特需の影は薄れつつ…「小学一年生」-「小学六年生」などの部数動向(2015年10-12月分)

2016/02/16 05:00

社団法人日本雑誌協会が2016年2月12日付で発表した、「印刷証明付き部数」の最新データ(2015年10月から12月分)を基に、多様なジャンルに渡り、各種雑誌の部数動向を精査し、個々の雑誌だけでなくそれぞれのジャンルのすう勢を精査している。今回は一連の記事の締めくくりとして、小学生向け、さらには幼稚園児向け雑誌の部数動向を確認していく。少子化やメディアの多様化に伴い市場の縮小が危惧される中で、これらの雑誌の部数動向はいかなる動きを示しているのだろうか。

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残存誌「小学一年生」「小学二年生」の動向やいかに?


データの取得場所の解説、「印刷証明付部数」など用語の説明、諸般注意事項、バックナンバー的記事はまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】上で説明済み。必要な場合はそちらで確認のこと。

社団法人日本雑誌協会の公式サイト上でデータが取得できる2008年4月-6月分以降の、「小学一年生」から「小学六年生」までの「印刷証明付き部数」を取得し、その推移を示したのが次のグラフ。「GAKUMANPLUS」は「小学五年生」「小学六年生」の統合・刷新版として登場した雑誌のため、あえて今グラフに含めている(すでに休刊しているが)。

↑ 小学一年生から六年生の印刷証明付き部数推移(2015年10-12月期まで対応)
↑ 小学一年生から六年生の印刷証明付き部数推移(2015年10-12月期まで対応)

子供は歳を重ねるにつれて好奇心が旺盛になり、また手段や知識が多様化する。そのため定番雑誌以外の雑誌や媒体を求める欲求が増し、保護者もそれに応えるようになる。

また昨今では子供が小学生、さらには幼稚園・保育園児の時期からスマートフォンやタブレット型端末を貸し与える保護者も少なくない。子供への情操教育などまで合わせ、子供向けの学習用タブレット型端末をパッケージ化した教育プログラムも多数の関連企業から展開されており(ベネッセの「チャレンジタッチ」が好例)、それらが学習用も兼ねた子供向け雑誌の代替品として扱われる面もある。結果、高学年向け雑誌になるほど購買対象種類は増え、一雑誌あたりの購入部数は減っていく。今グラフではその実情が見事に現れた形となっている。

その上、昨今の雑誌業界全体の不況のあおりを受け、該当雑誌は次々に休刊。かつてこれらの雑誌で育ってきた大人にはショックな話ではあるが、現在は「小学三年生」「小学四年生」「小学五年生」「小学六年生」が休刊しており、発行を続けているのは「小学一年生」「小学二年生」の2誌のみ。

残った2誌は上記の解説通り低学年向けであることから部数も多く、また季節変動も激しい。そしてその季節変動による上限を毎年漸減させながら、部数が減退する傾向にあった。

直近期における前年同期比、つまり季節変動などを考慮しない、純粋な各雑誌におけるすう勢は、「小学一年生」ではマイナス7.9%、「小学二年生」はプラス1.6%。1年前までの大規模なマイナス基調とはやや様相が異なる。これは多分に「妖怪ウォッチ」特需の余韻によるところが大きい。これらの作品の特集や特別付録の展開が相次ぎ、子供の購入性向を大きくかきたてる形となり、結果として下落圧力の大きい部数も底支えされることとなった。また上記で具体例として挙げている、競合媒体の「子供向けタブレット型端末を主軸とした教育プログラム」のメインサービス「チャレンジタッチ」を展開するベネッセで大規模情報漏えい事件が起き、それを受けて今記事で取り上げている諸雑誌にシフトした事例も少なからず影響しているものと思われる。事案発生からは随分と月日が経っているが、「いぬのきもち」「ねこのきもち」の動向同様、一度生じた不信感による流れは、なかなか押しとどめる事はできないようだ)。

幼稚園関連誌を追加し状況を再確認すると…


「小学●年生」の現存誌が2誌でしかなくなったことを受け、当サイトの一連の記事では幼稚園児向け雑誌を加え、精査を行っている。対象として「入学準備学習幼稚園」「幼稚園」「たのしい幼稚園」の3誌を加え、再構築したのが次のグラフ。タイトルに「など」が入っていることに注意。

↑ 小学一年生から六年生などの印刷証明付き部数推移(2015年10-12月期まで対応)
↑ 小学一年生から六年生などの印刷証明付き部数推移(2015年10-12月期まで対応)

