報道の自由度の推移(2017年)(最新)

2017/05/04 05:19

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国際NGOフリーダム・ハウス(Freedom House)では自由に関する啓蒙活動の一つとして、いくつかの視点による「世界の自由」に関する分析調査結果を、指標化した上で毎年報告書として公開している。「包括的な自由」以外に「報道の自由」「インターネット上の自由」などが挙げられるが、今回はそのうち「報道の自由」について、過去の値も合わせてひも解き、その推移を確認していくことにする(【発表報告書一覧ページ:Reports】)。


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フリーダム・ハウス(Freedom House)の行動目的や背景、「報道の自由度」そのものについては先行記事【報道の自由度ランキング】を参照のこと。

「報道の自由度」は1980年分から調査と結果の公開を開始しているが、具体的なスコア(値)まで含めた内容が取得できるのは1993年分以降。また社会環境の変化に応じて値の計算方法を微調整することもあり、現在の基準は2001年分以降の適用となっている。今回は具体的な値を確認可能な1993年以降について、その内容を見ていくことにする。

まずは世界全体としての「報道の自由度」の動向。100点がもっとも報道の上では不自由、ゼロ点がもっとも自由。30点以下は自由、31-60点がやや自由、61点以上が不自由と大別化されているが、その仕切り分けで分別された国の数の比率と、単純に値の合計を国数で割った平均値。世界全体として報道の自由がどのような状況なのかを把握できる。

↑ 報道の自由度(低値ほど自由)(世界全体の平均)
↑ 報道の自由度(低値ほど自由)(世界全体の平均)

↑ 報道の自由度(自由・やや自由・不自由の国数比率推移)
↑ 報道の自由度(自由・やや自由・不自由の国数比率推移)

2001年分以降とそれより前においては細かな基準の違いがある(さらに1993年分から1995年分、1996年分から2000年分まででも細かな変更が成されている)ことから、完全な連続性があるわけではないが、大よそ世界全体としての報道の自由度の動きを確認できる。今世紀に入ってから報道の自由は少しずつ厳しさを増しているように見えるが、指標的にはせいぜい2から3点分程度。不自由な国の比率はほとんど変わらず(あえていえば数%ポイントほど減っていると見ることもできるが)、自由な国が減りやや自由な国が増えているように見受けられる。

続いて具体的に各国における報道の自由度の推移。200か国近い国すべての動きを追うのも不毛なので、新聞通信調査会が先日発表した「諸外国における対日メディア世論調査(2017年調査)」を元に(【メディアと「報道の自由」に関する人々の見方】)、対象国をアメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、日本、中国、韓国、タイに絞ることにする。


↑ 報道の自由度(低値ほど自由)
↑ 報道の自由度(低値ほど自由)

値が大きいほど報道の自由が束縛されている、厳しくなっていることを意味するこれらのグラフだが、最初の世界全体の平均値の動向からも分かる通り、各国においても大よそ報道の自由が損なわれつつあるとの判断が下されている。

とはいえその内情はさまざま。欧米ではアメリカ合衆国やドイツがほぼ一様に少しずつ値を増やしているのに対し、イギリスやフランスでは前世紀末にかけて値が減退(=報道の自由がより強化されている)した流れも確認される。しかしそれも今世紀に入ってからは他国と同様に少しずつ上昇に転じている。

ロシアでは2008年ぐらいまで多少のぶれを見せながらも他国と比べて大きな上昇の動きにあった。つまりそれだけ報道の自由に関して縛りが厳しくなっていったと判断されている。2009年辺りからはようやく上昇にもストップがかかるようになったが、値は80強。当然「不自由」の評価を受けている。

アジア地域では韓国がほぼ横ばい、2010年あたりから少々増加に。タイでは今世紀に入ってからは大きな上昇傾向に。前世紀末では「自由」判定を受ける年もあったほどだったが、今では中国に近づくほどの「不自由」の中にある。

その中国だが前世紀からすでに「不自由」判定の80台。今世紀初頭にかけてやや値を減らす動きも見られたが、再び上昇。この数年ではさらに値を底上げし、実質的に報道に関しては不自由な国のままで移行している。

日本は20前後を行き来したまま。2010年辺りからはいくぶん値を上げる動きを見せているが、これは他国と同じような風潮の中の挙動で、特段変わったものでは無い。

最後に日本における報道の自由度の推移を、大カテゴリの区分別で見ていく。

↑ 報道の自由度推移(日本、低値ほど自由、大カテゴリ区分別)
↑ 報道の自由度推移(日本、低値ほど自由、大カテゴリ区分別)

日本の「報道の自由」に係わる障害は経済的な方面における変化はほとんどなく、政治面と法に関わる面が少しずつ増加していることが分かる。数ポイントは誤差の範囲であるが、2004年と2012年中に生じた2ポイントの増加はやや気になるところ。



先行記事でも言及しているが、これらの値は唯一無比のものでは無い。元々「自由」との概念が方程式のように絶対不動の基準として存在しているわけではないのだから、判断基準が変われば評価も変化する。さらには報道の自由が制限された方が、自国の利益に叶うと判断している国もあるだろう。そして報道を取り仕切る側における品質、「報道」の名に恥じぬ行為を成しているのか否かの問題もある。

他方、当事者などの思惑を極力排し、自由の監視と保護を目的として第三者的な立場から長年に渡り精査を続け、社会環境の変化に応じて基準も柔軟に修正している今指標は、それなりの価値と有意義さを持っているのも事実ではある。


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