EU最大の懸念事項は経済や失業、公的債務よりも移民問題、58%が懸念を表明(2016年)

2016/04/01 13:00

欧州連合欧州委員会(European Commission)は2015年12月、同会が毎年2回定点観測的に行っているEU全体における世論調査「Standard Eurobarometer」の最新版となる第84回分を発表した。それによると、現在EU全体の最大の懸念として上げられたのは移民問題で、全体の58%が懸念を表明していた。テロ、経済状況、失業がそれに続いている。移民問題の懸念の高まりは昨今急激な上昇を示しており、EU全体の課題として市民ベースでも大きな注目を集めていることが改めて実証される形となった(【発表リリース:Standard Eurobarometer 84】)。

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「Standard Eurobarometer」は毎年2回、5月と11月に行われており、今回が84回目となる。今調査の直近分は2015年11月7日から17日にかけて直接面談のインタビュー方式でEU加盟国及び候補国内において行われたもので、回答者数は合計で3万1819人、EU28か国に限定すると2万7681人。

2015年以降外電でたびたび伝えられている通り、欧州諸国の経済問題が最悪期を脱したように見えたことや、中東情勢問題の悪化を受け、EU諸国への移民(難民)問題が大きな社会問題化している。船を使い、あるいは陸続きで、より経済的に安定していると思われるドイツ、さらには英仏海峡トンネルを越えてイギリスに向かう人たちは後を絶たず、海峡トンネルでは警備の強化が成されるほど。また、対応しきれない一部の国では国境線の封鎖措置も成され、これに伴う衝突も起きている。さらに各国の移民・難民による犯罪行為や地元民との衝突なども多々生じており、情勢はお世辞にも良いとはいえない。当然各国国民の心理に与える影響は小さからぬものがある。

また、中東情勢に浅からぬ関係を持つ状況変化に伴い、テロ事案が繰り返しEU圏内で生じていることを受け、移民・難民問題との関連も合わせ、これもまたEU諸国内における国民の心境に大きな影響を与えている。

このような状況の中で調査対象母集団に対し、EU全体における大きな懸念事項は何かについて、選択肢の中から二つ選んでもらった結果が次のグラフ。変化が良くわかるように、過去4回分も合わせ都合5回分の動向をまとめている(順位は直近分の回答値順)。

↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つ選択)
↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つ選択)

↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つ選択)(2015年11月)
↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つ選択)(2015年11月)

回答個数無制限の複数回答では無いため、それぞれの項目の値は多分に相対的な動きを示すことになるが、経済状況や失業、公的債務といった、数年前までEU全体で問題視され、世界経済にも大きな影響を及ぼしていた問題への懸念は低下。その他経済関連の値も概して鎮静化、つまり懸念する状況からは外れつつある。インフレ・物価高の値も漸減している。

それに連れ、相対的に、あるいは経済的な復興感に引き寄せられる形なのか、移民問題への懸念が急激に上昇していることが分かる。また同時に、テロ問題への懸念も高まりつつあり、両者の問題の連動性も覚えさせる。単なる犯罪項目にはほとんど変化がないことから、単純な治安の悪化では無く、対外組織、あるいは国際問題的な事案への不安が感じられる。

経済の回復に伴う移民、テロ問題の懸念増加の構造は、国単位の動向でも見て取れる。上記解説の通り、陸続きで経済的に豊かだと思われるドイツやイギリスに渡ろうとする移民の増加は、当事国においては大きな問題となっている。類似設問を回答者自身の国に関して尋ねた結果が次のグラフだが、そのドイツやイギリスでは移民問題がずば抜けて高い値を示している。

↑ 現在回答者自国における大きな懸念事項は(2つ選択)(2015年11月)
↑ 現在回答者自国における大きな懸念事項は(2つ選択)(2015年11月)

ドイツは2015年11月の調査の時点で移民問題に関してすでに76%の人が懸念を表明しているが、2015年の大晦日から2016年の正月に起きたケルンをはじめとする各地域での集団事案、そしてドイツ政府側の対応をかんがみると、次回調査時にはさらに数字が上昇する可能性は高い。

他方、EU先進国でも失業率の高さが問題視されているフランスでは失業問題への懸念が大きく、移民問題は次点。次いでテロへの不安が高い値を示している。ギリシャでも失業問題がトップ、次いで経済状況と続いているが、政府負債に対する不安も大きい。ただし今調査は11月時点のもので、今後さらに移民問題に関して数字が上乗せされる可能性は多分にある。

今後も加速度的な状況が継続するようであれば、EU側でも移民施策の大規模な方針変更が検討され、実施に移される可能性は十分にある。ただしそれはEUそのものの概念(シェンゲン協定など)の再検討にも抵触することになるため、大きな波紋を呼び起こすことは間違いあるまい。


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