ID交換掲示板起因の被害は減少するもコミュニティサイトの被害拡大…警察庁、子供のネットトラブル現状報告発表(2015年)

2015/10/16 11:00

警察庁は2015年10月15日付で、2015年上半期における「出会い系サイト」などに関連した事件の検挙状況をはじめ、各種インターネットと児童に絡んだ諸犯罪に関する現状の報告書「平成27年上半期の出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について」を発表した。それによれば2015年上半期における「出会い系サイト」の被害児童数は48人で前年同期比マイナス34人と、減少の傾向にあることが分かった。他方「コミュニティサイト」(以前は「出会い系サイト以外のサイト」と呼ばれていたもの。SNS、プロフィールサイト、掲示板など、ウェブサイト内で多人数とコミュニケーションがとれるウェブサイトのうち、出会い系サイトを除いたものの総称)では、検挙件数は796件で前年同期比で98件のプラスとなった。なお被害児童数において「コミュニティサイト」は「ID交換掲示板」と「その他コミュニティサイト」に分割計測されているが、「その他コミュニティサイト」は677人で前年同期比プラス241人で増加、「ID交換掲示板」は119人で前年同期比マイナス143人と減少している(前回発表分から検挙数は非公開となった)。警察庁では「平成26年に最も被害が多かったいわゆるID交換掲示板においても、一部サイト事業者による年齢確認の導入などにより減少傾向にある。一方、チャットにより面識のない者と交流をするサイトや広く情報発信や友人などとの交流に利用されるサイトでの被害が増加傾向にある」とし、コミュニティサイトにおける被害数の増加に対し警告を発している(【警察庁:サイバー犯罪対策リリース・統計一覧ページ】)。

スポンサードリンク


出会い系は漸減、ID交換掲示板も規制強化で減少するが…な被害児童数


子供のネット界隈での問題は【子供がネットトラブルを起こしそうな場所、親はちゃんと把握して……ない!?】【多種多様な問題点が浮き彫りに...シマンテック発・子供のインターネット利用実態】など、多数の事例で解説している通り、従来型携帯電話、スマートフォンなどのインターネットへアクセスできるデジタル機器が若年層に浸透していくにつれ、これまで想定できなかったような問題が発生し、深刻化している。それに伴い、運営各企業やセキュリティ関連会社をはじめ各方面で対策や啓蒙が行われている。

警察庁では今件のように半年おきに「出会い系サイト」など、インターネットを介して発生する子供の「リスク」事例を集計精査データ化し、公開している。その公開統計値が確認できる2005年以降の動向を見るに、「リスク」の発生場所がかつて社会問題化しスポットライトを浴びた「出会い系サイト」から、一般的な「コミュニティサイト」に移りつつあることを再認識させられる。さらにその「コミュニティサイト」においても、不特定多数同士が交流する場におけるやりとりによる事案では無く、当事者同士が直接対話・チャットを行える無料通話アプリのIDを交換する掲示板(ID交換掲示板)を介して生じる事案が増加する事態が生じるなど、新しいシステムを用い、規制の網を潜り抜けるべく、問題構造が常に形を変容する状況が把握できる。

今報告書にまとめられている2015年上半期分までの値の限りでは、「コミュニティサイト」で生じる「リスク」が「出会い系サイト」以上であること、そしてこの数年では双方とも減少傾向にあったものの、2013年通期でトレンドが転換して「コミュニティサイト」は大幅な増加(悪化)に転じてそれが継続中であること、そのトレンド転換も「コミュニティサイト」内部における「ID交換掲示板」を起因とするものの急増によるものだったことが分かる。他方、直近分の限りでは、その増加要因だった「ID交換掲示板」も事業者による被害防止対策が講じられた結果大きく減少したが、一方でチャットにより面識のない者と交流をするサイトや、広く情報発信や友人などとの交流に利用されるサイトでの被害が増加傾向にある。

特にチャット型(コミュニケーションの主たる手段として面識のない利用者同士が1対1のチャットにより交流するコミュニティサイト)や複数交流型(広く情報発信や同時に複数の友人などと交流する際に利用されるコミュニティサイト。ツイッターやLINEなど)において被害数の増加が著しい。これらのサービスは大小を問わず、また交流内容として掲げられたテーマも多種多様に及ぶものが多数展開されており、利用者は各種検索で容易にその場を見つけ出すことが可能なため、いたちごっこ的な状況にあることは否めない。

また被害事案の多分において、フィルタリングを利用していなかったことも明らかにされている(直近2015年上半期では非利用者は96.3%にも達している)。

↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数推移(-2015年上半期)
↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数推移(-2015年上半期)

↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数推移(2013年から2015年、それぞれ上半期)
↑ 出会い系・コミュニティサイトに関連した被害児童数推移(2013年から2015年、それぞれ上半期)

・各種規制の強化や啓蒙が実を結び、「出会い系サイト」による児童の問題数は減少傾向にあった。半期単位の比較でも、状況は改善しつつある(青色系統)。

・コミュニティサイトの児童関連問題は増加の一途にあった。しかし2010年で頭打ちとなり、2012年までは減少傾向を見せた。ところが2013年に入るとID交換掲示板が大いに悪用され、「その他コミュニティサイト」は漸減しているものの「コミュニティサイト」全体としての被害児童数は増加(悪化)に転じてしまっている(赤系統色)。その傾向は2014年でも継続し、「その他コミュニティサイト」でもわずかながら増加に転じてしまう。

・2015年に入ると各種規制や対応に伴い、ID交換掲示板は大きく減少する。しかし変わってその他コミュニティサイトが増加を示し、両者を合わせたコミュニティサイト全般の被害数は増加を継続する形となっている。