追加した幼稚園関連の3誌の動向を「小学●年生」シリーズと重ねたが、幼稚園向け雑誌では小学生向け雑誌のような、「春に伸び、冬に落ちる」といった年単位での季節変動的な特性は確認できない(ここ数年に限れば「たのしい幼稚園」がややその傾向があるように見える)。一方で、幼稚園児向け雑誌もまた小学生向け同様に、中期的にはその部数を減らしているのが分かる。上記で触れた「妖怪ウォッチ」特需に関しては、同様の動きが「幼稚園」で発生していたのが見て取れる。

このグラフから休刊中のものを除外し、記事執筆時点で刊行中のものに限定し、グラフを再構築したのが次の図。

↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園回り(一部)の雑誌・印刷証明付き部数推移(2015年10-12月期まで)
↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園回り(一部)の雑誌・印刷証明付き部数推移(2015年10-12月期まで)

休刊誌による情報ノイズ的なものが無くなり、見た目はすっきりとしたものになった。無論それで刊行中の雑誌の状況が変化するわけでは無く、全体的にはじわじわと部数が削られていく状況が改めて分かる。そして一方で最近における一部雑誌における特異な上昇ぶりも認識できる。

その特異な動きを一層分かりやすくするため、各年の同四半期の動向に絞ってグラフを再構築したのが次の図。季節変動を考慮せずに済む、年ベースでの動向を推し量ることができる。

↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園回り(一部)の雑誌・印刷証明付き部数推移(各年10-12月期のみ)
↑ 現存「小学●年生」シリーズと幼稚園回り(一部)の雑誌・印刷証明付き部数推移(各年10-12月期のみ)

一部イレギュラーはあるもののほぼ右肩下がりで推移してきた現存誌において、2014年では明らかにこれまでとは異なる動きを一部で示しているのが一目でわかる。2015年では「小学一年生」は明らかに失速、「幼稚園」はわずかに落ちて特需効果が薄らいでいるようだが、「小学二年生」では継続して増加する動きが見受けられる。



子供向け教材の不調さの一因として良く語られる「少子化」だが、状況として存在する以上、その影響がないわけでは無い。しかし今記事グラフの領域時期に該当する期間中に、幼稚園児や小学生が半減するようなスピードで少子化が進んでいるわけではなく(【小学生や中学生の数の推移をグラフ化してみる】で確認済み)、少子化だけを理由とするのには無理がある。

「小学●年生」で現存しているのは、現時点では2誌「小学一年生」「小学二年生」のみ。経験則から死活ラインとなる5万部切れは阻止されているが、「小学二年生」はひやひやものの状況にある(昨今では特需でやや回復状況に向かいつつあるが)。

該当雑誌各誌でも付録の充実化やインターネットとの連動企画の積み増し、現在の子供の趣向に合わせた特集記事の展開やイベントの実施など、努力を重ねているのは間違いない。付録のアイテムの中には、大人でも物欲を駆られそうなものすら登場するほど。

しかしながら現状の手立てでは、状況を改善させるまでには至っていない。ライバルとなるメディア、具体的にはタブレット型端末やスマートフォン、そして【小学一年生・二年生などの子供向け学習雑誌の不調と、ライバルらしきもの】や本文でも指摘した「チャレンジタッチ」のような、競合他社の総合メディア型学習システムに太刀打ちできるだけの訴求力を持ち合わせていないと、保護者に判断されていることになる。しかも今ジャンルでは一様に部数減退を続けており、参考になりそうな雑誌が存在しないのも難儀なところ。

この数四半期の間に生じている一部雑誌の特需による大きな復調は、起死回生の手掛かりを得たことになる。単発ではドーピングと指摘されるが、方策の一つは確実に捕えている。今後はいかにこの施策を断続的に続けることができるか、感度の高い子供市場に向けたレーダーの実装と、即時に対応できる機動力、そして企画力の高さが求められよう。子供を育てる立場にある保護者の納得がいくものを創り上げるのはもちろんだが、子供自身が興味関心を抱き、保護者にねだるほどの魅力を創生し盛り込み続けるのも、職人ならではの使命であり、状況改善の道の一つに違いない。

単純計算だが、「特需」が一年間継続するのなら、毎年新たな「特需」ネタを発掘・創生できれば、現状維持、さらには状況回復もかなうことになる。あるいは「チャレンジタッチ」に類した手法ができないものか、模索するのもアリかもしれない。


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