コンビニエンスストアの商品構成別売上推移をグラフ化してみる(2015年)

2015/10/18 16:00

地域分散と多機能化で社会生活に一層深く浸透し、多くの人にとって欠かせない存在となりつつあるコンビニエンスストア(コンビニ)。トレンドを常に追いかけ、世の中の消費性向を知るアンテナ的な役割も果たしている。一方、このコンビニのフライヤーによる揚げ物や、プライベートブランドで展開される惣菜の充実ぶり、そしてカウンターで抽出される淹れたてコーヒーとそれに連動する形でドーナツをはじめとする、続々と展開される軽食アイテムの盛況さが、外食産業の牛丼御三家(吉野家、松屋、すき家)に代表される廉価系ファストフードの低迷の一因であるとする説も持ち上がっている。そこで今回はその説の補完材料を得る意味も含め、経済産業省が公開しているコンビニ関連の業績データなどを基に各種グラフ化を行い、コンビニにおける商品販売動向の推移を確認することにした。

スポンサードリンク


店舗増加分で伸びる売上…!?


今回用いるデータは【経済産業省の商業動態統計調査】のもの。ここから【統計表一覧】を選び、コンビニ販売額について、現時点で最新のデータとなる2015年8月分(確定報)まで時系列・確報データを抽出し、それを利用する。

なお商業動態統計調査ではコンビニ関係の値に関して、2015年7月分から既存店の調査・公開を中止している。そのため、それらの値を用いる際は、2015年(7月)分以降のものは公開資料内で指定されている通り、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会のコンビニエンスストア統計調査月報の値を流用する。ただし対象範囲が微妙に異なるため、厳密には連続性は無いことをあらかじめ書き記しておく。

まずは年次データ。全店(既存店(1年前にも存在していた店舗。前年同月比換算の際に店舗の増減で誤差が生じないための算出方法)では取得できないデータ項目がある)の売上動向に関して、データが公開されている1999年以降のものをグラフ化する。なおこのグラフは年ベースのもののため、現時点ではまだ2014年が最新のものとなる。

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(1999年-/前年比、全店=既存店+新店舗
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(1999年-/前年比、全店=既存店+新店舗)

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(前年比、全店=既存店+新店舗)(2014年)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(前年比、全店=既存店+新店舗)(2014年)

2008年は「タスポ効果」(利用に手間がかかるタスポが自販機のたばこ購入時のシステムとして導入され、タスポ無しに購入できるコンビニでのたばこ購入者が急増した)で、たばこが含まれる「非食品」が大きく売り上げを伸ばしている。他項目も「ついで買い」の効果を受けてプラス化。

2009年においても前半期ではその効果が継続しており、プラスの値を見せる。しかし他にプラスを維持できたのは「サービス」のみで、「日配食品など」「加工食品」はマイナス、そして「合計」はギリギリでプラスのところまで落ちている。

2010年に入るとタスポ効果も終息。10月のたばこ値上げ直前による駆け込み需要も値上げ後の反動による下落で吸収され、年ベースでは2009年よりもさらに「非食品」の伸び率は低下。「加工食品」「日配食品」の健闘のおかげでどうにか「合計」も伸び率の上ではプラスを維持出来たが、動きとしてはさえない。一方2011年はその「さえない」動きを見せた2010年の反動(「前年」比で計算されるから)に加え、震災起因による一部商品の特需が発生し、特に「非食品」(乾電池や懐中電灯なども含む各種雑貨もこの項目)が大きく伸びることとなった。

2012年はたばこの売り上げはいまいちで「非食品」も低迷。一方で「日配食品など」の伸びは堅調で、2010年以降3年連続して前年比プラスかつ伸び率をかさ上げしている。

2013年に入るとたばこの勢いはさらに落ちて「非食品」の上げ幅も低下。一方で「日配食品など」「サービス」は大きく伸び、これらが貢献する形で全体もわずかながら上昇幅を拡大する。

