現状低下継続、先行き上昇へ…2016年5月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き上昇

2016/06/08 15:00

内閣府は2016年6月8日付で2016年5月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で低下して43.0を計上し、水準値の50.0を下回る状態が継続する結果となった。先行き判断DIは先月比で上昇して47.3となったが、こちらも水準値の50を割る状態が続いている。結果として、現状低下・先行き上昇の傾向となり、基調判断は消費動向などのへの懸念や先の熊本地震を受け「景気は、引き続き弱さがみられ、熊本地震によるマインド面の下押し圧力が未だ残っている。先行きについては、販売価格が引き上げられない中で原材料価格が上昇する等、物価動向への懸念がある一方、熊本地震からの復興、夏のボーナスや設備投資増加への期待がみられる」となり、景況感の軟調さを覚える一方で、夏に向けた期待が感じられるとのコメントが示されている(【平成28年5月調査(平成28年6月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は低下、先行きは上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2016年5月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス0.5ポイントの43.0。
 →「変わらない」「悪くなっている」が増加、「やや良くなっている」「やや悪くなっている」が減少。
 →詳細項目は高安まちまちだが、低下項目の方が多く、下げ幅も大きい。最大の下げ幅は住宅関連でマイナス4.1。最大のプラスは飲食関連でプラス0.8。雇用関連はプラス0.4だが、水準値の50.0は割り込んだ状態が続く。

・先行き判断DIは先月比でプラス1.8ポイントの47.3。
 →「良くなる」「やや良くなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。
 →ほぼ全項目で増加。減少は住宅関連のみ。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。ただしここ数か月は原油価格も再びじわりと値を上げており、それに伴いガソリン価格も上昇の兆しを見せている。

今回月は先月に続き、水準値となる50.0を現状・先行き共に下回る形となった(双方とも10か月連続)。具体的コメントや周辺状況からも明らかな通り、景況感への先行き不信感への強まりに加え、円高・株価安による金融市場の軟調さに強く影響される形で、さらに4月に発生した九州・熊本地震を受けた物理的な損失や消費マインドの低下に関する懸念が小さからぬものとなっている。来年施行予定の消費税率引上げに関しては政権与党による延期宣言が出されているものの、少なくとも現状における景況感の判断の数字には影響を与えていない。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

水準値超えは現状で3つ、先行きで6つ


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2016年5月)
↑ 景気の現状判断DI(-2016年5月)

消費税率改定からはすでに2年以上が経過したが、それによってもたらされた消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させる材料が見当たらず、低迷感は継続。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いていると判断できる。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。昨今では為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほどである。

ここ数か月に限れば原油価格は底打ち感から上昇の機運を見せている。それに伴い原油関連企業の状況は一息ついた感はあるが、今度はガソリン価格の上昇を受け、運輸関連を中心に懸念が高まりつつある。さらにアメリカ合衆国の利上げ問題やEUにおけるイギリスの離脱懸念、欧州中央銀行の金融緩和の拡大に伴い円高が進み、こちらも企業の業績には多分にマイナス要素となっている。

また4月中頃に発生した九州・熊本地方の大型地震は、同地域の産業(製造業だけでなく観光業)にも、直接だけでなく間接的なマイナスの影響を与えており、これがさらに直接には関係しない関連業界、消費者へのマインドの足を引っ張る傾向が見受けられる。例えば直接の被害を受けず地震も平常程度の地域ですらも、九州地方であることだけで観光などがキャンセルされてしまい、該当地域の観光業の業績が悪化する図式である。また同地に部品工場を配していた企業で地震の影響を受け、他地域の工程には問題が無くとも、商品の製造に支障が生じるケースも見受けられる。

今回月の現状判断DIは詳細項目はプラスとマイナスが混在、ややマイナスが多いといったところ。最大の下げ幅を示したのは住宅関連のマイナス4.1だが、多分に先月大幅上昇したことの反動が見受けられる。先月16か月ぶりに水準値50.0割れを示した雇用関連は前月からはプラスとなったもののまだ勢いは弱く、水準値超えは果たされていない。雇用は多種多様な方面に大きな影響をもたらす指標であるだけに、早期の回復が望ましいのだが。

景気の先行き判断DIは現状と比べると全体的に底上げされた形で、前月比マイナスは住宅関連のみ。しかも0.4ポイントの下げ幅に留まっている。

↑ 景気の先行き判断DI(-2016年5月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2016年5月)

最大の上げ幅を示したのは飲食関連のプラス4.7だが、これは前月の大幅な下げからの反動と読み取ることができる。雇用関連はプラス3.7の51.5となり、水準値の50.0を4か月ぶりに超える形となった。

なお熊本地震の影響だが、現状判断DIは全国平均で43.0(マイナス0.5)だったが九州に限れば39.9(プラス5.7)、先行き判断DIは全国平均で47.3(プラス1.8)だが九州は49.4(プラス8.1)となり、現状認識はまだまだ厳しいものの、今後は復興による景況感の底上げ期待が大いに高まっている状況が確認できる。

夏の暑さとボーナスと


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・気温が前年より高いため、夏物商材の動きが5月中ごろから好調である(家電量販店)。
・来客数の減少が続いている。さらに1人当たりの買上点数も前年を下回り始めた。客は無駄なものは購入せず、家計を引き締めているようである(スーパー)。

■先行き
・猛暑の予想もあり、夏物商材に期待している。またオリンピック特需もそろそろピークを迎える時期なので、映像関連商品に注力していく(家電量販店)。
・前年比でみると、生鮮品の売上は来客数を上回って推移している。一方、価格で差がつく飲料水や食料品やビールの売上は減少が続いており、少しでも安い小売店で購入していることがうかがえる。これらのことからデフレ基調が強く、依然として消費マインドが低迷しているとみられるため、今後についてはやや悪くなる(コンビニ)。

