「プレジデント」がプレジデント状態継続中…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2015年10月-12月)

2016/02/15 05:00

インターネットに代表される電子情報技術の加速的進歩、機動力に長けたスマートフォンの普及浸透で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の情報をつかさどる専門誌では、正しさはもちろんだがスピーディな情報展開への需要が天井知らずのものとなる。デジタルとの比較で生じる時間的遅れは紙媒体の致命的な弱点となり、その弱みをくつがえすほどの長所が今の専門誌では求められている。このような状況下の「ビジネス・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2016年2月12日付で発表した、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

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「プレジデント」一強時代に変化ナシ


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近にあたる2015年の10-12月期とその前四半期に該当する、2015年7-9月期における印刷実績。

↑ 2015年7-9月期と2015年10-12月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2015年7-9月期と2015年10-12月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

今四半期では追加・脱落雑誌は無し。ただし不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今回は顔を見せたため、グラフに反映されることとなった。ただし前四半期は存在しなかったので、当然その部分は空白となっている。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から継続する形でトップ。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは3倍近くもの差をつけている。部数変移も安定しており、まさに王者の風格。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2015年10-12月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2015年10-12月期まで)

2013年後半から始まった上昇傾向に変わりは無い。現在は踊り場的な状況だろう。この流れを維持できれば、あと数年で40万部への大台に手が届きそうである。

プラスが1誌、マイナス6誌…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前四半期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手身近に各雑誌の状態を知るのには適している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2015年10-12月、前四半期期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2015年10-12月、前四半期期比)

今四半期ではプラス領域は「週刊ダイヤモンド」の1誌のみ。一方でマイナス領域は6誌で、誤差を超えた下げ幅は「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」と「THE21」。

「COURRiER Japon」は前四半期比ではマイナス1.8%に留まっているが、明らかな減退傾向に違いは無い。かつて期待の新星として上昇機運真っ只中にありながら天井感の後、失速。今四半期でも再び減退を見せ、記録のある限りでは最少部数を更新してしまう。

↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2015年10-12月期まで)
↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2015年10-12月期まで)

かつての上昇機運に乗る前の平均的な値である6万部を切った現状は、大いに憂いを覚えると共に、早急なてこ入れの必要性を認識すべき状況……ではあるのだが、先日【「クーリエ・ジャポン」が来年2月で休刊、有料会員制のウェブサービスに移行】でも伝えた通り、同誌は2015年2月25日発売の4月号で休刊となり、有料会員制のウェブサービスに移行することが決まっている。ここしばらくの部数減退ぶりを見れば、媒体を変えて起死回生のための決断なのかもしれない。もちろん、印刷証明付き部数は掲示されないことになる。

上げ下げ半々な前年同期比動向


続いて前年同四半期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2015年10-12月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2015年10-12月、前年同期比)

誤差領域を超えた伸び率を示したのは「THE21」「プレジデント」の2誌、明らかなマイナス基調は「COURRiER Japon」「¥en SPA!」の2誌。「プレジデント」は躍進状態にあることが年ベースでも把握できた次第だが、「THE21」は意外といえば意外かもしれない。ただ中長期の動向を見れば分かる通り、下げ基調の中の盛り返しなのが現状であり、むしろこれからこのペースを維持できるかが注目のポイントといえる。ただしこの2四半期では失速の動きに転じているので留意が必要となる。

↑ THE21 印刷証明付き部数(2015年10-12月期まで)
↑ THE21 印刷証明付き部数(2015年10-12月期まで)

他方「COURRiER Japon」は年ベースでも大きく下げているが、状況は上記で説明の通り。下げ基調の真っただ中にあり、ブレーキが利かない状態だった。その結果が休刊と電子媒体としての新生となる次第。今後の動向を推し量ることは難しいが、コンテンツが評価され躍進が続けば話題に登り、あるいは不定期刊として再び紙媒体版がお目見えする事もあるだろう。



内容の斬新さから注目を集めると共に部数を伸ばしていた「COURRiER Japon」が、編集方針の変更と思われる内容性向の変化と共に失速し、書籍的な保存を半ば目論んだ企画構成の「PRESIDENT」(昨今では失速したが「THE21」も系統的には近い)が確実に部数を伸ばす動きを示していることから、記事冒頭で触れている「インターネットにスピード感では絶対に太刀打ちできない、紙媒体としての専門誌の勝利の方程式」の一つに、内容の充実性、さらに突き詰めれば蓄積性、保存性の高さの強調がある感は強い。例えば今回該当期間中に発行された中でも「金持ち老後、貧乏老後」「平気で人をだます人、攻撃する人」「毎日が楽しくなる手帳術」などの特集は、そのタイトル名だけでぐいっと多くの人のハートをとらえて引き寄せるだけの印象を有している。

それだからこそ、以前の記事でも指摘しているが、【近藤誠×和田秀樹 「決定版! 頼れる病院、危ない病院"特集...ダークサイドに入り込んだ感じ】のような記事の展開を「PRESIDENT」が行ったのは残念であり、違和感を覚える。一時的な注目、部数上昇は果たせるかもしれないが、中長期的にはそれ以上の何かを失うリスクは多分にある。

元々ビジネス誌の多くは連載物、あるいは特集の記事を再構築して加筆し、書籍として再展開する傾向が強い。コミック誌における雑誌連載と、その集約+描き下ろしによる単行本のような関係ではある。雑誌の掲載時点で捨て置かれる程度のものでは無く、保存して単行本のごとく取り扱ってもらう、価値あるものとしての作りを成すのは、雑誌そのもののセールスを高める点では一つの方法論としてありうる。たとえ月刊誌でもコミック誌を保存している人はあまりいないが、ビジネス誌なら結構多くの人が保全しているのではないだろうか。

「PRESIDENT」が見つけた「方程式」も、その考えにのっとったものなのかもしれない。


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