インターネット上の自由度をグラフ化してみる(2016年)(最新)

2016/05/01 16:20

21世紀を迎えてからまだ20年も経過していないが、インターネットは今世紀に浸透普及した技術の中でも、もっとも大きな変化を世界に与え、これまでにない情報伝達ツールとして歴史に刻まれるに違いない。情報の概念は大きく覆され、価値も意義も一変し、多種多様な方面に多大な便宜性と革新をもたらすことになった。それと共に便利極まりないインフラでもあるインターネットに関し、自由に利用できるか否かに注目が集まっている。情報のやり取りは多分に諸刃の剣であり、自由な利用を好まない勢力もあるからだ。今回は国際NGOフリーダム・ハウス(Freedom House)が毎年精査発表しているインターネット上の自由度に関する報告書「Freedom on the Net 2015」を元に、世界各国のインターネット上の自由度の状況を確認していくことにする(【発表報告書一覧ページ:Reports】)。

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日本のインターネット上の自由度は第7位


フリーダム・ハウス(Freedom House)の行動目的や背景については先行記事【報道の自由度ランキングをグラフ化してみる】を参照のこと。

次以降に示すのは、フリーダム・ハウスが公表した「インターネット上の自由度(Freedom on the Net)」に関する指標。この指標に関する主旨は次の通り。インターネット技術の発達と普及に伴い、現実社会における自由の保護同様、オンライン上での自由も重要となってきた。技術の発展の一形態であり、新様式の情報伝達手段でもあるインターネット上の自由が確保されることで、閉塞感のある社会を打破し、自由と民主主義を支えるエネルギーとなりうるからである。他方、インターネットに係わる技術は諸刃の剣のようなもので、政府や権力者による自由の束縛のツールとしても使われ得るため、インターネットの自由の確保は、社会全体の自由にとっても欠かせないものとなる(ある意味「報道の自由」に近しい)。

計測精査対象となるものは大きく3要素。「アクセスのための障害(インフラや経済面や法令面など)」「内容の制約(検閲やフィルタリング、ブロッキング、自主規制など)」「個人の権利への侵害(プライバシーへの監視行為や不法対処など)」。各要素ごとに細かいチェック項目を用意し(合計で100)、チェックに該当する数が多いほどインターネット上の不自由さも大きいと判断される。チェック数=スコアがゼロから30までが自由、31から60までがやや自由、61から100までは不自由の判定が下される。

団体内の専門家によって振り分けられたスコアに対し、対象国の専門家や学者、一般市民の代表などによって開催される国際電話会議や検討会において、該当期間内の各種状況や対象国・地域の法令、慣行などと共にスコアの内容の精査と見直し、調整が行われる。その上で修正された値に関する最終確認が団体内で成されることになる。なお各地域の協力者に関しては、該当国で身元が判明する事により何らかの問題が生じる特殊な事例をのぞき、原則として公開されているため、透明性は確保されている。

2009年に予備的調査が始まった同調査では15か国が対象だったが、最新版では65か国までに拡大。これによりインターネット利用者の88%を事実上カバーした調査結果となっている。なお直近分の2015年版では2014年6月から2015年5月が対象。

まずは直近分の2015年分となるスコアの確認。「自由」「やや自由」「不自由」の区分された国ごとに、総合スコアと主要3要素ごとにチェックが入った=加算されたスコアを確認していく。もちろん値が大きい方が、インターネット上の制約が大きく、不自由さを覚える国であると認識されている。また、報告書にある地図の色分けによる状況確認も行う。

↑ インターネットの自由度(2015年分)(低値ほど自由)(自由判定国)
↑ インターネットの自由度(2015年分)(低値ほど自由)(自由判定国)

↑ インターネットの自由度(2015年分)(低値ほど自由)(やや自由判定国)
↑ インターネットの自由度(2015年分)(低値ほど自由)(やや自由判定国)

↑ インターネットの自由度(2015年分)(低値ほど自由)(不自由判定国)
↑ インターネットの自由度(2015年分)(低値ほど自由)(不自由判定国)

↑ インターネット上の自由度マップ(2015年分)(緑…自由、黄色…やや自由、紫…不自由、灰…未調査)
↑ インターネット上の自由度マップ(2015年分)(緑…自由、黄色…やや自由、紫…不自由、灰…未調査)

