紙媒体は双方共にマイナス継続、ラジオは奮闘でテレビもプラス、ネットは1割強の増加(経産省広告売上推移:2016年5月発表分)

2016/05/14 10:00

経済産業省は2016年5月13日、「特定サービス産業動態統計調査」の2016年3月分における速報データ(暫定的に公開される値。後程確定報で修正される場合がある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。その内容によれば2016年3月の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス1.0%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5部門(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット広告)では新聞、雑誌の2媒体がマイナスで、テレビはいくぶんの上昇、ラジオは大きな増加、インターネット広告は1割強のプラスを示した。下げた部門では雑誌が一番下げ幅が大きく、マイナス3.7%を計上している(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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ラテはプラスを維持、新聞・雑誌はマイナス継続


今件記事で検証しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する共通要件の解説は、記事集約ページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは主要5部門の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2016年2月-2016年3月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2016年2月-2016年3月)

今件データは前年同月比を示したもので金額そのものでは無い(棒の縦方向の長さと市場規模の大小は比例しない)。同時に前回月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事における最新分の2016年2月分データと並列してグラフ化している。なお先月分の値は、先月記事で用いた速報値の後に発表されている確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門もある。ただし昨今では調査の精度が上がり、速報値と確定値との間に差が見られる事態は、以前と比べて少なくなっている(今回月は修正無し)。

ここしばらくは軟調が続いている4マス(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)だが、今回月は先月に続き、「ラテ」と呼ばれるテレビとラジオがともにプラスを維持。特にラジオは6.5%と大きな上げ幅を示している。前年同月はマイナス3.8%であることから少なからず反動の部分もあるが、それを考慮してもなおプラスには違いない(2年前同月比はプラス2.5%)。他方、マイナス領域の紙媒体は双方ともマイナスのまま。度重なる前年同月比のマイナス計上は危機感を覚えさせる。

紙媒体現状データ2015年以降4マスは概して軟調が続いている。特に紙媒体の新聞と雑誌は下げ基調が止まらず、今回月の2016年3月に至っても、2015年以降でプラスを計上した月は、2015年4月に雑誌が示したプラス2.5%の1回のみとなっている。2ケタ台の下げ率を見せたのは新聞が3回、雑誌は2回。1年分を超えてもなお前年同月比でマイナスが続いているのは、単なる反動を超えた、中期的な下げの中にあることを意味している。

↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年1月以降)
↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年1月以降)

一方、インターネット広告は前回月と比べて伸び幅は縮小したものの、1割を超える上昇率を示す形となった。公開されている元データの種類仕切り分けでは、今回月の分では最大の上げ幅である。

今回計測分となる月、つまり2016年3月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事で個々の相当する部門の動きを確認すると、「テレビは堅調」「4マスはテレビ以外が不調で新聞が特に弱い」「インターネットは博報堂がとりわけ大きな増加」を見せている。ラジオの動きは今件とは逆の方向性だが、それ以外は大よそ方向性としては一致している(見方を変えると電通・博報堂「以外の」広告代理店で、ラジオ広告が非常に良かったとも見て取れる)。

なお4マスとネット「以外」の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2016年3月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2016年3月)

海外広告の下げ幅がかなり大きなものとなっている。ただし海外広告は金額面では大したものではなく、実額としては約86億円で、インターネット広告の1/8程度。全体に与える影響は些細なものでしかない。

新聞とインターネット広告の差は1.66倍


今回も該当月(2016年3月分)における、各区分の具体的売上「高」(額)のグラフ化を行い、状況の確認をしていく。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手だが、その2社がすべてでは無い。そして各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されておらず、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。

↑ 月次広告費(2016年3月、億円)
↑ 月次広告費(2016年3月、億円)

電通・博報堂のみの広告費動向では今なお新聞がインターネット広告よりも金額的に優勢(差はわずかなものとなりつつあるが)。しかしその2社以外の大中小すべての日本国内における広告代理店を含めた今件データでは、インターネット広告のウェイトが電通・博報堂よりも高い企業も多数含まれていることから、全体に占めるインターネット広告の額比率が高めとなり、ここ数年の間に両者の金額面での立ち位置が逆転している。詳細は【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる】で解説の通り。現時点では2014年1月を最後に、新聞の金額はインターネット広告を超えておらず、金額面で4マスとインターネットにおける上位順位はテレビ・インターネット広告・新聞の順となっている。

