奨学金事業の推移をグラフ化してみる(2015年)

2015/12/21 12:00

内閣府は2015年12月21日までに、2015年版となる「少子化社会対策白書(旧「子ども・子育て白書」「少子化社会白書」)」のHTML版を発表した。今回はその中の記述を元に原本資料をたどり、教育機会を確保する支援策の一環として展開されている、奨学金事業の推移について見ていくことにする(【少子化社会対策白書】)。

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今回スポットライトを当てるのは、独立行政法人日本学生支援機構(2004年4月から各種財団法人・公的機関の業務を引き継いで誕生した、奨学事業を行う機構)が実施する奨学金事業。教育の機会均等を確保する観点から、意欲と能力のある学生等が家庭の経済状況によって修学の機会が奪われることのないよう、学費の支えとなる資金を貸与している。同機構の奨学金には有利子(第二種)のものと無利子(第一種)のものがあり、さらに後者では奨学生本人が卒業後に一定の収入(300万円)を得るまでの間は返還を行わなくても済む「所得連動返済型の無利子奨学金制度」を2012年度から導入している。

次に挙げるのは、その日本学生支援機構が展開している奨学金制度の貸与対象となる学生の人数と、同事業の費用推移(各年度当初予算ベース)。いずれも右肩上がりで上昇しているのが分かる。

↑ 奨学金の貸与人員の推移(万人)
↑ 奨学金の貸与人員の推移(万人)

↑ 奨学金事業費の推移(億円)
↑ 奨学金事業費の推移(億円)

この数十年間、物価上昇があまり無かったことを考えれば、事業費の増加は単純に奨学金の需要が増加している、奨学事業が拡大していると見て問題ない。実際、貸与人員も同様に増加している。

一方、審査基準のハードルが高いものの返済時の負担が小さい無利子奨学金制度を利用する(できる)人数には大きな変化は無く、基準がやや低いが返済時の負担が大きい有利子奨学金制度を利用する人は増加の一途をたどっている。借りる方には条件が良い、見方を変えれば貸す側にはリスクが大きい無利子奨学金制度の枠が一定数に限られ、大きく拡大することは難しいものの、奨学金制度そのものの需要は増加する一方であることがうかがえる。

また有利子奨学金でも利子は低率に違いないこと、選択肢次第だが最高の貸付金額は無利子奨学金の2倍近い(大学の学部次第ではさらに上乗せが可能)ことも、有利子奨学金制度を活用する事例が増えている一因といえる。あるいは無利子奨学金の金額では、就学補助には足りず、より高額を借り受けられる有利子奨学金を用いる事例もあろう。

なお2014年度分では、「有利子奨学金」の事業費、貸与人員共に総額ベースでは減少を示している。一方で内容を見るに、有利子奨学金が減り、無利子奨学金が増加しているのが分かる。これについて白書側では「無利子奨学金の新規貸与者を1万2千人増員する」「経済困難を理由とする返還期限猶予制度の制限年数の5年から10年への延長」「延滞金賦課率の10%から5%への引下げ」「真に困窮している奨学金返還者に対する救済措置を充実するなど、奨学金制度の改善充実を図る」としており、質への転換を図った結果と読める解説をしている。今後この施策が推し進められれば、次年度以降も無利子奨学金の枠は増えていくことだろう。

ちなみに奨学金制度は日本学生支援機構によるものだけではない。官民共に多種多様な奨学金制度がある。【ローソン、全店舗へLED導入・奨学金基金創設・被災地特産品の販売など包括的被災地支援プロジェクト「元気になろう!日本」を始動】で紹介した、ローソンの「“夢を応援”基金」が好例である。また貸与ではなく給与(返済義務なし)の奨学金も少なからず存在する。よって今グラフが奨学金制度のすべてを指し示すわけではないが、学生と奨学金に絡む現状を推し量ることはできよう。


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