「出会い系サイト」は、2008年の「出会い系サイト規制法」の改正により事業者の届け出制が強化され、さらに各種フィルタリングが功を奏する形となり、現在に至っている。「コミュニティサイト」では「出会い系サイト」からの転向組も後押ししたこともあり、計測を始めた2008年以降増加を続けていた。しかし2011年から2012年には各種啓蒙・規制の厳格化に伴い、減少傾向を示していた。ところが2014年では上記で言及したように、2013年に続き大幅な増加が確認された。

これは「LINE」に代表される無料通話アプリの加速度的な普及で、そのIDを交換する掲示板をトリガーとした犯罪が大幅に増加したのが原因。スマートフォンをはじめとした各種モバイル機器の若年層における急速な普及浸透に伴い、ソーシャルメディアなどの利用者数自身が急増したものの、それに対する規制も強化されたことで、運営側が状況を把握しにくく規制で取り締まりにくい、ID交換掲示板に加害者側が大きくシフトした形だった(チャット型や複数交流型による被害も増加しているが、増加率はさほど大きくない)。

そして上記の通り、そのID交換掲示板でも規制が強化されると、IDを交換した上で大手のサービスでやり取りをするのではなく、直接チャットによる交流サイトや情報を交換するサイトなどを通じての被害が再び増える事態となっている。特にID掲示板の規制強化後は、直接1対1のチャットが可能なチャット型サービスによる被害が急増している。

↑ 主なコミュニティサイト種類別の被害児童数推移(人)
↑ 主なコミュニティサイト種類別の被害児童数推移(人)

ともあれ、ここ数年におけるコミュニティサイト全般の被害数増加の内情は、ID交換掲示板を経由するか否かの違いでしかなく、増加傾向は継続中な次第である。トレンドを一言でまとめると、複数交流型は漸増、1対1型はミニメールからID交換掲示板、そしてチャット型へのシフトと表現できよう。

低年齢層が多いコミニティサイト関連事象


今回発表された報道資料によると、変化傾向としてスマートフォンの利用が増えていることが確認されている。もっとも児童が利用する携帯電話はその多くがスマートフォンである以上、被害者における利用端末がスマートフォンが多数に及ぶのも当然の話。他方、スマートフォンと比べて保護者の管理が行き届いているはずのパソコン上からの被害も増加しているのは注意すべき動きといえる(もっとも今件は高校生も含まれることから、保護者と共用のではなく、本人だけの端末を利用している可能性は高い)。

↑ コミュニティサイトにおける被害児童のアクセス手段(人数)(2010年は重複換算)
↑ コミュニティサイトにおける被害児童のアクセス手段(人数)(2010年は重複換算)

コミュニティにおいて問題の発生を完全に防ぐことは難しい。また確率論的視点で見れば、対象人数が増えるほど問題事案「数」も増加する。だが「比率として低いから『多少の問題件数は仕方ない』と妥協する」わけにはいかないのが犯罪であり、その防止対策である。「コミュニティサイト」は元々普通のコミュニケーションを行うための場所なのに加え、昨今では端末利用者の低年齢化に伴い、「出会い系サイト」と比べて参加年齢層が幅広く、結果として児童被害者が「出会い系サイト」よりも低年齢なことも問題視されている。

↑ 出会い系・コミュニティサイトにおける児童(18歳未満)の被害者数(2015年上半期)
↑ 出会い系・コミュニティサイトにおける児童(18歳未満)の被害者数(2015年上半期)

15歳以下で区切れば「出会い系」が全体の42%なのに対し、「コミュニティサイト」では50%と半数に達している。

携帯電話キャリア、そして携帯電話上で運用される各種サービスを提供する業界としては、急速に若年層にも普及するスマートフォン向けのサービスにおいて、十分過ぎるほどの安全性を確保し、今回対象となった「事象」の発生確率を極力下げ、ゼロを目指す最大限の努力を継続する責務がある。特に情報機密性が高い無料チャットアプリ・通話アプリの場合、IDの交換は電話番号・住所の交換に等しいことを啓蒙し、未成年者の利用について十分以上の注意喚起を成し、必要に足る規制を行う必要が求められる。

同時に保護者や教員など児童の周囲に居る人達もまた、啓蒙・周知を徹底しなければならない。そのためには自らも状況の正しい把握と学習が求められる。携帯電話(とりわけスマートフォン)やインターネットの利用が「当たり前」のとなった現在では、保護者による子供への啓蒙・周知責任は、日常生活を安全に過ごしていくには欠かせない一般常識「電話のかけかた」「横断歩道の渡り方」「信号の意味」「お買い物の仕方」と同レベルの重要性を持つことを心がけねばならない。

さらにコミュニティサイト経由を問わず、画像・映像の提供は(昨今の炎上事案に代表されるように)プライバシーの観点で非常にリスクが高いこと、ましてや対象がどれほどまでに丁寧な、大人しい対応をしていたとしても、若い年齢であることを語っていたとしても、見知らぬ対象との直接の対面は大きなリスクを伴う事実を十分以上に認識させる必要がある。

抜本的な対策がなされない限りコミュニティサイトを用いた事案は今後も増加を続け、近い将来には資料タイトルから「出会い系」が抜け、「コミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策について」になりかねない。関係方面は最大限の知恵を働かせ、努力を尽くすことを願いたい。


■関連記事:
【普通の携帯1.4時間、スマートフォンは? …子供のモバイル利用時間をグラフ化してみる】
【子供がスマートフォンを欲しがる理由、トップは「アプリやサービスの充実」】
【子供にスマホを持たせる時の条件、最上位は「課金サイトの利用禁止」】
【子供にスマホを持たせたい親が不安に思うこととは?】
【子供のスマホ利用、不安を覚える大人は7割強】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー