「今年も数値目標なし」…2015年夏の節電要請内容正式発表

2015/05/22 14:00

政府や経済産業省など関係省庁は2015年5月22日、同日開催された「電力需給に関する検討会合」の結果として、2015年度夏季における電力需給対策「2015年度夏季の電力需給対策について」を正式に決定すると共に、その内容を発表した。それによれば沖縄電力をのぞく、電力需給の点で懸念のあった9電力会社すべてで、電力管轄間の電力融通まで考慮すれば、電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3.0%以上をギリギリながらも確保できる見通しとなった。予断を許さない状況には違いないが、今夏では昨年夏同様に3年連続の形で、具体的な数字目標付きの電力使用制限令の発令は無く、「数値目標を設けない節電協力要請(定着節電分の確実な実施)」(高齢者や乳幼児などの弱者、熱中症などへの健康被害に配慮を行う)がなされることとなった。節電要請の期間は同年7月1日-9月30日(お盆休み期間中の8月13日-14日を除く)の平日9時-20時となる(【電力需給に関する検討会合公式ページ】【節電ポータルサイト(経産省)】)。

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電力融通が無ければ関西・九州電力管轄は危うい状態


【電力需給検証小委員会】などで公開された「2015年度夏季の電力需給対策について」の関連資料によれば、2010年度夏季並の猛暑となる気象リスクや直近の経済成長の伸び、企業や家庭における節電の定着などを織り込んだ上で、いずれの電力管内でも電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3.0%以上を確保できる見通しとなった。ただし冒頭にもある通り、関西電力・九州電力管轄ではそれぞれ現状において想定される電力需給増加状態に限ると、プラス0.8%・マイナス2.3%の予備率しか確保できず、安全な運用に欠かせない3.0%のラインを切ってしまう。特に九州電力管轄では最大電力需要時に供給量を上回る値が予想される(ただし川内原発が稼働した場合、九州電力管轄は単独で予備率3.0%を確保できる試算が出ている)。そこで他電力管轄からの融通電力を前提として試算し、ようやく3.0%の確保に至ることとなった(実情はむしろ逆で、両電力管轄の予備率がギリギリの3.0%に達するよう、他電力管轄からの電力融通をやりくりしている)。

しかしながら沖縄電力管轄以外では、大規模な電源脱落などが発生した場合には、電力需給がひっ迫する可能性がある。

その他今夏季の電力需給対策として発表された内容は次の通り。

1.沖縄電力管轄以外の全国で「数字目標を伴わない」一般的な節電の協力要請。

2.需給ひっ迫への備え
 非想定下における大規模電源脱落(大規模出力発電所の不意な故障など)に備え、複数の対策を行う。
 ・各電力会社への保守、保全強化要請
 ・電力需給の状況改善が必要と判断された場合には、すぐに他電力会社から電力融通が受けられるような対応を講じることへの要請
 ・電力ひっ迫度の高い中西日本で自家発電設備の増強などを行う事業者への補助
 ・随時調整契約などの積み増し、ディマンドリスポンス(時間帯別の電力料金設定を行い、ピーク時以外の電力使用を促進する)契約の拡大を促進
 
3.情報発信の活性化
 ・電力会社の自己情報発信の促進と、各種情報のインターネット事業者などへの提供の積極化(=情報の二次的利用による周知拡大)
 ・電力需給のひっ迫が予想される場合は、政府は「需給ひっ迫警報」を発出し、節電協力を要請する

もっとも重要なポイントは、震災から4年以上が経過した今夏季においてなお、厳しい電力需給状況が見込まれていること。大きな理由としては、大きな供給力のイレギュラー的マイナスが生じたからに他ならない。元々震災以降は綱渡り的なやりくりが求められていたわけだが、そのリスクが今年もなお体現化した形となる。

連系線による電力融通が可能な9社において、経済復旧・発展による電力需要の増加、新電電への離脱に伴う影響を加味した、夏季の経済影響などによる電力需要変化は次の通り。

↑ 電力需要における夏期経済影響等(新電力への離脱影響含む、2010年度夏期比)(万kW)(9電力管轄)
↑ 電力需要における夏期経済影響等(新電力への離脱影響含む、2010年度夏期比)(万kW)(9電力管轄)

↑ 電力需要における夏期経済影響等(2015年度見通し、内訳、2010年度夏期比)(万kW)(9電力管轄)
↑ 電力需要における夏期経済影響等(2015年度見通し、内訳、2010年度夏期比)(万kW)(9電力管轄)

東京電力管轄では特に新電力への離脱影響が大きく、経済復興に伴う需要増を大きく上回る形となり、結果として需要は減退。電力需給の観点で新電力は大きな貢献を果たしている。9電力管轄全体では2010年度夏季比で経済影響の需要増加は100万kWだが、新電力への離脱(需給上ではマイナス換算される)が372万kWにも達している。

また家庭や大口、小口など各消費先における節電による需要減だが、こちらは節電意識の減退に伴い、大よそ2014年度よりは逓減。2010年度比ではなお高い値を示しているものの、電力需要を推定する際の係数としては、低めの値を計上する形となっている。

