また一誌、非公開化へ…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2015年10月-12月)

2016/02/14 11:00

ゲームそのものの楽しさの提供だけでなく、周辺の人達とのコミュニケーションのための媒介・ツールとしての役割も大きい家庭用ゲーム機とその対応ソフトは、スマートフォンの普及浸透とそれ用のゲームアプリの大々的な展開で、大きな転換期の中にある。ただでさえインターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視されるゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる中で、二重の危機誘発要因の到来に違いない。「アプリ系ゲームの紙媒体専門誌を出せばよい」との意見もあるが、あまり上手くいった事例を聞かないのは、情報の更新伝達スピードがマッチしないのが主な要因だろう。まさに四方の行く手をさえぎられた状態のゲームやエンタメ系の専門誌の実情に関して、社団法人日本雑誌協会が2016年2月12日付で発表した、主要定期発刊誌の販売数を「各社の許諾のもと」に「印刷証明付き部数」として示した印刷部数の最新版となる、2015年10月から12月分の値を取得精査し、現状などを把握していくことにする。

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Vジャンはトップに変わりなし、だが…部数現状


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語の内容に関する説明、読む際の諸般注意事項、さらには類似記事のバックナンバー一覧に関しては、一連の記事のまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明済み。必要な場合はそちらで確認のこと。また記事のカテゴリ名をクリックしてたどれる同一カテゴリの記事一覧からも、印刷証明付き部数関連の記事の過去のものを確認できるので、その手段も併用してほしい。

まずは最新値にあたる2015年の10-12月期分と、そしてその直前四半期にあたる2015年7-9月期における印刷実績をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 2015年の7-9月期と2015年10-12月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2015年の7-9月期と2015年10-12月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

大よそ部数は青よりも赤の方が短めで、減退している様子が分かる。他方、最大部数を誇る「Vジャンプ」は明らかに赤棒の方が長く、部数が伸びたのが一目で分かる。「PASH!」もわずかではあるが、赤棒の方が長い=部数が伸びている。

今四半期では「ファミ通DS+Wii」が非公開化してしまった。同誌は長らく任天堂の家庭用ゲーム機・携帯ゲーム機向けの情報誌として展開しており、部数減退著しいものの、昨今では「スプラトゥーン」の盛況ぶりもあり、わずかながら復調の兆しを見せていた。ところが創刊から200号となる2016年1月21日売りの3月号で、月刊誌としての発行を終了し、以後は不定期刊行となるとの情報が寄せられている。現時点で公式サイト・関係者のソーシャルメディアアカウントなどにその言及は無く、また広告出稿関連サイトでも次号の出稿スケジュールが確認できるため(【AD MediaGuide ファミ通DS+Wii】)、確定情報では無い。しかし該当する3月号の体裁(本誌は34ページ、別冊付録が50ページ)などもあり、同誌の状況は色々と察することができる。

↑ ファミ通DS+Wii印刷実績(部)
↑ ファミ通DS+Wii印刷実績(部)

なお半年前に部数公開から脱落した「週刊アスキー」と「電撃PlayStation」の復活の兆しも無し。「週刊アスキー」は【週刊アスキー、紙媒体版は5月末で終了し、今後はネットへシフト】で伝えた通り紙媒体としての発行は終了し、今はデジタル媒体上での展開となっているため、当然印刷証明付き部数は存在しない。一方「電撃PlayStation」は現在もなお紙媒体として新刊が定期的に発行されており、休刊や電子化による非公開化では無い。

「電撃PlayStation」と似たような現象は以前「ニュータイプ」でも起きており、それも合わせ発売元であるKADOKAWAの方針の可能性は否定できない。株式公開企業や大型企業による法的な公開義務はないものの、すでに公開していた数字を非公開化する施策は、情報の非開示化との姿勢としては残念と評せざるを得ない。

ともあれ現在印刷証明部数を掌握しているゲーム・エンタメ誌は、今回の「ファミ通DS+Wii」の非公開化に伴い7誌にまで減少している。すでに公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」は皆無、「ゲーム・アニメ情報誌」でも6誌にまで減少しているのが現状。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

とはいえ、類似の主旨を持つカテゴリが存在しそうにないのも悩みの種。類似・同一ジャンルの雑誌としては例えば「Nintendo DREAM」「娘TYPE」が挙げられるが、印刷証明部数は非公開。残念ではある。

