世を騒がせたあの雑誌の部数動向は…諸種雑誌部数動向(2016年1-3月)

2016/05/28 11:00

小規模・個人経営の書店が経営者の高齢化、インターネット通販の普及、高収益を見込める雑誌の売れ行き減退、少子化に伴う顧客減少で閉店した上で他業種店舗、あるいは一般住宅への改装が相次ぎ、それと共に雑誌などの供給場として注目を集めるようになったのがコンビニエンスストア。しかし、雑誌の集客効果は媒体力の下落と共に落ち、コンビニでもその領域と取扱い雑誌数は減っていく。雑誌コーナーは縮小され、その場にはイートインコーナーや電子マネーの販売スタンドなど、時代の需要に合わせた設備が配されていく。大型書店も最近は数的に縮小傾向にあり、雑誌を店舗で手に取り購入する機会は減り、雑誌業界そのものも元気を無くしつつある。このような状況の中で、各分野の雑誌のうち一部ではあるが、複数の分野に関し、社団法人日本雑誌協会が2016年5月25日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値から、雑誌の部数における「前年同期比」を算出し、その推移を確認していくことにする。

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対象雑誌は2誌が前年同期比でプラス…一般週刊誌


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語が意味するもの、諸般注意事項、類似記事のバックナンバーは一連の記事をまとめ収録した【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】にある。詳しくはそちらを参照のこと。

まずは一般週刊誌のジャンルに該当する雑誌。写真を中心に記事を展開する、いわゆる写真週刊誌も含む。

↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2016年1-3月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2016年1-3月、前年同期比)

↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2016年1-3月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2016年1-3月)(万部)

今四半期では幸いにも脱落・追加雑誌は無し。また、印刷証明部数を収録している雑誌に限定しているとはいえ、最低でも10万部の印刷部数は確保されている……との言い回しがしばらく前まではテンプレート化されていたが、半年前からは「サンデー毎日」が10万部を割り込んでしまい、その状態が今四半期も継続している。「AERA(アエラ)」も前四半期から0.1万部数を減らして10.1万部となり、間もなく同じ「10万部割れ倶楽部」の仲間入りをしそう。もっともそれ以外の雑誌は、相応の需要は「今のところ」維持されていることになる。想定購読層が幅広い一般週刊誌ならではの値といえる。「SPA!」もやや危うい部数だが、同誌の部数は横ばいを維持しているので、こちらは「10万部割れ倶楽部」への入会はなさそう。

↑ SPA!印刷実績
↑ 週刊ポスト印刷実績

前期比(前年同期比では無い。内部試算のためグラフは略)でプラスは2誌、「週刊現代」と「SPA!」のみ。誤差領域の5%以内ではあるが、プラス圏には違いない。

昨今何かと世間を騒がせている「週刊文春」だが、前年同期比でマイナス3.7%、前四半期比でマイナス1.3%。絶対部数の多さに支えられてはいるものの、中長期的な低迷感の中にあることに変わりはない。
↑ 週刊文春印刷実績
↑ 週刊文春印刷実績

昨今の動向はある意味部数低迷のテコ入れ的な活動との解釈もできるが、少なくとも今件データからはその成果は確認ができない。

大きく落ち込んだ雑誌のラインアップを再確認すると、「サンデー毎日」「週刊朝日」「週刊アサヒ芸能」「週刊大衆」といった、男性向けの大衆誌、あるいはゴシップ系雑誌が多分に及ぶ。似通った内容に個性を出しにくくなってしまったのか、あるいは該当世代の趣向そのものに変化が生じているのかもしれない。また、写真週刊誌的な色合いの強い3誌「FLASH」「FRIDAY」「AERA」の中では(部数データベースでは「AERA」は一般週刊誌扱いとなっている)「AERA」の下げ幅が著しい。質的な違いが部数に反映されたのか、あるいは方向性で受けの良し悪しが判断されたのか。今後継続的な比較精査をする必要があるかもしれない。

