現状全項目大よそ上昇、先行きは雇用以外が下落…2016年3月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落

2016/04/08 16:00

内閣府は2016年4月8日付で2016年3月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇して45.4を計上したが、水準値の50.0を下回る状態は継続する結果となった。先行き判断DIは先月比で下落して46.7となり、こちらも水準値の50を割る状態が続いている。結果として、現状上昇・先行き下落の傾向となり、基調判断は金融市場の不安定感や消費動向などのへの懸念を受け「景気は、消費動向等への懸念により、このところ弱さがみられる。先行きについては、観光需要や公共事業前倒しへの期待等がある一方で、引き続き、先行き不安や金融資本市場の動向が企業、家計のマインド等に与える影響に留意する必要がある」となり、景況感の軟調さを覚えるコメントが示されている(【平成28年3月調査(平成28年4月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇、先行きは下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2016年3月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス0.8ポイントの45.4。
 →「やや良くなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。
 →詳細全項目は大よそ上昇。住宅関連やサービス関連がやや大きめの上げ幅。雇用はマイナス。

・先行き判断DIは先月比でマイナス1.5ポイントの46.7。
 →「良くなる」「やや良くなる」が減少、「変わらない」が大幅増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が増加。
 →雇用関連家のみ増加。サービス関連の下げ幅が最大だが、マイナス2.6に留まる。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。

今回月は先月に続き、水準値となる50.0を現状・先行き共に下回る形となった(双方とも8か月連続)。具体的コメントや周辺状況からも明らかな通り、中国の景況感への先行き不信感への強まりに加え、それをきっかけとした、さらには原油安を受けた円高・株価安による金融市場の軟調さに強く影響される形で、景況感は大きく縮退している。冒頭コメントでも「消費動向等への懸念」「先行き不安や金融資本市場の動向が企業、家計のマインド等に与える影響」とある通り、消費者心理に水をかぶせるような環境が、全体的な心境不安を起こしている。

例えば利用する側としては原油価格は安いにこしたことはないのだが、その低迷で金融市場全体が萎縮し、間接的に景気悪化を後押しする構図となっている。外部的要因によるところが小さくないとはいえ、大いに悩ましい話に違いない。また昨今では来年4月に税率引上げ予定の消費税に絡み、消費性向が減退しているとの指摘もある。
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

水準値超えは現状で7つ、先行きで1つ


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2016年3月)
↑ 景気の現状判断DI(-2016年3月)

消費税率改定からはすでにほぼ2年が経過したが、それによってもたらされた消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させる材料が見当たらず、低迷感は継続。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いていると判断できる。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。昨今では為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほどである。

今回月の現状判断DIは詳細項目は大よそプラス。マイナスは小売関連と雇用関連のみで、1ポイント未満に留まっている。上昇した項目でもっとも大きなものは住宅関連のプラス4.3、次いでサービス関連のプラス3.3。企業動向関連がプラスを計上しているがいずれも1ポイント未満と勢いに欠けるところが気になる。水準値となる50.0を超えたのは雇用関連のみで、それもギリギリの領域。

景気の先行き判断DIは振れ幅は現状と比べて方向性としては逆で、一様に下げている。上げたのは雇用関連のみ。

↑ 景気の先行き判断DI(-2016年3月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2016年3月)

最大の下げ幅を示したのはサービス関連のマイナス2.6、次いで家計動向関連のマイナス2.1。家計動向関連の下げ幅が大きめなのが気になる。他方、雇用関連は上げたものの、先月に割り込んだ水準値となる50.0への回復は果たしていない。50.0を割り込んだのは2014年11月以来となる2016年2月分から2か月連続で、先行き不透明感の高まりを表す一つの指標でもある。

株安と円高、先行き不安感が景気の足かせ


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・マイナス金利政策により住宅ローン金利の低下が追い風となって、客が真剣かつ積極的に動いている(住宅販売会社)。
・衣料品の動きが相変わらず鈍い。先行きへの不安感で、購買意欲が上向かない(百貨店)。
・前年より確実に来客数が減少している。1人あたり単価は上がってきているので売上、利益率は良いが、客数が減少していることは大きな問題と捉えている(商店街)