いわゆるマイナス金利に関しては報道界隈では多分に負の作用を強調する形で伝えているが、元より利子で生活が可能な人はごく少数で、それらの人は自前の預貯金の利子は気にしないレベルの生活水準をしており、影響はほぼ皆無(元々一般における預貯金の金利はゼロに等しい)。今回月のコメントでマイナス金利に関する言及はごくわずかで、内容もポジティブ・ネガティブ双方が同程度確認でき、大勢に影響は与えていないようだ。

他方、消費税率の再引き上げの延期に関しては、現状では状況が微妙であることから、コメントからも戸惑いの様相が見て取れる。ただ再延期をする場合、同時に景気対策を求める声が見受けられ、再延期のみで景況感の底上げが成されるとする考えを持つ人はあまりいないようだ。

人材周りでは大よそ堅調な意見が寄せられており、求職者不足による企業側の懸念の声も多々見受けられる。また、求職側と求人側のミスマッチの是正を求める声も相変わらず。他方、非正規雇用から正規雇用に切り替える動きも見受けられ、労働市場の質的転換が生じている雰囲気はある。

また今夏に関して猛暑の気象予報が出されたことを受け、夏物系の商品やサービスの需要が伸びるとの期待が多く見受けられる。季節にあった気候動向は、少なくとも景気にはプラスに働くとの認識が強いようだ。

なお前回月では景況感に小さからぬ影響を及ぼした熊本地震が発生している。先月に続き今月も特記事項としてコメントが集約されており、次のような内容となっている。

■現状
・熊本地震の影響が懸念されたが、当地では思ったほどの落ち込みも少なく堅調さを保つことができた(タクシー運転手)。
・熊本地震以降、九州方面のキャンセルにより販売は依然厳しい。ゴールデンウィーク以降も、受注は前年を下回り続けている。また、伊勢志摩サミットによる影響も、多少は出ている(旅行代理店)。
・一部の自動車部品メーカーで、熊本地震の影響がみられていたが、最近になり受注は戻りつつある(金融業)。
・熊本地震の影響がまだ残っており、完成車メーカーの生産台数が回復していない(輸送用機械器具製造業)。
・熊本地震の影響はあるが、求人数が増えていない(九州=民間職業紹介機関)。

■先行き
・熊本地震の影響から少しずつ回復していく(衣料品専門店)。
・企業等の景気に陰りが見え始めているのか、今後の受注状況が前年同時期に比べ6割程度であり、個人受注も発生が遅く少ない。熊本地震の影響により九州方面への旅行も激減しており、代替案に移行ができない。夏休み等の動向が懸念される(旅行代理店)。
・熊本地震に伴い公共投資は復旧工事が見られ始めているほか、工場の設備補修等の増加が見込まれる。反面、訪日外国人を含め観光客が大幅に減少しており、個人消費に弱さが見られる(金融業)。
・熊本地震の影響が自動車等の各産業に残っており、楽観できない状況が続きそうである。タブレットの出荷量が大きく減少し、韓国系スマートフォンの生産量も大幅に減少する(非鉄金属製造業)。
・熊本地震後の復旧作業の進展により、現在低迷している業種も改善に向かうが、全体的には変わらない(職業安定所)。

九州自身だけでなく周辺、さらには距離的には離れているような場所においても、マインドの低下を懸念する声が少なからず見受けられる。特に観光業において九州全体を敬遠する動きが少なからず見受けられる。

今回コメントで「中国」に言及したのは3件。前回の5件よりは減少している。景気後退に関する不安が2件だが、中国での生産分が国内に戻ってきているとの話もある。



昨夏は8月前半までが猛暑で消費を大きく後押ししたものの、後半からは一気に冷夏的な温度低下・日照時間の低迷にシフトし、その辺りから景況感も足を引っ張られた感がある。株式を運用する個人、企業だけでなく、その他多方面にも心理的影響を与える株価もほぼ同じタイミングで、中国の株価急落をトリガーとして一段下げた形となり、その状態が続いていることから、景気の先行き感に不安を覚える人が増え、それが景気の歩みを引っ張る気配が随所に見て取れる。その後株価は12月までじわりと持ち直し、それに伴い株価下落による心理的なプレッシャーは軽減されつつあった。もっとも特段景気の良い話が耳に入ってくることが無く、いわゆるぬるま湯的な、むしろそれよりも少々温度が低いものの、今更風呂から出るわけにもいかず仕方なく入っているような状況の感は否めなかった。

1月に入ってからは原油価格の低迷に伴う関連企業の業績悪化懸念、そして中国経済・株式市場の急落、世界規模の市場下落、さらには為替の円高化、来年に迫った消費税率引上げにより、景況感は大きな減退を経験している。一つ一つの要素はさほど大きく無いものの、畳み掛けるような材料の積み上げで、不安感が膨張している感はある。

原油価格や気象動向など一部要素は改善に向かいつつあるが、冒頭でも触れた通り円高化や中国経済への懸念は相変わらず。多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。昨今では可処分所得を削り取る大きな要素となる社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。

なお今回月は先月に続き、熊本地震による影響が小さからぬ影を落とす形となった。先行きについてはむしろポジティブに物事をとらえているのが幸いだが、東日本大震災の際にも大きな問題となった、無意味な自粛ムードへの懸念は相変わらず。むしろ自粛ムードそのものを自粛し、積極的に経済を回すべく、各種対応を願いたいところだ。


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