一誌が大きく跳ねる…育児系など


続いて育児系雑誌。部数の継続チェックの過程でプラスマイナスがあり、以前は8誌の動向を追いかけていた。ところが前四半期で1誌「edu(エデュー)」が脱落し、都合7誌となってしまう。これは【小学館の子育て雑誌「edu(エデュー)」が休刊していたでござるの巻】でも伝えた通り、2016年2月発売の3/4月号で休刊宣言が出されたことを受けてのもの。今回該当期は当然同誌の公開値は無く、新規参入組の類もないので、7誌のまま。

前年同期比では「PHPのびのび子育て」が大きく伸び3割強増し。それ以外はすべて誤差領域を超えた大きな下げ。

↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2016年1-3月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2015年1-3月、前年同期比)

少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場動向の多くは単純な子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近に居る育児世帯は数を減らしていき、育児情報の需要は増えることから、切り口次第ではチャンスは多い。もちろん同時にインターネット、中でもスマートフォンやタブレット型端末を利用した主婦層による利用の普及が進んでおり、子育て世代に向けた情報・コミュニティサービスも充実しており、雑誌ならではの提案が求められる。例えば蓄積性、専門性、正確性、実物品の提供などが思い浮かぶ。

いつもは盛況を博している「ベビモ(Baby-mo)」だが、今回は大きな下げ。

↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績
↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績

同誌は充実した冊子内容と有益な付録が好評を博しており、毎号大きな話題を集めている。「ベビモ」の中期的な動向を確認すると、育児系だけに限らず、雑誌全般でも注目に値する堅調さを示している。確かな支持層を確保し、信頼を得ることで口コミにより新たな読者層が逐次生まれ、さらにそのような状況に甘んじることなく常に改善を模索し、それが功を奏しているように解釈できる。それゆえに、前四半期からの部数の大きな減退は首を傾げるところがある。前四半期のみなら単なるイレギュラー的な動きと見ることもできるが、2四半期継続したのでは、そのような解釈も難しい。

他方、大きく伸びた「PHPのびのび子育て」だが、中長期的には部数減退のさなかにある。

↑ PHPのびのび子育て
↑ PHPのびのび子育て

該当期間の発行誌は3号分。内容は過去のものと同じ方針によるもので、特殊な付録が添付された、表紙デザインが変更された、編集方針が刷新されたなどの話は無い。過去の動向を見ても、同程度の部数減退の経歴はあるが、増加の動きは無い。数万部の雑誌で前四半期比で2万部強の増加は、まず滅多に見られない(先行記事の「おそ松さん」特需のようなイレギュラー的要素でも無い限り)。以前から読みやすい内容と手頃な価格で高評価を受けているのには違いないが、驚きの動きには違いない。次四半期以降の動向に注目したいところではある。

続いて食・料理・レシピ系雑誌。健康志向の強まり、一人暮らし世帯の増加、食の多様化に伴い、レシピや家事テクニックの情報需要は増加しているはずだが、インターネットの普及浸透、料理系をはじめとする家事情報に関するサイトの乱立により、紙媒体の専門誌の立場は思わしくない。

↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2016年1-3月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2016年1-3月、前年同期比)

今四半期ではプラスは皆無、「きょうの料理」がプラマイゼロ、それ以外の雑誌はすべてマイナス、誤差を超えた大幅マイナスは3誌に及ぶ。

【10月24日発売のレタスクラブには毎年恒例のスヌーピーカレンダーがついてくる】にもある通り、毎年10月発売号にはスヌーピーのカレンダーを添付し、大いに売り上げを伸ばすことで知られている「レタスクラブ」は該当ジャンルの雑誌内では前年同期比で最大の下げ幅。

↑ レタスクラブ印刷実績
↑ レタスクラブ印刷実績

スヌーピーカレンダーの発売該当四半期のみ盛り上がり、後は下げ続けるといった動きを繰り返し、この数年は概して下げ基調の中にある。抜本的なテコ入れを模索しないと、単純試算ではあと3年か4年で10万部割れを起こしてしまいかねない。

下げ止まりの気配がないエリア情報誌


エリア情報誌。スマートフォンのGPS機能を活用して地図を確認しながら、さまざまな周辺環境の状況を確認していくのが当たり前となった昨今では、かじ取りが極めて難しい状態。

↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2016年1-3月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2016年1-3月、前年同期比)

↑ 「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」印刷証明付き部数推移(万部)(2016年1-3月期まで)
↑ 「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」印刷証明付き部数推移(万部)(2016年1-3月期まで)

今四半期では「東海ウォーカー」がプラスマイナスゼロを示したが、それ以外はすべて下げの動き。四半期単位の動向を見るに、「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」は2015年に入ってから下げ幅を縮小した、横ばいに転じたそぶりも見せたが、この半年ばかりの間に再び下げ基調に転じたようだ。今後観光に係わる動機づけがプラスの方向に働くのは容易に想像できるので、紙媒体ならではのメリットを活かす施策を盛り込めば、あるいは状況の回復も有り得よう。見方を変えれば、この好機を逃せば、中長期的な回復は難しいともいえる。

愛玩動物として筆頭に挙げられる、犬と猫をテーマにしたペット専門誌「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。書店での一般売りは無く、通販専用の雑誌。書店のレジでサンプルが配されていることが多く、その表紙からわきあがる愛らしさに惚れた人も多いはず。

↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2016年1-3月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2016年1-3月、前年同期比)

↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2016年1-3月期まで)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2016年1-3月期まで)

「いぬのきもち」「ねこのきもち」発行元のベネッセにおける大規模情報漏えい問題に絡み、部数を大きく減らした2014年からはすでに1年以上が経過している。「ねこのきもち」はほぼその時の下げを回復するレベルにまで復調したが、「いぬのきもち」はリバウンド後に失速し、さらに下げたこととなった。犬猫で大きく異なる結果が出てしまっている。

以前【国内のペット数、犬は減少・猫は微増で同数に迫る】でも伝えたように、関連団体による試算ではあるが、日本国内のペット数動向では犬が減少し猫が増加するとの結果が出ている。両誌の動向もそれに合わせた動きと考えれば納得がいく。ここ数年で部数の差を大きく縮めた両誌だが、早ければあと数四半期で肩を並べることになるかもしれない。実際、両誌の部数動向グラフを見るに、その差が急速に縮まりつつあることが見て取れる。漏えい問題に絡んだ部数の急落が、その動きに拍車をかけたようだ。

「妖怪のしわざ」はすでに無く…幼稚園・小学生向け雑誌


最後に小学生向けなどの雑誌。「小学●年生」スタイルの雑誌は現在「小学一年生」と「小学二年生」のみ。かつて存在していた「小学三年生」などはすでに休刊となっている。そこで幼稚園向けの雑誌も合わせての精査となる。昨今では少子化に加え、競合的立場にある各種教材も合わせた通信教育的なサービスが好評を博し、厳しい値が出るのが常だったのだが、「妖怪ウォッチ」特需が発生し、各誌とも大きくプラスを計上する期が続いた。しかしその特需も終わり、今はむしろその特需の反動期が到来している。

↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2016年1-3月期、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2016年1-3月期、前年同期比)

全誌が誤差領域5%幅を超える下げで、3誌が1割以上の減退。「アイカツ!」「ポケモン」「プリパラ」など、子供達の間で話題の作品を巧みに取り込んだグッズを提供する姿勢には変わりはないが、最大のけん引役となった「妖怪ウォッチ」による底上げはすでに終わり、けん引されていた時期の部数との比較となることから、大きな下げ幅を示してしまっているのが実情ではある。



今記事では多様なジャンルを網羅していることもあり、多様な変動が見受けられるが、複数か所で変化を覚えさせる流れが見受けられる。その流れは多種多様だが、中期的な方向性が見える動きなだけに、今後の動向には大いに注目したい。

元々一般誌の多くはすき間時間を埋めるために用いられることが多く、現在はスマートフォンに代表されるモバイル端末に役割を奪われている。駅売店の雑誌コーナーにおいて、言葉通り飛ぶように一般週刊誌が売れた情景は、もはや過去のものとなっている。

今後はそれぞれの雑誌が自らの立ち位置を明確に分析し、得意な分野、手法で読者の需要をつかんで離さず、さらにその手を広範囲に広げる発想が求められよう。


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