■先行き
・4月以降の予約状況はインバウンドにより大変好調である。また、フリー客の増加傾向も続いており、この先も景気は良くなっていくと期待している(観光名所)。
・来年の消費税増税の論議などで、先行きが不透明であり、消費には前向きになれない状況が続く(その他小売[インターネット通販])。
・客との会話の中で、どうしても先行きの不安だとか今使えるお金がないという話が次々に出てくる。やっと目の保養に来たというくらいが精一杯という感じを受けている。来月は年金の支給月だが、このところ年金をあてにした買物というのもかなり厳しくなっている。そういうことを考慮すると、これからは幾分厳しくなるのかなというのが実感である(衣料品専門店)。
・株価の低迷に加え不安定な為替の影響で、富裕層の購買意欲に陰りが見え始めている(百貨店)。

報道界隈では株価が上がっても「庶民には関係が無い」、下がった途端に「庶民に多大な影響が」とし、片方の動きにだけ影響が生じるような伝え方をしているが、景気ウォッチャーのコメントにおいては、株価は上昇・下落共に消費者レベルにまで多大な影響を与えている。富裕層には直接の購入動機となるのはもちろんだが、その他の層においても消費マインドに変化をもたらしているのには違いない。また来年予定されている消費税率引上げに絡み、実質的な金額の負担増を超えた消費への心理的影響が大きなこともうかがえる。

他方、住宅ローンや設備投資など、マイナス金利政策が大きな消費のけん引役となっていることも把握できる。上記に記載はないが、現状・先行き共に人手不足が語られている一方で、求職者数の横ばい、あるいは減退、そしてミスマッチ状態に苦悩している様子も見受けられる。これが単に職種などのマッチングの問題なのか、求人側の条件上の意識の問題なのかまでは今件調査からはつかみ取れないが、就業が果たせればそれだけ経済が周り、消費も増えることから、状況の改善が切に求められる。

今回コメントで「中国」に言及したのは重複含めて3件。前回の6件よりは大きく減少している。不透明感への懸念の声がちらほら上がっているが、先月や先々月と比べると状況の変化に乏しいため、印象も薄れているのだろう。むしろ市場動向に対する不安感は強く、「株価」への言及は重複含めて5件(+「金融市場」が2件)だがネガティブな意見が多く。「為替」の4件も似たような傾向。つかみどころのない不安感、不透明感を訴える声が多いのも気になる。

なお消費税率の引上げに関する言及は全部で7件(重複含む)。先月見受けられた駆け込み需要に絡む期待は無くなり、ネガティブな影響ばかりとなっている。



昨夏は8月前半までが猛暑で消費を大きく後押ししたものの、後半からは一気に冷夏的な温度低下・日照時間の低迷にシフトし、その辺りから景況感も足を引っ張られた感がある。株式を運用する個人、企業だけでなく、その他多方面にも心理的影響を与える株価もほぼ同じタイミングで、中国の株価急落をトリガーとして一段下げた形となり、その状態が続いていることから、景気の先行き感に不安を覚える人が増え、それが景気の歩みを引っ張る気配が随所に見て取れる。その後株価は12月までじわりと持ち直し、それに伴い株価下落による心理的なプレッシャーは軽減されつつあった。もっとも特段景気の良い話が耳に入ってくることが無く、いわゆるぬるま湯的な、むしろそれよりも少々温度が低いものの、今更風呂から出るわけにもいかず仕方なく入っているような状況の感は否めなかった。

1月に入ってからは原油価格の低迷に伴う関連企業の業績悪化懸念、そして中国経済・株式市場の急落、世界規模の市場下落、さらには為替の円高化、来年に迫った消費税率引上げにより、景況感は大きな減退を経験している。一つ一つの要素はさほど大きく無いものの、畳み掛けるような材料の積み上げで、不安感が膨張している感はある。

多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。上記でも触れている、昨今では可処分所得を削り取る大きな要素となる社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれるところではある。数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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