「おそ松さん」特需がちらり…少女・女性向けコミック誌部数動向(2016年1月-3月)

2016/05/29 05:00

加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2016年5月25日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2016年1月から3月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは少女向けはちゃお、女性向けはBE・LOVEで変化ナシ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い世代、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。今四半期も前四半期同様、脱落・追加雑誌は無し。また改名・リニューアル誌も無い。一時期は改名、リニューアル、休刊が相次いだだけに、平穏無事なだけでも嬉しい話には違いない。

↑ 2015年10-12月期と最新データ(2016年1-3月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2015年10-12月期と最新データ(2016年1-3月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「別冊マーガレット」に2.7倍ほどの差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。今回計測期は大きな伸びを示しているが、これは元々同誌が毎年この四半期に大きく部数を底上げするのが原因。後述の通り、前年同月比ではマイナス値を計上している。とはいえ、前四半期で話題に登ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々が部数の底支えをしており、今回の上昇の要因となったことも事実。

第2位の「別冊マーガレット」と第3位の「りぼん」は僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそう。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「Sho-Comi」「なかよし」がほぼ同列で続き、その他諸々が後を追いかけている。前四半期と比べ各誌とも部数に大きな変化は無く、順位変動も見られない。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしくない雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 2015年10-12月期と最新データ(2016年1-3月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2015年10-12月期と最新データ(2016年1-3月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「YOU」「プチコミック」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けており、今四半期では「YOU」の大きな躍進で順位変動が生じる結果となった。

すでに前四半期の記事で解説しているが、「ザ・デザート」は【THEデザートについてのお知らせ】にもある通り、2015年10月10日発売の11月号をもって休刊するとの話が公式に発表され、すでに休刊してしまっている。さらに姉妹誌の「デザート」は、現在もなお紙媒体版が刊行中ではあるものの、合わせて部数公開データからは姿を消してしまった。何らかの配慮、あるいは施策の変化があったのかもしれないが、残念な話に違いない。結果として女性向けコミック誌からは、今四半期は2誌が姿を消す結果となった。

第1四半期はプラスが多め…四半期変移から見た直近動向


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年1-3月期、前期比)

プラス領域は「ちゃお」「Cheese!」「LaLa DX」「マーガレット」の4誌で、誤差領域を超えた5%超の雑誌は2誌。上記の「ちゃお」の部分で触れているが、少女向けコミックでは第1四半期(1-3月期)に1年のうちもっとも部数を増やす傾向がある。これは小学生向け学習誌と同じ傾向で、新学期の子供に向けた定期購入者(を検討する試し買いの人)による底上げが原因。

↑ ちゃおの部数推移(2016年1-3月期まで)
↑ ちゃおの部数推移(2016年1-3月期まで)

特にこの数年はその傾向が強く出ている。ただし中長期的に見れば、やはり下げ基調に違いは無い。

暫く前までは「健闘を示している」と評価したものの、前四半期では下げの動きに転じた「りぼん」だが、今回は前四半期比で部数は横ばい。

↑ りぼんの部数推移(2016年1-3月期まで)
↑ りぼんの部数推移(2016年1-3月期まで)

「りぼん」は「なかよし」「ちゃお」と並び小中学生向けの3大少女向けコミック雑誌。1955年8月に創刊し、すでに半世紀以上の歴史を有している。自分の母親も愛読者だったとの人も多分にいるはず。雑誌界隈の不況には勝てず部数を減らしているものの、上記グラフの通り、2011年後半期以降はほぼ20万部がキープされていた。固定ファンの多い執筆陣を抱えている、編集方針の大きな変化が無く読者が安心して定期購読できる、毎号魅力的な付録を提供するため、本誌の内容以外の部分でも読者のハートをつかんで離さない手堅いの施策が結果に表れていると評することができる。それゆえに、ここしばらくの間における下げ基調への転機とも読める動きには、少々不安を覚えるものがある。

今記事ではある理由で定期的なチェックをしているのが「別冊花とゆめ」。

↑ 別冊花とゆめの部数推移(2016年1-3月期まで)
↑ 別冊花とゆめの部数推移(2016年1-3月期まで)

