2016年5月度外食産業売上プラス0.6%…6か月連続で前年比プラスを計上

2016/06/28 04:00

日本フードサービス協会は2016年6月27日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2016年5月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売り上げは前年同月比でプラス0.6%を計上した。前年同月と比べて土曜日が1日少ないため日取り的には売上の足が引っ張られたものの、連休中のファストフードの売上が順調なことを受け、わずかではあるがプラスとなった。他方昨年まで3年近くに渡り順調さを示していたファミリーレストラン部門は3月に続き今年2回目の前年同月比でのマイナスを示す形となっている(【日本フードサービス協会:発表リリースページ】)。

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今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象としている。対象数は事業者数が192、店舗数は3万3048店舗。今月は前月と比較すると事業社数・店舗数共に増加している。

全業態すべてを合わせた2016年5月度売り上げ状況は、前年同月比で100.6%となり、0.6%の増加を記録した。これは先月から継続の形で6か月連続の増加となる。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では土曜日が1日少なく、マイナスの作用が生じている。また雨天日では東京は2日、大阪では3日多く、客足を引っ張る形となっている。

業態別に動向を見ると、ファストフードは全体では前月から続く形で6か月連続のプラス(プラス4.6%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、2014年夏からの相次ぐトラブル、さらにはそれをきっかけとした中長期に渡る問題点の露呈化や市場動向の変化に対応しきれない状況が継続している。直近でその最たる問題として大きな話題となった異物混入騒動による売上の大幅減は前年1月に生じており同年5月もまだその影響は大きく、今回月はその値との比較となるため、客単価・客数共に大きく上昇。売上高は実にプラス8.2%を計上した。ただし前年同月における売上の前年同月比はマイナス10.9%を示したため、リバウンド以上のものでは無い。洋風の2年前同月比を試算するとマイナス3.6%となる。年換算ではマイナス1.8%ほど。

マクドナルド単体の2016年5月における営業成績はプラス21.3%(売上、既存店、前年同月比)とそれなりに大きな上げ幅を示しており(上げた理由も洋風全体と同じでリバウンドによるもの)、これがファストフード洋風全体へのプラスの影響を与えたものと考えられる。なお同業他社のモスバーガーではプラス5.2%(同)を示している。

牛丼チェーン店を含む和風は、客数はプラス3.9%、客単価はマイナス0.4%と成し、売上はプラス3.5%とプラスを計上。「客数増と定食メニューに支えられ」との言及があるが、恐らくは吉野家の豚丼と松屋の新作定食群によるもの。持ち帰り米飯・回転寿司は店舗数の減少に伴う客数減退が足を引っ張っり(マイナス5.2%)、客単価の上昇(プラス2.3%)でもサポートしきれず、売上はマイナス3.1%に。

ファミリーレストラン部門は焼肉以外はいくぶんの軟調さを見せ、マイナス。焼肉のみプラス(プラス2.8%)。土曜日が少ない日取りの影響が大きく出る形となった。例えば洋風では「週末のディナー時間帯が振るわず」などとある。他方中華は相変わらず店舗減による影響が大きい。パブ/居酒屋部門ではパブが連休谷間における客入りが今一つでマイナス5.8%、居酒屋は店舗数の減退も拍車をかけ、マイナス14.5%と大きな売り上げ減を計上している。これは前月に続き、区分別最大の下げ幅。

ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客単価がやや落ちたが客数は堅調で、売上はかろうじてプラス。ただしリリースに「店舗数の増加により」とあるように、実質的には店舗数の増加によって底上げされたに過ぎない。また「景況感の悪化から」とあるのが気になるところ。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2016年5月分)
↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2016年5月分)

土曜日が1日少なく
雨天も多く
前提条件では
マイナス要因多し。
リバウンドも合わせ
ファストフードが全体の
けん引役を果たし
ギリギリだが全体では
プラスを計上。
2014年4月の消費税率改定に伴う消費性向の減退影響も直接的にはあまり生じなかった外食産業だが(今件各種計上値は税抜比較で行っているため、消費税率引き上げに伴う「税込の」売上上昇は、業績動向には直接は影響を与えない)、2014年夏における天候の悪化、そして中国産鶏肉食材問題と2つのイレギュラー的なマイナス要素が足を引っ張り、むしろ状況は2014年夏以降は低迷感をぬぐえない状態が続いていた。特に後者は食材問題自身の影響に加え、それをきっかけとして業界の一部部門(ファストフード・洋食)における根本的な問題が露呈する形となった。大きな社会問題化した異物混入事件まで加わり、2014年夏以降大きなシェアを有するマクドナルドに相次いでいる状況に、ファストフード部門、さらには外食産業全体が多分に振り回されている感はあった。

2015年7月からは軟調化開始から1年が経過することもあり、該当事業の「前年同月比における」マイナス幅は縮小。業績そのものも回復、少なくとも下落の勢いにブレーキがかかりつつある。ここ数か月全体として売り上げが前年同月比でプラスを示しているのは、好ましい話に違いない。ただし上記でも触れているが、今回の全体値のプラス計上に大きな貢献を成したファストフードにおける大きなプラス値は、多分に前年同月における大きな落ち込みの反動によるところが大きい。実質的にはマイナス基調にあるとの解釈もできる。

ファストフード内の和風のメインとなる牛丼チェーン店だが、吉野家を中心にこれまでの廉価店の店舗イメージから少しずつ、そして確実に、ワンステップ上の価格帯における商品展開を行う業務スタイルにシフトしていた。客数の減退と客単価の上昇が連動して起きる状況が継続し、中期的戦略転換が数字となって表れていた。今回月は和風の説明文に特記事項としてそれらしき言及が成されている通り、廉価メニューの吉野家による豚丼が先月に続き少なからぬ成果をあげる形となった。これが単なるイレギュラー的な施策なのか、今後再び吉野家、さらには同業他社も追随してかつてのような「デフレスタイルの商品展開」となるのか、今後の動向が大いに気になる。

居酒屋の不調続きも要注意ポイント。こちらは食材の影響は無く、純粋にビジネススタイルそのものが時代の流れの中で歯車のずれを生じ、店舗数そのものも漸減してしまっている。もっとも今回月の場合、店舗数は10.7%の減となった一方で、客数は12.8%の減少を示しており、再び下落に加速感が生じた可能性はある。

現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。複数人数が一緒に来店して会食をする点では、飲酒以外は類似点が多いファミリーレストラン部門が大よそ堅調なのも対象的(今回月は日取りと天候によって足を引っ張られたが)。店舗数の急速な減少は、状況の悪化を受け、淘汰が進んでいるように見える。

吉呑みもっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけでは無い。牛丼チェーン店の吉野家が運用している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。ちょっと一杯飲みに行くスタイルでは先駆者ともいえる中華料理店の日高屋が好評を博しているとの報告もなされ、その市場の実情が明らかにされている現状を見るに(運営会社のハイデイ日高の月次売上を確認すると、ここ数年は前年同月比でほとんどの月においてプラスを呈している。ちなみに今回該当月にあたる2016年5月は既存店で客数マイナス1.0%・客単価プラス1.0%、売上高プラスマイナス0.0%を計上している。店舗数は5.8%の増加)、既存の居酒屋にも環境を直視した上で、何らかの変化が求められているように思える。

牛丼業界の動きやディナーレストラン、ファミリーレストランの動きの良さを合わせ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。外食産業全体の動向を精査するうえで、店舗数動向もあわせ、今後も注視すべき重要ポイントに違いない。


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