↑ 2010年度比の、2015年度夏季定着節電見込み(9電力管轄)
↑ 2010年度比の、2015年度夏季定着節電見込み(9電力管轄)

昨冬北海道電力管轄で選択肢の一つとして試算された「電気料金の値上げが需要に与える影響」に関しては、10%強もの値上げ申請を昨年12月に行った関西電力管轄への適用は(電力利用状況の違いなどから)難しいとして断念。事後データを収集し、今後の検証時に分析を行うにとどめるとしている。

一方電力供給に関しては、火力発電所に係わる定期検査時期のピーク時からのシフト、延期などが一部において求められている。また長期停止火力発電所の一部は設備劣化などから順次停止しており、これが合わせて365万kW分、以前から設備劣化で停止し再稼働が出来ていないものが551万kW分に及んでいる(一部廃止予定)。

水力発電は前年度とほぼ変わらず、揚水発電は融通受電の減少などを受けて全体量は減少、太陽光発電は安定的に見込めると算出評価できる範囲でも前年度から大幅に増加し、見通し供給力でも前年度の2倍近くの509.8万kWに達している。風力や地熱発電は昨年度とほぼ変わらず。

これらの需給動向を受け、電力管轄間の電力融通を前提とすれば、全電力管轄内で安定的な電力供給の最低ラインである、予備率3.0%を確保できることとなった次第である。

↑ 2015年度夏季(8月)における電力予備率見通し(沖縄除く)
↑ 2015年度夏季(8月)における電力予備率見通し(沖縄除く)

ただし昨年に続き原発が停止した状態が続いていることを受け、関西電力・九州電力管轄では供給力不足が深刻化しており、冒頭で言及の通り、電力融通が無い場合を仮定するとそれぞれプラス0.8%・マイナス2.3%の予備率が算定されてしまう。関西電力と九州電力の融通あり状態における3.0%は、他社からの融通を受け、ギリギリのラインにまで底上げすることを意味する。

また、原発稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる燃料費の増加も顕著化している。「原発の停止分の発電電力量を、火力発電の焚き増しにより代替していると仮定し、直近の燃料価格などを踏まえ」これまでの実績及び今後の試算を行うと、(各資源価格の上下変動も考慮)もあわせ、2011年度から2014年度の4年間で12.4兆円のロスが生じる計算となる(【総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会内の電力需給検証小委員会】第10回会合「資料3 第9回委員会の指摘事項への回答」などから)。

↑ 原発稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる燃料費の増加(兆円/年)(2015年4月時点、2014年度は推計)
↑ 原発稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる燃料費の増加(兆円/年)(2015年4月時点、2014年度は推計)

石油価格の大幅な下落に伴い、石油焚き増し分の試算額は大幅に下落したが、多くはLNGにシフト済。そのLNGも単価は下落傾向にあるものの、昨年末に大きく価格が上昇した影響もあるため、年度換算では大きな変化はない(ちなみに試算値はLGNが13円/kWh、石油が17円/kWhとなっている)。

他方温室効果ガスの排出量は火力発電所の稼働率の上昇に伴い大幅に増加。2013年度は電力分だけでも4.84億トンとなり、2010年度比で1.10億トンの増加を示している(電力以外は0.14億トンの減少)。

当然、このコストは直接的に電力会社への負担となり、メンテナンスや機器改編・更新のさまたげの大きな要因となる。そして過剰な負担を軽減するために行われる電気料金の引き上げは家計や企業への重圧となり、それは経済行動の低迷を導き得る。家計に限っても、それだけ可処分所得が減り、生活への負荷につながることは、多くの人が体感しているはずだ。

なお、昨年に続き原発周りの状況が不安定なことも合わせ、各電力管轄における連系線の強化も呈示されており、西日本と東日本の間の送電能力を現在の合計120万kW(+90万kW増設中)から、合計で300万kWにまで2020年代後半を目途に増強することが検証されている。



今年は平年より夏の暑さが厳しくなるとの長期予想も出ているため、今回の試算の状況を超えた電力需要が生じ、「需給ひっ迫警報」が発せられる事態となる可能性は否定できない。また関西電力・九州電力の状況や、火力発電所のオーバーワーク的稼働状態、そしてそもそも論としてこのような電力需給に係わるやりくりの委員会が定期的に開催され、電力需要が増す時期に合わせて政府見解・要請が出される事態そのものが、電力供給上問題があること、不足状態にあることを意味している。

昨今の状況を(オーバーワークでも)実際に電力不足に伴う大規模な停電をはじめとする危機的状況が体現化しなかったから別に良いのではないか、むしろインフラ関係者は押し並べてそのようなオーバーワークすら義務であると主張する筋もある。その主張がいかに非論理的で非理知的であるかは、同じような、いわばブラック企業的な状況を促進するような主張を他の企業・業界に対してはむしろ積極的に否定していることを見れば明らかではある。

関連各方面においては、震災直後から連なる一連の政策の決定的な過ちと、それが今なお続く現状を悔やみつつ、今後に向けて最大限の状況改善のための手立てを望みたいところだ。


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