情報機器を使わない高齢者の「なぜ」を探る(最新)
2019/08/26 05:16


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どの国も「必要性を感じない」がトップ
今調査の調査要項は先行記事【日本や諸外国の高齢者における結婚状況をグラフ化してみる(最新)】を参照のこと。
冒頭で示した通り先行記事で解説したが、今調査対象母集団では少なからぬ高齢層が情報機器の類を使っていないと回答している。

↑ 情報機器の利用状況(60歳以上、複数回答、「いずれも使わず」回答率、国別・年齢階層別)(2015年)(再録)
そこでその項目で「情報機器を使っていない」と回答した人に、なぜ使っていないのかを複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。諸国とも一番多くの人が同意を示したのは「必要性を感じない」だった。日本とドイツで7割台、アメリカ合衆国で6割近く、スウェーデンでも4割強の人が答えている。

↑ 情報機器を利用しない理由(60歳以上、複数回答、使っていない人限定、国別)(2015年)
国ごとに多少の違いはあれど、「情報機器を使っていない」の次に大きな理由は「使い方が分からない」で2割前後。これは「必要性を感じる、使いたいと思っているが、使い方が分からないので使えない」と解釈することができ、情報機器を普及させるべきであると考えるサイドにとっては、「必要性を感じない」よりも可能性の高い属性だと言える。
高齢層の情報機器普及率に関し、世間一般でよく理由として想定される費用の問題「お金がかかる」はスウェーデンでゼロに近く、他国でも1割前後でしかない。それを理由にしている人は存在するが、少数意見でしかない。また同様に、高齢者の身体的な問題に絡んで大きな理由として語られる「文字が見にくい」も1割足らず。
実のところ「高齢者の情報機器離れ」の原因は、多分に「生活の中で必要性を感じない。必要のないものを使う理由が無い」「使いたい、興味はあるが使い方が分からないので使えない」の2要素であることが分かる。
日本の詳細を確認
続いて日本に限るが、属性別の動向を確認する。まずは男女別。

↑ 情報機器を利用しない理由(日本、60歳以上、複数回答、使っていない人限定、男女別)(2015年)
実のところ男女で大きな違いは無い。男女ともに必要性を感じないのがトップで、次いで使い方が分からない、その次にコストの問題がつく。文字が見にくいはその次となる。中には「文字が見にくい」以外の身体的な理由、例えばスマートフォンならフリックやタップが難しいとの人もいるだろうが、少数派でしかない。
次は年齢階層別。

↑ 情報機器を利用しない理由(日本、60歳以上、複数回答、使っていない人限定、年齢階層別)(2015年)
「必要性を感じないの」の85歳以上でイレギュラーが起きている感があるが、おおよそ歳を経るほど「必要性を感じない」が減り、「使い方が分からない」が増えていく、つまり現状の高齢層のうち情報機器を使っていない人においては、若い人たちほど利便性を知らず、年上の人ほど使いたい・興味関心があるけれど分からないので使えないとする人たちが多いことになる。他の項目は年齢階層による法則性のある差異は見られない。
一つ注意してほしいのは、今件は最初のグラフにある通り、「情報機器を利用しない人」に限定していること。情報機器非利用者は年上ほど比率的に増える傾向があるため、若い年齢の人達は「必要性を少しでも感じている人は自発的に使いこなしている」にシフトしている可能性が高い。
実際、「いずれも使わず」と「必要性を感じない」・「使い方が分からない」を掛け合わせ、男女・年齢階層別に、その属性全体(使っている人・使っていない人合わせて)に占める割合を算出すると、次の通りとなる。

↑ 情報機器を利用しない理由(日本、60歳以上、複数回答、使っていない人限定、一部、男女別・年齢階層別、各属性全体比)(2015年)
85歳以上では全体の4割台後半が「必要性を感じないから情報機器を使っていない」、1割台後半は「使い方が分からないので使っていない」となる。男性よりも女性、年下よりも年上の方が、不必要、使い方不明のため、情報機器を使っていないことになる。
「必要性を感じない」が、現状の日々の生活で満足しており、何か新しいことをするために努力をしたりコストを投入して覚える必要性を感じないのか。それとも生活にもプラスとなり存在を知れば利用に前向きとなるはずだが、その存在を知らないだけなのか。あるいは利便性を多少は認識しているが、費用対効果を考えると不必要と判断しているのか。どれかまでは分からないが、社会情勢上は高齢層への情報機器の普及が望ましい昨今において、考えさせられる結果には違いない。
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