美内すずえ氏の「ガラスの仮面」の再開に伴い部数の盛り上がりを見せたものの、ほどなく休載。そしてその後現在に至るまで連載再開には至っていない(2012年7月号分が最後の掲載。また単行本の第50巻も今なお「発売延期となりました。申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください」の説明がなされている)。他方面への展開はしばしば成されているものの、肝心の本編がいまだにストップしたままなのが現状。部数の下落も安定してきたことではあるし、そろそろ連載再開で掲載誌の発破をかけてほしいものではある。

続いて女性向けコミック。1誌が飛びぬけてプラス、それ以外はプラスマイナスゼロか、マイナスだが誤差領域内。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2016年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2016年1-3月期、前期比)

大きな上昇を見せたのは「YOU」。冒頭の部数比較でも「プチコミック」を抜き、順位を1つ上げたことからも分かるように、大きな飛躍に違いない。これは2016年2月号から掲載を開始した、漫画:シタラマサコ氏・原作:赤塚不二夫氏・監修:おそ松さん製作委員会によるオリジナルストーリーで展開する「おそ松さん」の連載開始によるところが大きい。ゲーム・アニメ専門誌では複数誌に特需を巻き起こした「おそ松さん」だが、本来一番ターゲット層としてはマッチング率が高いはずの女性向けコミック界隈では、「YOU」のみが恩恵を受けた形となる。

同誌による連載は極めて堅調のようで、次回対象となる四半期(現在進行期)では、「おそ松さん」が表紙となる号も登場し、関係界隈の話題を集めている。今後もしばらくは大きな伸びが期待できそうだ。

軟調誌多し…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2016年1-3月期、前年同期比)

プラスの動きを示す雑誌は1誌「Cheese!」のみ。前四半期の記事では皆無だったことから、大健闘に違いない。他方5%超、つまり誤差範囲を超えた下げ幅を示した雑誌は8誌で、前四半期から1誌減っている。その領域から逃れた「誤差範囲内の下げ幅に留まっている」雑誌は「別冊花とゆめ」「別冊フレンド」「LaLa」「ちゃお」「LaLa DX」の5誌。

逆に10%超は5誌。前四半期の6誌からは幸いにも減っている。ただし「ザ・マーガレット」は前四半期でも同じポジションにあり、何らかの対策が求められている状況だと判断せざるを得ない。

続いて女性向けコミック。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2016年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2016年1-3月期、前年同期比)

「海街diary あの日の青空」の映画化特需で1年近く前には盛り上がりを見せた「フラワーズ」だが、半年前には再びいつもの値となる3.3万部に戻り、それが今期も続いている。もっとも同誌はこの2年ほどは横ばいを続けており、他誌と比べれば健闘しているとも表現できる。

「ARIA」は唯一のプラス。これは数々の他業界との連動企画がけん引役となったものと考えられる。同誌は以前「進撃の巨人」特需で大きな部数上昇を果たした経験もあり、他業界との連動性をそつなくこなすパターンを手に入れたのかもしれない。

↑ ARIAの部数推移(2015年10-12月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2015年10-12月期まで)

今後の動向にも大いに注目・期待したいところ。ただし元々部数が少なく、今回のプラス7.7%も部数そのものでは1000部に満たないため、誤差の範囲との解釈もできよう。



「ザ・デザート」の休刊、それに伴う「デザート」の部数非公開化は雑誌界隈の動向を思い返すに仕方がないとの判断もできるし、部数も下降の中にあったのは事実。しかし多くの他誌も似たような形状で、部数そのものもさらに低い雑誌は多々あっただけに、やや驚きの感はある。

男性向けの雑誌と比べて女性誌は、通学はともかく通勤状況を見る限りでは、「すき間時間を費やす」目的としての雑誌需要の影響は少ない。少女・女性向けコミック誌は男性向け雑誌以上の減退ぶりを示している。インターネット、特にスマートフォンによる情報のやり取りが、男性よりも女性の方が積極的に行われるのも、女性向けコミック誌の減退が著しい要因の一つ。

むしろそれを利用し、スマートフォンを中心にインターネット、そして女性向けのテレビ番組など他業界とのリンクを重視した雑誌展開が、あるいは起死回生の手立てとなるかもしれない。


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