今回月では両者の金額差は約280億円。約1.66倍の差がついている。もちろんインターネット広告の方が上。「従来型メディアの紙媒体全体の広告費」は約552億円で、これはインターネット広告費よりも下。つまり今回月も先回月に続き「インターネット広告の売上高が、大手4マスのうち紙媒体全体の広告費を上回った」ことになる。

一方話題のインターネット広告だが、中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっている。他方、その機動性の高さと使い勝手の良さもあり、金額面だけを追い続けると、浮き沈みが大きい。2011年以降は3月と12月に大きく伸びる動きがパターン化しているが、これは【ネットショッピング動向をグラフ化してみる】でも精査の通り、この時期、つまり年末と年度末にインターネット経由で商品が多く売れる時期のため、それを見込んでインターネット広告への資金投入が活性化した結果と考えられる。バレンタインデーが近づくとチョコレート関連の新商品が続々登場したり、広告をよく見かけるのと構造は同じである。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2016年3月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2016年3月)

2011年以降は明確な形で、3月と12月に突出した額が投入されていることが確認できる。ただしそれ以外の月でも多分にぶれがあるものの、上昇していることに違いは無く、中期的には確実に成長を示しているのが分かる。今回月は3月であるため、予想通り前月と比べて大きな伸びを示す形となった。また上記の通り前年同月の2015年3月と比べても増加をしている。

なおテレビ同様に金額面で突出している「その他」項目は、多種多様なスタイルの広告が織り交ぜた形となっており、技術進歩に伴い項目分けが難しくなった類の事案が次々と組み込まれ、膨張している感が強い。同じ項目ではあるはずなのだが、それこそ1年の間に構成内容が大きく膨張している可能性は否定できない。電通・博報堂の2社における動向を追った広告費関連の記事でも似たような状況が生じており、現状を把握するために用意された区分としては、前年同月比で状況精査をする際の弊害になりつつある(内部構成要素が不確かでは、状況の判断が難しくなる)。新たな部門の追加が求められよう。

次のグラフは今件記事で対象の5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。上記の通り額面が大きな部門もあるため、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2016年3む月分まで)
↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2016年3月分まで)

雑誌(黄色)と新聞(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額は漸減していくのは道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を継続して大量投入することは、少なくとも広告の直接対価によるものとしては想定しがたいので、雑誌・新聞の広告力が漸減していると広告主からは判断されていると見なせる。

そして雑誌・新聞共に紙媒体であることから、デジタル系メディアの浸透に伴い、割りを食った形となっていることは容易に想像できる。ただし紙メディアの一部は、その内容をデジタルに代えてインターネット広告を掲載する媒体の後押しをしている(新聞社によるウェブ上の無料記事展開、有料電子新聞が好例。また雑誌も続々紙媒体版との電子版同時発売スタイルに足を踏み入れている)。単純に紙媒体が衰退しつつあるのも一面だが、その上に載るコンテンツの、アナログからデジタルへのシフトが進んでいる現状を表しているとも読み取れる。そしてそのシフト具合は、それぞれ単独の広告費の挙動のみでは見極めが難しい。少なくとも「紙媒体のメディア力の低下」=「紙媒体に掲載されていたコンテンツの衰退」では無い。

昨今の動向を見返すと、やや起伏は大きいものの緑色の線で示されているインターネット広告が確実に上昇基調にあり、他の業種とのかい離が生じていること、藍色の「ラジオ」が一進一退の攻防の中にあるのが把握できる。また上記でも期間の切抜きの形でグラフ化したが、2015年に入ってから4マスの軟調さが全業種に渡って継続しているのも気になる。2014年同月からの反動でも無く、また電通と博報堂の売上でも似たような現象が起きていることから、広告市場における何らかの動きが生じている可能性は否定できまい。


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