日本は「使い方が分からない」が最多で50.3%…情報機器を使わない高齢者の「なぜ」を探る(最新)

2021/11/22 03:03

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2021-1102先行記事【SNS利用、日本は12.6%、米国は44.0%…ファックスやパソコン、携帯電話…高齢者の情報機器の利用実態(最新)】において、内閣府が2021年6月11日に発表した、高齢者の生活と意識に関する国際比較調査の最新版となる第9回調査結果を基に、高齢者における情報機器(ファックスやパソコン・携帯電話そのものやそれを使ったインターネットの利用までも含む)の利用状況を確認した。その際、少なからぬ高齢者が情報機器は使っていないと回答している。情報機器を縦横無尽に利用している現役世代、子供達には不思議な選択にしか見えないが、それなりの理由があり、高齢者は「使わない」との選択をしている。今回はその選択の内情を確認していく(【内閣府:高齢者の生活と意識に関する国際比較調査一覧ページ】)。

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どの国も「必要性を感じない」がトップ


今調査の調査要項は先行記事【結婚経験無しの男性高齢者、日本は7.7%・米国は7.8%…日本や諸外国の高齢者における結婚状況(最新)】を参照のこと。

冒頭で示した通り先行記事で解説したが、今調査対象母集団では少なからぬ高齢層が情報機器の類を使っていないと回答している。

↑ 情報機器の利用状況(60歳以上、複数回答、「いずれも使わず」、国別・年齢階層別)(2020年)(再録)
↑ 情報機器の利用状況(60歳以上、複数回答、「いずれも使わず」、国別・年齢階層別)(2020年)(再録)

そこでその項目で「情報機器を使っていない」と回答した人に、なぜ使っていないのかを複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。多くの国で一番多くの人が同意を示したのは「必要性を感じない」だった。ドイツでは7割台、アメリカ合衆国で5割台、日本で5割近く、スウェーデンでも3割強が同意している。ただし日本は「必要性を感じない」よりも「使い方が分からない」の方がわずかに値は高く、50.3%。日本は他国と比べると、やる気はあるけれど操作方法などが分からずに挫折している(利用したくないのではなく、利用したくともできない)人の割合が大きいようだ。

↑ 情報機器を利用しない理由(60歳以上、複数回答、使っていない人限定、国別)(2020年)
↑ 情報機器を利用しない理由(60歳以上、複数回答、使っていない人限定、国別)(2020年)

日本以外では「必要性を感じない」の次に値が高いのは「使い方が分からない」。アメリカ合衆国は他国と比べて低い値にとどまっているのが印象的。学ぶ機会が充実しているのだろうか。

高齢層の情報機器普及問題について、世間一般でよく理由として想定される費用の問題「お金がかかる」は日本とアメリカ合衆国で2割強、ドイツでは1割を切っている。費用を理由にしている人は存在するが、少数意見でしかない。また同様に、高齢者の身体的な問題に関連する形で大きな理由として語られる「文字が見にくい」も1割前後。

実のところ「高齢者の情報機器離れ」の原因は、「使いたい、興味はあるが使い方が分からないので使えない」「自分の生活の中で必要性を感じない。必要のないものを使う理由がない」の2要素であることが分かる。

日本の詳細を確認


続いて日本に限るが、属性別の動向を確認する。まずは男女別。

↑ 情報機器を利用しない理由(日本、60歳以上、複数回答、使っていない人限定、男女別)(2020年)
↑ 情報機器を利用しない理由(日本、60歳以上、複数回答、使っていない人限定、男女別)(2020年)

男女で序列に大きな違いはない。男女ともに「必要性を感じない」「使い方が分からない」がトップ2。ただし男性は「使い方が分からない」がトップで、女性は「必要性を感じない」がトップにつく。男性は意思はあるが技術が追い付かないで、女性はそもそも意思がないのが最上位となる。

その次に来るのは男性が「お金がかかる」「使い方指南者無し」「文字が見にくい」、女性は「お金がかかる」「文字が見にくい」「使い方指南者無し」。この部分でも男性は女性と比べて積極的な意思を持っていることがうかがえる。

次は年齢階層別。

↑ 情報機器を利用しない理由(日本、60歳以上、複数回答、使っていない人限定、年齢階層別)(2020年)
↑ 情報機器を利用しない理由(日本、60歳以上、複数回答、使っていない人限定、年齢階層別)(2020年)

「必要性を感じない」「使い方が分からない」では傾向を見出しにくいが、「購入場所・方法などが分からない」「お金がかかる」は年が上になるほど値が小さくなり、「文字が見にくい」は年が上になるに連れて値が大きくなる。現状の高齢層のうち情報機器を使っていない人においては、「購入場所・方法などが分からない」「お金がかかる」は機材の調達がかなわず、「文字が見にくい」は自分自身の身体的能力の問題であることを考えると、納得はできる動きではある。

一つ注意してほしいのは、今件は最初のグラフにある通り、「情報機器を使っていない人」に限定していること。情報機器非利用者は年上になるに連れて比率的に増える傾向があるため、若い年齢の人達は「必要性を少しでも感じている人は自発的に使いこなしている」にシフトしている可能性が高い。

実際に「いずれも使わず」と「必要性を感じない」・「使い方が分からない」を掛け合わせ、男女・年齢階層別に、その属性全体(使っている人・使っていない人合わせて)に占める割合を算出すると、次の通りとなる。

↑ 情報機器を利用しない理由(日本、60歳以上、複数回答、使っていない人限定、一部、男女別・年齢階層別、各属性全体比)(2020年)
↑ 情報機器を利用しない理由(日本、60歳以上、複数回答、使っていない人限定、一部、男女別・年齢階層別、各属性全体比)(2020年)

80歳以上では全体の14.6%が「必要性を感じないから情報機器を使っていない」、16.5%は「使い方が分からないので使っていない」となる。男性よりも女性、年下よりも年上の方が、不必要、あるいは使い方が不明のため、情報機器を使っていないことになる。

「必要性を感じない」が、現状の日々の生活で満足しており、何か新しいことをするために努力をしたりコストを投入して覚える必要性を感じないのか、それとも生活にもプラスとなり存在を知れば利用に前向きとなるはずだが、その存在・利便性を知らないだけなのか。あるいは利便性を多少は認識しているが、費用対効果を考えると不必要と判断しているのか。どれかまでは分からないが、社会情勢上は高齢層への情報機器の普及が望ましい昨今において、考えさせられる結果には違いない。


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