2014年では「サービス」がやや伸び率が後退しているものの堅調な上昇率に違いなく、これはコンビニの機能多様化や情報端末の活躍による所が大きい。他の部門も伸び率に差異はあれど前年と比べてすべて上昇率を底上げしており、景況感の回復や機能集約化に伴う集客をはじめとした相乗効果が出ているものと思われる。

なお2014年4月からは消費税率が引き上げられたため、その影響が生じている可能性もあるが(販売額には消費税分を含んでいる)、実取引単価の上昇に伴い販売個数の減少も同時に想定されるため、大勢に影響は無いものと思われる。また「日配食品」の大きな上昇率は、後述するように惣菜の充実やカウンターコーヒーによるところが大きいと考えられる。

次のグラフは既存店のみの売上の前年比推移。1999年以降は「1999年」と「タスポ効果が明らかな2008年」以外はすべてマイナスとなっていた。そして2011年は「たばこ値上げ騒動の反動」と「震災特需」で大きくプラスに転じたのが確認できる。しかしそれらの影響も翌年になると薄れ、再びマイナス圏に逆戻りしてしまう。2013年では下げ幅をさらに拡大するが、直近2014年ではかろうじてプラスに転じることとなった。

↑ コンビニエンスストア売上推移(1999年-/前年比、既存店のみ)
↑ コンビニエンスストア売上推移(1999年-/前年比、既存店のみ)

店舗数増加分は加味されていないので、2014年の上昇は多分に消費税率引上げによるもの……と考えるのはやや早計。月次データをさかのぼり確認すると、消費税率引上げ前の2014年2月からすでにプラスに転じており、導入後の4月はマイナス、あとは8月にマイナスが見られるだけで、残りはプラス。3月はたばこなどの駆け込み需要によるものだろうが、2月の時点ですでにプラスに転じていることから、消費税率によるところはあまり大きなものでは無く、むしろ景況感、コーヒーなどの訴求力のある商品の成果と見た方が道理は通る。

つまりコンビニ業界では2014年における特殊事例のような状況をのぞけば「新展開の店舗の売上の積み増しで、全体の売上額のアップを支えている」と表現できる。よく言えば「常に前進する」「店舗数レベルでの拡大政策」、見方を変えれば「止まったらしぼむ」「走り続けていないとマズイ」と表現できよう。

あるいは店舗数による商用領域の拡大により、一層の汎用化・普及化・地域浸透を促進することで、類似競合他業種の客(の消費)をシフトさせる、刈り取る施策を無意識のうちに行っているのかもしれない。いわゆる「囲い込み戦略」というものだ。日常における行動範囲・距離が短めとなる中堅層以降、特にシニア層の需要をつかむには、莫大なるリソースが必要となるものの、もっともシンプルで確実な方法ではある。【コンビニエンスストアの経済・社会的役割を経産省がまとめたよ】で紹介した、経産省のレポートがその裏付け・論理的補完材料にもなる。

月次推移で詳細を確認する


続いて月次データでグラフを生成する。取り扱い期間を2007年1月以降にしたグラフをベースとし、さらにはたばこの値上げ絡みの動きや震災の影響がより分かりやすいよう、2010年以降に限ったグラフも併記する。

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2007年-/前年同月比、既存店)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2007年-/前年同月比、全店)

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2010年-/前年同月比、既存店)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2010年-/前年同月比、全店)

「タスポ効果」によりもたらされた2008年5月以降の「非食品」の急激な伸びが一目で分かる。合計売上も大きく伸びており、他の分野でも一部プラスを見せていることから、「ついで買い」による相乗効果も合わせてコンビニの業績に大きく貢献している。一方で2009年後半以降は反動で、「非食品」が前年同月比でマイナスに転じ、他の項目もそれにつられる形でマイナスとなり、あるいはマイナス幅を大きくしているのが確認できる。

また、「タスポ効果」以前に「非食品」の大きな上下が起きているが、これはグラフ中に記したように、2007年6月は1年前のたばこ値上げ直前の駆け込み需要の反動によるマイナス、2007年7月はたばこ値上げ後の買い控えの反動によるプラス。これと似たような動きがさらに大規模に、2010年10月のたばこ値上げに伴い発生している。具体的には2010年9月に大幅増・10月に大幅減、その反動が2011年9月(大幅減)・10月(大幅増)といった次第である。

2011年はやや状況が複雑で、「2010年のタスポ効果反動」の反動による底上げでややプラスへ、2011年3月の東日本大地震・震災以降は特需発生によるプラス化・「サービス」の自粛行動によるマイナス化、そして2011年9月以降は「2010年10月のたばこ値上げに伴う乱高下」の反動による大きな振れが生じている。「非食品」の動きだけを見ても、「震災起因の需要増加(電池など普段在庫的に置かれてい商品の需要急増)も小さからぬ影響を与えているが、それにも増して2010年10月のたばこ値上げの影響は大きく、持続性は低いものの2008年のタスポ効果すら上回っていた」のが改めて実感できる。

2012年2月には「サービス」が大きく伸び、その翌年2013年2月には大きな下げが見受けられる。これは2012年2月に宝くじ売り場だけでなくローソンでも発売された「復興支援宝くじ」によるところが大きい(【寒さでホット商品が売れる・復興宝くじもプラスに働く…2012年2月度コンビニ売上高は4.8%のプラス】)。

2013年に入ってからは「日配食品など」と「サービス」が堅調に推移し、それらが全体を支える形となっている。これは前者は後述するようにカウンターコーヒー、惣菜やファストフードの健闘、後者はプリペイドカードの伸長や情報端末経由による各種予約サービスの利用に伴うものである。幅広い商品の取り扱い、サービスの展開が利用され、売り上げに貢献する形となっている。

そして2014年では4月1日からの消費税率改定に伴い、駆け込み需要とその反動が生じている。しかし上昇幅が小幅であったところから、特需と反動も小規模なものに留まっている状況が確認でき、興味深い。非食品も導入前後、そしてその1年後に反動の形で大きな凸凹が生じているが、2010年10月のたばこ値上げや震災などの影響と比べれば微々たるものである。

日配食品にスポットライトを当てて……


そして今回注目すべき項目「日配食品など」だが、たばこ購入者による「ついで買い」で発生する底上げ効果を考えれば、2012年中盤以降は低迷しても不思議ではないものの、引き続き前年同月比でプラスを維持している。振れ幅こそ違えども2010年6月以降プラス値は継続しており、たばこが主要商品の「非食品」との連動性は薄れている。2013年2月は日取りや天候要素に伴い上昇幅を縮小したが、それでもプラスは維持されている(グラフは絶対値では無く前年同月比であり、プラス領域ならば増えていることに注意)。

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2010年-/前年同月比、全店)(日配食品と非食品)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2010年-/前年同月比、全店)(日配食品と非食品)

↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2010年-/前年同月比、全店)(日配食品など)
↑ コンビニエンスストア商品構成別売上推移(2010年-/前年同月比、全店)(日配食品など)

「日配食品など」は震災後においては、商品の入荷困難などを原因としてやや凹んでいるものの、それでも前年同月比でプラスを維持。その後も順調に伸び続け、2012年に入ってからも5%強の伸びを示し続けている。特需やイベントなどのプラス的な影響は表れにくいが、地道に、そして確実に成長を続けている。特に2013年に入ってからは順調な成長ぶりを示しているように見受けられる。フライヤーによる各種揚げ物系食品に加え、【コーヒー飲料の購入動向をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))】でも解説の通り、家計単位での消費動向にも数字として表れている、カウンターコーヒーの堅調ぶりがこの数字の動きからも改めて認識できるというものだ。