大よそアジアから中東地域は不自由、南北アメリカ、欧州地域は自由、アフリカはやや自由地域が多い。先行記事の「報道の自由」に関する地図と類似点が多いのは興味深い。

具体的な値では、トップはアイスランドの6点、次いでエストニアの7点。以後2ケタ台となるがカナダ、ドイツ、オーストラリア、アメリカ合衆国、そして日本が続く。数ポイントの差は誤差となり得ることを合わせ考えると、大よそカナダからイギリス辺りまでは同程度のインターネット上の自由が得られていると見て良いだろう。なおアジア太平洋地域で自由判定を受けているのは、日本とフィリピンのみである。

インターネット上の自由度で不自由判定を受けた国を見ると、中国やシリア、イランといった強硬的な政治手法に基づいて国を統治している国や、宗教あるいは時代背景的に情報の自由な伝達が国家運営上望ましくないと判断されている国が多い。

今調査では「世界のインターネット利用者の88%を網羅した」とあるが、その実情が分かるのが次の図版。報告書からの抜粋だが、各国のインターネット利用人口を面積で表し、個々の国の自由度を上記の世界地図と同じような色付で示したもの。

↑ インターネット上の自由度マップ(2015年分、面積はインターネット人口)(緑…自由、黄色…やや自由、紫…不自由、灰…未調査)
↑ インターネット上の自由度マップ(2015年分、面積はインターネット人口)(緑…自由、黄色…やや自由、紫…不自由、灰…未調査)

中東やアフリカ諸国で不自由判定を受ける国数は多いが、利用者人口の上ではさほど大きな影響は無く、むしろロシアやベトナム、そして何より中国の影響が非常に大きい実情が分かる。

前年からの動き


次に示すのは前回調査となる2014年分からのスコアの変化。値が減っていればその国でインターネット上の自由が促進されたことになり、増えていれば閉鎖性、制限が増したことになる。

↑ インターネット上の自由度(2015年分)(低値ほど自由)(自由判定国における前年からの推移)
↑ インターネット上の自由度(2015年分)(低値ほど自由)(自由判定国における前年からの推移)

↑ インターネット上の自由度(2015年分)(低値ほど自由)(やや自由判定国における前年からの推移)
↑ インターネット上の自由度(2015年分)(低値ほど自由)(やや自由判定国における前年からの推移)

↑ インターネット上の自由度(2015年分)(低値ほど自由)(不自由判定国における前年からの推移)
↑ インターネット上の自由度(2015年分)(低値ほど自由)(不自由判定国における前年からの推移)

まず自由判定国だが、値の動向は高安まちまちやや高値国多しといったところだが、正直プラスマイナス3ぐらいまでは誤差の範囲ともみなせるため、あまり気にする必要はない。日本はプラスマイナスゼロ。

フランスはプラス4と大きなプラス、つまり自由の束縛化が進んでいる。これは2015年初頭に起きた出版社襲撃事件に始まる、各種情報統制の流れによる影響が多々あると見て良いだろう。

やや自由判定国ではスリランカの大規模な改善、ウクライナとリビアの悪化が目に留まる。前者はスリランカでは数年前まで大規模なインターネット上の規制強化がなされていたが、2015年の大統領選挙によって就任したマイトリパーラ・シリセーナ大統領による、大規模な施策変更の結果が評価された結果ではある。

不自由判定国の動向は大よそ誤差の範囲。とはいえ中国やエチオピアが現在の高値からさらに上乗せする動きを示しているのは驚きでもある。



メディア関連の調査結果でもよく問題視される話ではあるが、「インターネット」は本来インフラを主に指すのであり、それを利用して流通するコンテンツは付随的なものでしかない。新聞やテレビ、ラジオのようなメディアとは体系的に異なるもの(新聞などはあくまでもそれぞれの媒体で伝えられる中身そのものが言葉の意味としての主な対象となる)。インターネットと比較するのなら新聞は紙媒体全体や流通ルートまで合わせた包括的なもの、テレビならば電波の送受信機や放送局などとの比較が必要。

一方でインターネットは情報の発信が個人ベースで容易にできる、情報の展開の際に国レベルでの許認可が必要ないなど、これまでの情報送受信の媒体とは概念が大きく異なる。今後インターネットを利用できる端末の普及率上昇と共に、情報を統制する必要がある国々においては、これまで以上に自由への束縛が強固なものとなっていくだろう。

また今件値は本文中でも触れているが、「報道の自由」に近しい面もある。今団体「など」の「報道の自由」に係わる指標との比較をすると、新たな発見が得られるかもしれない。


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