこれまでの動向同様に低迷する形に戻ってしまった(松屋の客数減退が小さめなのは、客単価の引上げ度合いが小さい結果)。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2016年7月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2016年7月)

客数が前年同月比でプラスに戻り始めたのは、吉野家が2016年2月から(3月には一時凹んだが)、松屋が2015年10月からとなっている。他方すき家は2016年に入ってから1月に一度プラス化したものの、5月までは再び連続したマイナス、そしてようやく6月からはプラス圏での値動きとなった。上で記した売上高が最近3社とも堅調なのは、多分にこの客数のプラス化が貢献しており、まさに客足の増加で3社とも足をそろえる形での売上高プラス圏の動きを見せている次第。

他方、中期的な流れを見ると、単純な前年同月比だけでなく、2年前同月比の試算結果でも、各社とも規模、結果に違いがあれど、客単価増・客数減となる方向性を示していた。客数だけを見ればゼロ以下の薄いオレンジ色の領域にある機会が多かったことから「低迷していた」との判断に至るが、売上は横ばい、客単価は上昇との情報を合わせると、新たな側面、具体的には客数と客単価における新たなバランスへのシフトの動きも見えてくる。ここ数か月の客数の堅調さ、売上の底上げは、しばらく続いていた客数と客単価におけるリバランスが終わりを見せてきたことを意味するのだろう。

卵が先か鶏が先かの問題に近いものだが、震災以降顕著化している消費者の消費性向の変化に伴う、廉価スタイルの外食産業全般からの客足の遠のきに対し、各社とも価格面で一歩上のステージに上がることにより、時代の変化に対応しようとしている。これまで同様に廉価外食店の様式では客数が減るばかりで、客単価がそのまま維持されたのでは、当然厳しさを増してくる。ならば客数の減少が一時的に加速化しようとも、営業様式の格付けをアップし、売上の点で帳尻を合わせようとするものである。逆に品質の高いブランド化が成されれば、新規層の開拓につながる可能性もある。

客単価の引き上げで客数の減りをカバーして売上、利益を維持する場合、これまでの「薄利多売」と比べて客数が減った時の売上の減退リスクは大きくなる(同じ人数が減った時の、売上の減少額が大きくなる)。しかし店員の接客時における負担は軽減される。間接的にサービスの品質向上も期待できる。商品在庫のリスクや物流コストも圧縮されうる。

類似業界として良く比較されるハンバーガーチェーン店では、方向性の確定に苦慮しているマクドナルドが苦戦を強いられる一方、モスバーガーやケンタッキー・フライド・チキンでは高単価・高品質をさらに前面に押し立てるだけでなく、独自ブランドをより個性豊かなものとして、売上を維持している。

リバランスが済んだ兆しを覚えさせるここ数か月の動向は、同時に各社が次なる施策を踏み出すタイミングであることを意味している。元々ある程度の呑み需要をカバーしていた松屋、大規模な施策の実施と今回月から始めたボトルキープアプリのように積極展開姿勢を示す吉野家、そして呑み形態の実証実験が伝えられるすき家の動向を見るに、次なる施策は就業者を中心とした夕方以降の呑み需要への対応にあるのかもしれない。


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