貯蓄率減少は本当なの? 家計の貯蓄率をグラフ化してみる(単身勤労者世帯版)(2015年)

2015/09/29 13:00

先日【貯蓄率減少は本当なの? 家計の貯蓄率をグラフ化してみる】において、複数の情報源をもとに、貯蓄率(収入のうちどれだけの割合を蓄財に回せるか。要は家計の余裕を示す指針)の動向を確認し、昨今話題に登っている「貯蓄率が減少している」傾向は、主に「貯蓄率が低い、あるいはマイナスの高齢者の絶対数、人口そのものに占める割合が増え、結果として全体の貯蓄率を減退させている」ことが原因であることを解説した。今回はそれをさらに裏付けするため、単身世帯、特に貯蓄率に係わる対象となる勤労者世帯における動向を確認していくことにする。

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貯蓄率を算出する家計調査の定義などを再確認


今回用いる値の取得元は、総務省統計局の【家計調査】。貯蓄率の概念に一番近い「黒字率」の動向を確認していく。その定義は次の通り。

・総務省の家計調査における「黒字率」
 ……可処分所得から消費支出を引き、それを可処分所得で割ったもの。経済関係の文献では家計貯蓄率、あるいは貯蓄率として、「黒字率」のうち、特に勤労者世帯の「黒字率」を指している事が多い。

※非消費支出……税金・社会保険料など
 消費支出……世帯を維持していくために必要な支出
 可処分所得……実収入から非消費支出を引いたもの

勤労者世帯に限定することが多いのは、非勤労者世帯の場合は勤労所得が無いことから、貯蓄率は基本的にゼロ以下になるため。年金給付も実収入に含まれるが、年金だけで生活ができる人はほとんどおらず、預貯金の切り崩しなどでまかなっている。【年金生活をしているお年寄り世帯のお金のやりくりをグラフ化してみる】にもある通り、2014年における60歳以上の単身世帯の平均貯蓄率はマイナス40.8%、夫婦世帯はマイナス34.6%である。

今回の精査でも原則、単身世帯のうち勤労者世帯を元に各計算を行っていく。

直近の単身世帯のうち勤労者世帯の黒字率は33.8%


早速最初に計算を行うのは、単身世帯のうち勤労者世帯における、直近2014年分の黒字率。全体では33.8%となっており、可処分所得のうち1/3強が黒字となり、何らかの形で貯蓄に回されている。

↑ 黒字率(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯、2014年)
↑ 黒字率(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯、2014年)

黒字率は男性の方が女性よりも高い。これは元々男性の方が可処分所得が大きいのに加え、消費支出がさほど変わらないため。一方で男性では年上ほど黒字率が高いが、女性は低くなっている。これは年上の女性は男性と比べ、持ち家率が高く、そのローン返済の負担が大きくなっているからに他ならない。また、歳が上になるに連れて生じる実収入の上昇度合いも、男性と比べて低いのも一因。

↑ 単身勤労者世帯における主な収支(男女別)(2014年、1か月あたり)(万円)
↑ 単身勤労者世帯における主な収支(男女別)(2014年、1か月あたり)(万円)

そして次に示すのが、肝心の黒字率。34歳以下、35歳から59歳、そして平均値の3項目の推移を、男女合計、男性、女性それぞれについて示している。

↑ 黒字率推移(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)
↑ 黒字率推移(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)

↑ 黒字率推移(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)(男性)
↑ 黒字率推移(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)(男性)

↑ 黒字率推移(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)(女性)
↑ 黒字率推移(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)(女性)

女性はやや振れ幅が大きいものの、全体、男女それぞれで見ても、個々の年齢階層別、全年齢層でも、黒字率に大きな変化は無い。あえて傾向を見出すとすれば、34歳以下の黒字率がいくぶん上昇しているようにも見える。それだけ懐に余裕が出て来たのか、あるいは備えへの注力を増しているのかまでは不明だが、黒字率≒貯蓄率が増加している雰囲気があることに違いは無い。

単身世帯でも漸減する勤労者世帯、そして高収入が期待できる若年から中堅層


単身勤労者世帯では貯蓄率の減少傾向は無く、むしろ若年層では増加する気配すら確認できる。ではなぜ全体としての貯蓄率≒黒字率が減退しているのか。それは先の記事でも触れている通り、貯蓄率が必然的にマイナスとなる高齢層、特に非勤労者世帯が増加し、全体の値を引き下げているからに他ならない。

次に示すのは今回の精査の際に用いた元データから生成した、単身世帯の構成比率推移。実収入が多い60歳未満の勤労者世帯が漸減し、勤労者でも多分に一度退職してからの非正規などでの再就職で実収入が低く、当然黒字率も低くなる、あるいはマイナスとなる人か多い60歳以上の勤労者世帯、さらには勤労所得などが無く、多くの世帯で黒字率がマイナスとなる非勤労者世帯(大部分は年金生活の高齢者世帯)の比率が上昇している。

↑ 単身世帯の構成比率推移(家計調査)
↑ 単身世帯の構成比率推移(家計調査)

残念ながら60歳以上の勤労者世帯における黒字率の算出は不可能だが、少なくとも60歳未満より低いのは明らか。データが取得可能な2002年以降2014年までの間に、非勤労者世帯が10%ポイント近く増え、60歳以上の勤労者世帯も2%ポイント近く増加している。これではたとえ中堅層までの単身勤労者世帯で黒字率が横ばい、あるいは増加傾向にあったとしても、単身世帯全体では黒字率がマイナスとなるのは、必然の話でしかない。

そしてこの状況は二人以上世帯でも容易に想像ができる。



結論としては先の記事、そして今記事の冒頭でも言及している「全体としての黒字率が減少の動きを示しているのは、黒字率が小さい、あるいはマイナスになることが必然とされる高齢者、特に非勤労高齢者世帯が全体数比で増加し、平均値を引き下げている」からに他ならない。この現象は他の経済指標、例えば携帯電話利用料金の家計負担(の一因)でも現れており、留意が必要になる。

余談ではあるが、今精査の際に合わせて抽出した、他の経済的指標となりそうな値を二つほどグラフにしておく。

↑ 家賃・地代を支払っている世帯の割合(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)
↑ 家賃・地代を支払っている世帯の割合(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)

↑ エンゲル係数推移(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)
↑ エンゲル係数推移(家計調査、単身世帯のうち勤労者世帯)

実のところ単身世帯のうち勤労者世帯に限れば、借家暮らしをしている人の割合はさほど変わらない。あえて傾向づけるとすれば、34歳以下でやや上昇しているだろうか。またエンゲル係数は明らかな上昇を示している。食の多様化、物価の上昇が影響しているのかもしれない。


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