プラスは2誌…前四半期との相違確認


次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2015年10-12月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2015年10-12月期、前期比)

プラス領域を示したのは「PASH!」と「Vジャンプ」の2誌。いずれも誤差範囲の5%を超える上昇ぶりを示している。

まず「PASH!」だが、独自路線、そしてかつては「進撃の巨人」特需で大きく背伸びをしていたが、その特需の終結と共に失速状態に移行。しかし今回は確実に部数を伸ばしている。これは昨今雑誌界隈を大きくにぎわせている「おそ松さん」特需の恩恵によるものと考えられる。2015年12月発売の2016年1月号では、「おそ松さん」と「K」が表紙絵として採用され、さらに「おそ松さん」の大判ポスターの付録、オリジナルパスケースの応募者全員サービスが実施されている。これらの要素が同誌のセールスを持ち上げたと考えれば十分に道理は通る(「おそ松さん」放送開始は2015年10月)。

↑ PASH!印刷実績(部)
↑ PASH!印刷実績(部)

なお【「PASH!」がおそ松さんポスターで6万部完売・さらに重版との話】でも伝えている通り、該当号は6万部が完売となり、1万部の重版が実施されたと伝えられている。該当期間に発刊された号すべての平均値が計上されることから、今回四半期では1割強の増加に留まっているが、次号以降も同じ勢いを見せるのならば、次回精査時にはさらに値を上乗せすることは容易に想像ができる。

今ジャンルで最大部数を示している「Vジャンプ」はプラス5.4%。部数の大きさを考えれば大健闘の値。これは付録カードの効用によるところが大きい。カードゲームファンは常に一定数存在し、その雑誌購入でのみ調達可能なカードがあるとなれば、多くファンが注目を集めるのは当然の話ではある。

他方、特別なカードの添付をしてもなお、一定数以上の底上げが難しい以上、さらなる打開策、プレミア感の添付が求められていることは言うまでもない。

↑ Vジャンプ印刷実績(部)
↑ Vジャンプ印刷実績(部)

懸念されていた20万部割れは今四半期でも回避できたものの、危うい状態にあることに違いは無い。

前年同期比プラスはVジャンプのみ


続いて前年同期比における動向を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べればロングスパンの値動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2015年10-12月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2015年10-12月期、前年同期比)

「Vジャンプ」のみが大きくプラス、それ以外はマイナス。誤差範囲である5%を超えた下げ幅にあるのが5誌。うち1割を超える下げ幅が3誌、「アニメディア」「メガミマガジン」「アニメージュ」。1年で部数が1割以上、ましてや3割近くも減る状況がいかに危機的かは、例えば自分のおこづかいなり給料が1年でそれだけ下がる場面を想像すれば、容易に理解はできるはず。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、世間一般では「三大アニメ誌」とも呼ばれているとの話も聞く、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向。3四半期前から「ニュータイプ」の部数が非公開となったため、残り「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を続ける。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。ところが前四半期では「アニメージュ」が大きく下げてしまい、再び順位が逆転、「アニメディア」が「アニメージュ」を上回る形となった。今四半期でもその順位は継続している。

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年10-12月期まで)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年10-12月期まで)

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年10-12月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年10-12月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)

直近値では「ニュータイプ」は非公開、「アニメージュ」3万9934部、「アニメディア」4万1600部。各誌とも中期的には漸減傾向なのに変わりはないものの、部数の上での順位は「アニメディア」が上。「ニュータイプ」が公開されていればあるいはそれより上だったかもしれないが、非公開化直前までの動向を見るに、接戦であろうことは容易に想像ができる。



半年前から情報を非公開化し今四半期でもその状態を続けている「電撃PlayStation」だが、実は過去にも一度1年ほどの間、情報を非公開化した経験を有している。

↑ 電撃PlayStation(部)
↑ 電撃PlayStation(部)

公開の法的義務はないものの、非公開化の理由も開示されていない状況は不用意な憶測の火種となる。一応公称部数は21万部とあるが(【AD MediaGuide 電撃PlayStation】)、歴史あるコア雑誌として認知度が高い雑誌で、さまざまな指標となりうるだけに、厳密な情報としての印刷証明部数の開示再開を願いたいところだ。

【CESA、2015年分の国内外家庭用ゲーム産業状況発表】にもある通り、日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。冒頭の解説の通り、少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も低迷は続くことだろう。


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