グラフの形で売上推移を見ると、「タスポ効果」「大幅値上げ前後の動き」だけでなく、コンビニの売上が「たばこ」(や【「タスポ効果」が一目瞭然・コンビニエンスストアの商品構成別売上推移をグラフ化してみる】で解説した「ハイウェイカード」)に代表される、「世の中の仕組みの変更」で左右される場合が多い実態が分かる。とりわけここ数年においては、「たばこ」に影響を受けている。

一方、今回スポットライトを当てた「日配食品など」は、世の中の仕組みの変化にとらわれず、むしろ自ら流れを創る形で確実に成長を続けている。ローソンの「プレミアムロールケーキ」に始まるプライベートブランドでのスイーツ開発・展開競争が良い例である。

また昨今では高齢者の利用増加に注目し、和菓子にスポットライトを当てて独自ブランドを展開して高級感を演出すると共に積極展開したり、主婦が気軽に買い物できるよう、レジ前のフライ系惣菜を充実させ、さらには自前の畑や近隣の農家から仕入れた野菜を店頭販売しはじめるなど、幅広く、そして手堅い手法で日配食品を中心にお客の取り込みを図っている。その上、以前から注目を集めていたプライベートブランドによるおかずの提供もさらなる充実を見せ、食品スーパー顔負けの充実さを見せている。

低価格のお弁当の展開もそれらの「食品戦略」の一つ。客単価そのものは低くても、常連客を獲得できれば将来に期待ができる。さらには「たばこ」、そして「雑誌」のような、かつてはコンビニの主役的立場にあった商品の代替品的位置づけがなされている、カウンターにおける淹れたてコーヒーの提供も積極的に行われており、良い結果が出ている。これについてはいくつかの別記事で解説しているが(例えば【たばこ・雑誌からコーヒー・カードへ…今年の一年のコンビニ動向を振り返ってみる(2013年)】)、安定した売り上げとリピーターの確保、イートインコーナーの設置・充実によりアロマ的効果に加え、雑誌がその効力を失いつつある「ガラス越しに店内のお客を見せることによる呼び水的な集客効果」も期待できる。

今データだけでは「牛丼のお客がコンビニに流れた」との断定は難しい。それこそ具体的に利用客に「牛丼などのファストフードの利用を取りやめ、コンビニ利用を増やしたか」との類の調査をしない限り、利用客の因果関係的なシフトは確認できないからだ。しかし容易に競合しうる「日配食品」の堅調さは疑う余地もない。

昨今のコンビニにおける新サービスや商品展開の動向に関して納得できる結果であると同時に、「コンビニの食材の充実ぶりが、牛丼チェーンをはじめとする廉価ファストフード業界からの利用客のシフトを招いている」とする推測の確証度は高められた、少なくとも相関関係は確認できたと見て良い。さらにいえば震災以降の消費性向の一つの動きである「中食化」もまた、コンビニを後押ししていると考えられる。その上、牛丼チェーン店側も利用客の消費性向に気が付いたのか、この数年は客単価を引き上げる方向へかじ取りをしているが、これはコンビニとの競合を避ける施策のようにも見受けられる。

今後も定期的に同じスタイルで実績値にチェックを入れ、コンビニ自身だけでなく、周辺業界の動向を推し量りたい。特に今回軽く触れたが、「サービス」に該当するプリペイドカードが急激に浸透していることもあり、次回更新の機会には、その分野の動きにも注意を払うことにしよう。


■関連記事:
【コンビニ来訪客の世代分布をグラフ化してみる】
【コンビニコーヒーのリピート率8割超え】
【コンビニ利用者約9割、利用時間帯は早朝と夕方がピーク】
【コンビニでの「1店舗あたりの」たばこ販売動向をグラフ化してみる(最新)】
【コンビニ四天王の売上高などをグラフ化してみる】
【ファミリーマートとユニーグループの経営統合、ようやく詳細確定・決着】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー