「アリ」「キリギリス」どちらを選ぶ? 全体では3対6だが…(2015年)

2015/08/30 13:00

内閣府は2015年8月24日、「国民生活に関する世論調査」の最新版となる2015年度版の結果を発表した。それによると、今後の生活において「将来に備える」「毎日の生活を充実させて楽しむ」どちらに力を入れたいかを尋ねたところ、全体では「備え派」が約3割強、「楽しむ派」がほぼ6割との結果が出た。男女別で見ても大よそ同率の結果が出ているものの、世代別では40代までは「備え派」が優勢、50代で「楽しむ派」が逆転し、それ以降は「楽しむ派」が急速に増える傾向を示している(【発表リリース:国民生活に関する世論調査】)。

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調査要件などは先行記事【政府への要望、社会保障に景気対策】を参考のこと。

今後の生活におけるスタンスとして、「貯蓄や投資など将来に備える」「毎日の生活を充実させて楽しむ」どちらに力を入れたいか、例えるならば童話の「アリとキリギリス」でアリ的ライフスタイルとキリギリス的価値観のどちらを選ぶかについて尋ねたところ、全体では「将来に備える」が34.3%、「毎日の生活を充実させて楽しむ」が58.5%となり、2倍近くの差をつけて「楽しむ派」の回答が多い結果となった。

↑ 将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか(2015年)
↑ 将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか(2015年)

男女別ではほとんど差異が無いことから、「備え」か「楽しむ」の観点では男女の違いは無いと判断できる。それでも強いて言えばやや女性の方が「楽しむ」派が多い。事実上誤差の範囲ではあるが、昨年の調査結果でも同じ傾向が確認できたため、単純に誤差とも言い切れない。

一方世代別で見ると、大きな違いが見えてくる。

↑ 将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか(世代別)(2015年)
↑ 将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか(世代別)(2015年)

40代まではほぼ同じ傾向で、「備え派」が5割強から6割近く・「楽しむ派」が4割となり、「備え派」が優勢。そして50代で両選択肢の値が一挙に逆転し、あとは「備え派」が加速度的に減っていく。生存可能余年や手持ちの財力を考えれば、当然の結果ではある。見方を変えれば40代までは、主に金銭面で(将来のための蓄財も合わせ)首が回らない状態で、日々の生活を楽しむまでの余力を得るに至っていない人が多いことが推測できる。

今調査結果は国勢調査などの結果を元にしたウェイトバックは行われていないが、調査対象は層化2段無作為抽出法で選択されており、社会の実情をほぼ反映した世代別人口比で選択がなされる。さらに回収率は高齢層ほど高めとなることから、現在の社会的側面も反映した上での人口構造に近い値を示している(つまり回答率が他の社会行動や意思表明、例えば選挙と同様に若年層ほど対応率が低いため、余計に「高齢者の意見が大いに反映される」との結果が出る)。しかし一方で、最初のグラフの全体値だけを見て「世間一般は皆、将来への備えよりも、日々の生活を楽しむことに重点を置いている」と認識するのも、少々実態とは異なる感は否めない。

そこで過去の調査結果からの経年データについて、世代別に精査したものを次に挙げておく。これは「楽しむ派」から「備え派」を引いたもので、いわば「楽しむ派」度を示す値。プラスならば「楽しむ派」が多く、マイナスならば「備え派」が多い。

↑ 将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか(世代別、調査回推移、「楽しむ」−「備える」の値)
↑ 将来に備えるか、毎日の生活を充実させて楽しむか(世代別、調査回推移、「楽しむ」−「備える」の値)

50代がほぼ全体平均周辺を行き来し、20代から40代は低迷、60代以降は高止まりを示している。全般的には直近の結果とさほど違いは無いものの、近年になるに連れて「高齢者はより『楽しむ派』に」「若年層はより『備える派』に」移行しているのが分かる。

特に景気後退感が著しさを見せた、直近の金融危機がぼっ発した2007年以降、若年層の懐事情が厳しくなってきた、将来に備えて一層と慎重な姿勢(「ありときりぎりす」における「あり」的行動)を見せるようになったと判断できる動きを示しているのは興味深い。さまざまな社会情勢の変化を敏感にとらえ、冷静に判断し、行動に移しているものと考えられる。さらにいえばこの2、3年、50代の値が急速に失速しており、青系統の若年層側に組み入る姿勢が見えているのも注目に値する。

概して昨今の「若者の●×離れ」の造語に代表される、主に団塊世代前後が用いる「若年層はお金を使わない」は、今件の値が裏付けしていると見ても良い。可処分所得の減少に加えて「日々を楽しむために消費するよりも、将来に備える傾向が強まったため」、上の世代からは「お金を使わなくなった」と見られるのだろう。

社会全体として、特に「楽しむ」派は、なぜ若年層の「備える」派が増えているのかを真剣に考え、その対策を打つ必要があるのではないだろうか。


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