各国の固定電話と携帯電話の普及率推移をグラフ化してみる(新興国編)(2015年)

2015/07/17 13:00

国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)では【データ項目ページ(Statistics)】において、毎年1回のペースで同連合加盟国の携帯電話、インターネットなどの電気通信に関係する統計データを更新の上、公開している。これは諸外国の通信機器やインフラの普及浸透状態を概略的に把握できる貴重な資料であり、各種論文や分析でも用いられている。恐らく今データを基にした論文や解説文は、国内外を問わず一度ならずとも目にしているはずだ。今回はその中から、いくつかの新興国それぞれにおける、固定電話と携帯電話の普及率の推移を抽出し、状況の確認を行う。携帯電話についてはあくまでも携帯電話そのものであり、インターネット機能付きの端末のみに限定されないことに注意してほしい。

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「新興国」との言葉には色々な定義、見方がある。今記事では先行記事の【十年余りの携帯電話普及率推移をグラフ化してみる(新興国編)】をベースとし、他の方面・分野でも参照対象となりそうな国、ロシア・インド・インドネシア・ブラジル・フィリピンにスポットライトを当てることにした。

なお今件データの「固定電話普及率」は、世帯ベースではなく個人ベースである。普通一世帯に固定電話を複数台契約する状況はあまり想定できないことから、100%到達は困難な値であることを留意しておかねばならない。

それでは最初にロシア。

↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(ロシア)(-2014年)
↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(ロシア)(-2014年)

類似主旨の先行記事【各国の固定電話と携帯電話の普及率推移をグラフ化してみる(先進諸国編)】と比べると、元々の固定電話普及率が低いこと、2000年からしばらくは携帯電話の普及率が低迷しているのが特徴。そして固定電話の普及率はあまり変化せず、携帯電話が急激な伸びを示している。

これは各国の携帯電話普及率だけを集約した先の記事「十年余りの携帯電話普及率推移をグラフ化してみる(新興国編)」で解説した、新興国の状況そのままである。そして2003年から2004年に渡って携帯電話の普及率は加速し、2005年以降は天井知らずの伸び率を見せている(もっとも2011年においては一度失速が見られる。これは同年からロシアにおける契約者数のカウント方法をSIMカード周りで変更したからに他ならない。同国の携帯電話事情がダイナミックに変わったわけではない)。

携帯電話は他人との音声における情報のやり取りができるだけに限らない。SMSでのメッセージの相互交換、そしてマルチメディアフォンやスマートフォンのようにインターネットアクセス機能がある携帯なら、インターネットへの窓口を携帯電話が有していることを考えれば、この普及率の増加がロシアの社会にもたらした影響の大きさが改めて確認できる。

続いてインド。

↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(インド)(-2014年)
↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(インド)(-2014年)

インドの携帯電話、モバイルインターネット事情は以前【モバイルインターネットの広がりをかいつまんでみる……インドと中国】で解説した通り。元々国土の広大さに加えて経済的な問題や地形の関係などから、電話系インフラの普及率は低いものだった。2000年当時の普及率は携帯で0.3%、固定でも3.1%でしかない。

それが固定電話は横ばいから漸減し、携帯は2005年あたりから急激に伸びを見せている。総務省のデータベース【「世界情報通信事情」のインドの項目】を見ると状況がある程度把握できるが、複数会社による競争の激化が、携帯電話普及率の向上に拍車をかけたと考えられる。

一方、2012年では携帯電話の普及率が大きなダウンを示している。これは人口が急増したからではなく、加入者数が急減したのが原因。具体的にはプリペイド式SIMカードのうち長期間利用が無く、新規入金もされていないものについて、回線を切断(契約破棄)の措置をとったため。収益率改善の動きの一環とされている。もっとも直近では再び増加を示し、74.5%に達している。

次はインドネシア。

↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(インドネシア)(-2014年)
↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(インドネシア)(-2014年)

【モバイル大展開…ニールセンのレポートからインドネシアのネット事情をかいま見る】などで解説しているが、インドネシアは多くの島々で構成されている国土の構成上、固定系インフラの普及には困難が伴う面がある。それでも固定電話の普及率はこの10年あまりで13%ポイントほど増加したが、携帯電話には遠く及ばない。また、やはり2005年前後を境に、携帯電話の普及率上昇率が加速度的な動きを見せているのが分かる。技術革新や競争激化によるサービス料の値下げ、サービスそのものの向上など、裏付けする材料には事欠かない。ただし直近の2014年では伸び率はわずかな形に。どうやら天井に達した感がある。一方で固定電話は2010年をピークに少しずつ減少中。

次はブラジル。南米諸国ではBRICsの中で唯一含まれる国であり、日本との関係も深い。

↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(ブラジル)(-2014年)
↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(ブラジル)(-2014年)

ブラジルは2000年時点ではロシアに近い固定電話普及率を示している。一方で携帯電話はすでに1割超え。その後の伸び方は他国と比べるとやや緩やかなようにも見えるが、2014年時点では135.9%に達している。固定電話はほぼ横ばいで、2割強を維持。他国と比べると減少する動きを見せないのが特徴的。これについて「世界情報通信事情」では、ケーブルテレビ事業者の躍進でシェアを拡大し、加入者数はむしろ漸増傾向にあると解説している。

最後にフィリピン。

↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(フィリピン)(-2014年)
↑ 固定・携帯電話普及率推移(契約数/人口)(フィリピン)(-2014年)

伸び方のスタイルとしては、ブラジルやロシアよりは、インドネシアやインドに近い。固定電話の普及率は元々低く、時代を経てもさほど変化は無い。一方で携帯電話の普及率は上昇を継続中。同国の情報伝達のスピード、そしてそれに伴う社会構造へ確実に変化を与えているのは間違いない。

興味深いのは、他国のように2003年や2005年のような「節目」が無く、一様に上昇していること。インドネシア同様に島々で国が形成されていることもあり、携帯電話の必要性は昔から高かったものと考えられる。もっとも2013年では携帯電話の値は失速。これについて資料基でも「世界情報通信事情」でも特に解説は無く、詳細は不明。直近の2014年では再び上昇に転じていることから、単なるイレギュラーだったようだ。



携帯電話の普及率においては、グラフの形を見ると一部では緩やかさを見せつつあるものの、多くの国ではさらに上昇する気配が感じられる(インドは特例だが、これは値下げ競争による急加速から生じたリバウンドのようなもの)。また、数字の上では判断が出来ないが、SMSのみの携帯電話からスマートフォンに切り替え、インターネットに「はじめの一歩」を踏み出す人も確実に増加する。

この流れが各国にどのような変化をもたらすのか。少なくとも各国国内はもちろん、世界に向けた情報のやり取りの窓口が大きく開いたことは間違いない。ビジネス様式や各国の社会情勢にも小さからぬ、そして確実な影響を与えることだろう。


■関連記事:
【世界中で減少する固定電話、増加する携帯電話…固定・携帯電話の普及率をグラフ化してみる(2012年発表版)】
【携帯・PHSなど合わせて138.5%の普及率…総務省、2015年3月末の状況を発表(2015年)(最新)】
【世界地域別インターネットの普及率などをグラフ化してみる(2014年)(最新)】

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